大きなジレンマ | トナカイの独り言

大きなジレンマ

 わたしがスキーにのめり込んだ頃、スキー界には二つの流れがありました。

 一つはオーストリアを中心としたスキー技術で、もう一つはフランスを中心としたスキー技術です。
 わたしが理解したところを簡単に書きますと、オーストリアの技術は体でカウンターを作り出すようにして、効果的にエッジを立てたり、ターンを始動させたりするものでした。

 フランスの技術は体の慣性バランスを利用してエッジを立てたり、ターンを始動させたりするものと理解出来ました。

 つまり、オーストリアは外向外傾と呼ばれる姿勢を基準にし、逆ローテーション(逆ひねり)を使って滑っているように見えました。それに対して、フランススキーは内向内傾を基準にし、順ローテーション(順ひねり)を使って滑っているように見えました。

 もちろん、わたしの理解がすべて正しいとは限りません。

 

 その当時、日本のスキー指導(全日本スキー連盟)はオーストリアの技術が中心でした。SAJのスキー学校に入校すると、強い「くの字姿勢」を教えられ、延々とその姿勢で斜滑降をやらされたものです。

 そんな指導に反発したわたしは、もっと自由度の高い三浦ドルフィンズのスクーリングに道を見い出しました。

 スキーを真剣にやるようになって最初の師匠となってくれたのは、故・木村弘さんです。三浦ドルフィンズの木村校長の弟さんにあたる方です。

 彼の滑りを簡単に分析すると、体全体の基本姿勢には外向傾を使っていましたが、ターンの仕上げ部分でわずかなローテーションを使い、とても滑らかで美しいカーヴィングを仕上げていました。このローテーションが、次のターンへのカウンターを先取りするところが、とても見事なテクニックでもありました。


 写真後列中央が木村弘さん(左隣がわたし)。

 

 わたしはスキーに取り組んだ最初からフリースタイルを目指していたので、ロングターンよりショートターンを多くトレーニングしました。

 その過程で、細かいターンやコブには逆捻りの方が有利であると考え、自分の技術の基本をオーストリアに置くことにしました。しかし、やや大きめのショートターンターンなら、ローテーションで美しく滑れることもわかっていました。その方が滑らかで楽なこともわかっていました。

 そんな歴史から、日本にハイブリッドスキーが広まりつつある時、大きな期待を持って観た時期もありました。


 しかしスキーをスポーツと捉えた場合、内向内傾+内足主動を基礎に置くことは、間違っています。なぜなら、物理学的に考えた場合、明らかに外向外傾+外足荷重の方が優れているからです。その方がより深い内傾角を取れるため、より強い遠心力に耐えられます。それにより、より深いエッジ角を実現できますし、外足の方がより強い抵抗を支えられ、たとえスキーがずれたとしてもリカバリーが可能になるからです。

 外向外傾で外足荷重を基礎技術と考えるなら、内向内傾や内足主動は、素晴らしい応用技術として捉えることができます。しかし、そちら(内向内傾)を中心技術と考えるなら、すべてが崩壊してしまいます。

 ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
 びっくりしてしまうでしょうが、ここまでが前振りなのです。ここからが、いよいよ本論です!

 近頃、わたしはハーレー・ダヴィッドソンに乗っています。
 アメリカンと呼ばれる車高の低いバイクで、トルクが強く、低速での加速が素晴らしいバイクです。
 車高が低く、スタンドやマフラーが張り出しているため、車体を倒すとすぐその部分が路面に当たってしまいます。つまりスキーで言うバンク角(内傾角)が非常に少ないのです。




 こうしたバンク角の少ないバイクでコーナーリングすると、車体を倒さないターン技術を強要させられます。すると、コーナーをクリアする方法として、遠心力が掛らないように 「もの凄くスピードを落とす」 か、車体を倒さないで遠心力と釣り合いを取るため 「重心をターンの内側に移動させるか」 のどちらかを使うことになります。

 ほとんどの場合、その両者を組み合わせて走るのですが、ここで使われる重心を内側に移動させるリーンインと呼ばれるテクニックは、非常に内向内傾のスキー技術に近いものとなります。

 ですから、わたしが嫌っていた内足主動のテクニックを、ハーレーでは駆使しないとコーナーを曲がりきれません。
 これまでたくさんのバイクに乗ってきましたが、こんなに内向内傾を強いるバイクは初めてです。ハーレーの直前に乗っていたVマックス(ヤマハ/1200CC) や、長く乗ったアメリカンの典型イントルーダー(スズキ/750CC) ですら、これほど内向内傾を意識したことはありませんから。

 やはりバイクの面白みの一つは遠心力の掛ったターンです。
 ハーレーはそれを失っているように感じてしまうのです。
 ハーレーに乗ればのるほど、レーサーレプリカで思い切りバンクさせてターンしたくなります。それこそ、外向外傾で思い切り内傾角の深いターンです。

 「いつかはハーレー」 と思っていましたが、乗ればのるほど大きなジレンマに直面する今日この頃・・・・・・。
 まあ、安全だと言えば安全・・・・・・。
 外見も魅力的だと言えば魅力的ですが・・・・・・。

 内向内傾のスキーと同じように、大きく失っているものがあるように感じてしまいます。