マイナス学習の恐さ | トナカイの独り言
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トナカイの独り言

独り言です。トナカイの…。

 日本のスキー界で最初にフルツイスト(後方宙返り一回ひねり)を成功させた方は、当時日本体育大学体操部に所属されていた小林啓二さんだったと記憶しています。彼に続いて、今はパンダルマン・スクールで有名な白川直樹さんとわたしが、ほぼ同時期に成功しているはずです。

 じっさいに大会で使ったのは、たぶん三人のなかでわたしが最初になるでしょう。

 

 1970年代後半のわたしは「ひねり」をマスターしたくて、いろいろな試行錯誤を繰り返しました。「繰り返してしまった」と書いた方が正確でしょう。

 今のように「ひねりのメカニズム」が確立されておらず、指導方法も世界中でさまざまに異なっていた時代です。トランポリンの世界ですら、確立されたひねり技術は、まだ存在していませんでした。現在のように体側に手と腕を添えるヨーロピアンスタイルは、まだまだ主流になっていない時代の話です。
 

  余談ですが、二回宙返りにかんしても、ここに述べた三人は、いきなり雪上でトライしています。この三人に、前方宙返りの清水康久さんを加えた四人の日本人が、ウォータージャンプ(正式にはウォーターランプ)という存在を知らず、いきなり雪上で二回宙返りにトライした世代です。

 

  さて、フルツイストを学ぶ過程でわたしが陥ったのは、今からふり返ると「マイナスの学習」と呼ばれるものになります。「ひねり」をやりたいあまり、さまざまな悪い癖を身につけてしまったのです。

 これは同じ動作を何度も繰り返しておこなうことで、その神経回路が確立されてしまうことによって起こります。そんな間違った回路は作りたくないのに、身体が勝手に動いてしまうようになり、いわゆる『悪い癖』がついてしまうのです。

 こうした神経系の発達についての知識も、当時のスポーツ界にはほとんど知られていませんでした。
 「二回続けて失敗したら、三回目はおこなわず、基礎トレーニングに戻った方が良い」ということを知ったのは、この十五年も後になってからのことです。

 今の知識があれば、こうした悪癖を身につけず、もっともっとまっすぐ上達できたに違いありません。

 

 コロナ禍になって、ズームレッスンにて上達講座をおこなっていますが、そこで知ることのできる知識を若い頃に得ていたなら、マイナスの学習を避けることができたに違いないと感じて、とても複雑な心境に陥ります。

 

 上達講座のメイン講師は遠山知秀先生ですが、彼は五十代前半に脳梗塞を経験されています。

 ほぼ半身麻痺の状態から、自分の体を実験台に、現在はほぼ完全と呼べるところまで、戻して来られました。トランポリンでも自在にフィリフィス(ひねりの入った二回宙返り)飛ばれるようになりました。
 

 わたしも六十才を目前に、頸椎に後縦靱帯骨化症という難病を発症し、右腕に麻痺を経験しています。そこからの復帰に、これまでの知識が大きく役立ちました。
 

 遠山先生や自分をふり返って、年をとるといろいろ衰えることは事実だけれど、進化する部分もあると信じられます。
 これからスポーツや楽器などの上達をめざすみなさま、ぜひ正しい知識を身につけてください。
 成功や失敗のさまざまな経験を持つ方々から、いろいろと学んで下さい。

 王道は目指す世界を非常に美しく実現されている方から学ぶことでしょう。 

 

  2021年の今年、例年よりずっとウォータージャンプを飛ぶチャンスに恵まれました。そのため、あれから45年を経て、またフルツイストを考え直しています。身についてしまった悪癖を、どうしたら拭うことができるのかも、再考しています。
 ここ数年はまったくトランポリンを飛べていないので、いつかトランポリンでもまた、しっかりやり直してみたいものです。