フリッツ・ラングにしては、甘すぎやしないか、とも思ったけど、ちょっと考えると、いやこっちの方が「現実っぽく」、なおかつビターなのかもなーと思ってます。
簡単に言えば、友人に嫁をNTRされて、またヨリを戻す話です。
で、嫁と間男は遠くに旅立つ予定だったのが、嫁がなぜか急に母性本能出しちゃって、「子供を幸せにしたい!」とか言い出して、結局、旦那の元に戻り、旦那も苦渋の判断の末に嫁を許すというエンディング。
一見、紆余曲折ありつつもハッピーエンドなのかなーと思いました。
なので、この結末はあまりにも納得がいかなかった。というのも、この嫁というのが元来の性悪女で、昔から男遊びはしてそう。で、旦那と結婚する際も、今までの遊びは忘れて良い妻になるわ、とか誓ったくせに、赤ちゃん産んですぐに間男とセクスですからね。
さらに、逆ギレかのように「そうよ、不倫してるわ!」とヒス起こして、堂々と不倫するんですからね。
なので、こんなカス女が許されるエンディングは納得いかないわけです。
それにこの間男も粗野で意地悪な男で、こんな男に惹かれる女は別にどうなってもいいやと感じます。
しかし、旦那は人の好い奴、なんてったって友人にNTRられるようなマヌケですから、嫁を許すんですよね。
なので私は甘いなーと思ったんです。
でも、もしかすると、こっちの方がビターな、苦い結末なのかも。
というのも、たしかに、この夫婦は最大の危機を乗り越えましたが、いつ何時、また危機が訪れるか分かりません。
しかも、別に「夫婦の愛情」によって復縁したわけではなく、あくまで「子供のため」なので、子供が成長して独立したら速攻離婚するタイプだろうし、なおかつ、愛のない夫婦生活は変わらないわけで、結局、夫婦にとって最悪の選択だったのかもしれない、と。
そして現実には、そういったギリギリの夫婦がたくさんいるんでしょうね。
別に結婚当初の愛などなくて、打算と惰性によって成り立っている夫婦がね。
別にそれが悪いこととは思いません。現実とは苦いものなのでね。
そう考えると、これがハリウッド式映画製作に対するフリッツラング最大の自己表現かもな、とも思う。
ハリウッド的にどれだけ滅茶苦茶に関係が壊れようが、必ず夫婦は仲直りします。これは絶対です。ルールです。
なので、ラングもそれに従ったんでしょう。でも、従った結果、この夫婦が今後幸せに過ごすとは思えない、という皮肉です。