街歩き 音楽の旅 | トナカイの独り言

街歩き 音楽の旅

 鈴江昭先生から、ご尊書をお贈りいただきました。

 『街歩き 音楽の旅』 と題され、副題に 『石畳を音楽の風が吹く Ⅱ』 とあります。
 お贈り頂いて最初に考えたのは、「Ⅱ」 とあるのだから 「Ⅰ」 があるはず。

 だから 『石畳を音楽の風が吹く Ⅰ』 を読まさせていただいてから 『Ⅱ』 を読もう、というものでした。そこで、さっそくアマゾンで注文し、それを先生にお伝えすると、アマゾンよりも早く 『Ⅰ』 までお贈り頂いてしまいました。

 先生、ほんとうにありがとうございます。

 

 

 鈴江先生とは、とても不思議な縁でつながっています。

 じつはまだ直接お逢いしたことがなく、いつか直接お逢いしたい方のお一人です。

 

 ただ十年以上前、鈴江先生を記念する演奏会・・・ 指揮はもちろん鈴江先生・・・ を聴かせていただいたことがあります。音楽を通じての親友で、マーラー研究家でもある土井さんからの勧めもあり、演奏会を鑑賞させていただきました。

 そこで、強烈な感動を与えられたのです。

 

 鈴江先生には著書もたくさんあります。しかし先生がもっとも力を入れてこられたのは、京都近辺の高校における吹奏楽団を通しての活動でしょう。友人の土井さんも先生の生徒のお一人でした。


 そんな先生が引退されるということで、園部高校と洛西高校を中心とした教え子たちが、「先生のために!」 と集まって実現した演奏会でした。

 土井さんも出演するということで、「ぜひ」 といってうかがわせていただきました。

 ここでの音楽体験が、一生忘れられないほど素晴らしかったのです。

 

 鈴江先生のもと京都で音楽を学んだ OB たちは、関東から九州まで各地に就職し、散らばっていました。そんな彼らが、演奏会のために続々と集まったのです。

 もう何年も楽器に触っていない卒業生たちが、楽器を借り、練習会場を手配し、忙しい時間を工夫して練習を重ね、その場に集ったのでした。参加したわたしの友人たちも、「何度も挫けそうになった」 と話してくれました。
 年齢差だけでなく、経験値も千差万別。現在の仕事も趣味も、これまで歩んだ人生も、まったく異なったメンバーが、ただ鈴江先生への想いから結集したのです。
 彼らが掲げたのは 「命を輝かせる」 演奏でした。

 

 この演奏会で、一つ強烈に覚えていることがあります。

 それは次のようなことでした。

 演奏を聴きながらわたしは、なんども涙を流しそうになりました。そのいくつかに、素晴らしいオーボエのソロがありました。

 あまりに美しく歌うオーボエの響きに、思わずパンフレットに演奏家の名前を探しました。
 すると、そこに見つけたのはオーボエ奏者による次の文章でした。
 「 『学生時代のお父さんはスゴかったんだぞ』 なんて自慢話はもう聞き飽きたかな。今夜いよいよ見せられるこの勇姿。妻よ、息子よ、お父さんはスゴいんだぞ!」
 それはそれは、ほんとうに凄い演奏でした。まさに命の輝きが、眩しいほどに感じられる演奏でした。

 

 スキーと音楽の関連性についてブログに書かせていただいたように、わたしは音楽を聴くと、その演奏家の感性を不思議なほど感じることができます。そして、どんなスキーをするかまで予測することができます。
 ですから、素晴らしい演奏に接すると、あたかも素晴らしい滑りを観た時のような感動を覚えるのです。

 

 そして、今回贈っていただいた本から、鈴江先生の深く、繊細で、音楽への愛情に満ちた感性を再確認することができました。

 タイトルには 『石畳を音楽の風が吹くⅠ』 と 『石畳を音楽の風が吹くⅡ』 とありますが、Ⅱの内容はⅠを膨らませたものです。もしご興味がおありでしたら、ぜひ新しい方をお読み頂けたら幸いと考えます。

 

 ご著書の中心を貫くのは、何よりも音楽に対する愛情。そして音楽を愛するゆえにヨーロッパを旅し、時に作曲家たちにつながる土地を歩き、生家や記念館を訪ねつつ、演奏会を巡る旅のもようが書かれています。
 わたしの友人のなかにも、しばしばヨーロッパを訪ね、ベルリンフィルやウィーンフィル、そしてシュターツカペレやゲバントハウスなどの演奏会を回る人がいます。そしてわたしも、いつかはベートーヴェンやシューベルト、マーラーやブラームスのお墓を参り、ハイリゲンシュタットの小径を歩き、演奏会巡りをしてみたいと願っています。鈴江先生が訪ねて感じられたことを、自分自身も直接に感じたい希望があります。

 

 先生は、タイトルの 「風に吹かれて」 をボブ・ディランの曲と絡めて説明されていますが、ディランのように、先生は漂泊の旅人でもあり、詩人でもあります。
 「風に吹かれて・・・・・・ふらりと旅に出るのは、そう簡単ではないかもしれない」

 しかし、「世界の街角に立つ」 ことは大切と説かれます。

 「若い頃に世界の街角に立とう!」 と読む者を鼓舞してくれます。

 そして、「旅は、自分の小ささに出会う非日常の時間」 と言われます。

 「旅は、その出会った小さい自分を道連れにして生きていこう、という 『心のけじめ』

 『その小さい自分と共に生きていこう』 という潔い再出発」 と教えてくれます。
 

 わたしがもっとも感動した言葉は以下でしょうか?

 「音楽は、『日常』 から汲み上がりながら、『日常』 に返すために 『爆発力を秘め圧縮された魂』 でなければならない」

 「(音楽ホールで)日常から逃れるのではない。日常に戻るための力(となるためのホール)であってほしい」

 先生の音楽が、なぜ人々を感動させるのか?

 その深い秘密に触れられる著書です。

 ぜひ多くのみなさまにお読みいただきたい一冊でもあります。

 

 そして、また鈴江バンドの音楽を、無性に聴きたくなる一冊です。