不思議な再会 | トナカイの独り言
2018年06月27日(水)

不思議な再会

テーマ:びっくり

 親友に紹介されて、宮沢賢治を一生の師とし、その研究をなさっている方にお逢いすることができた。

 絵本美術館 「森のおうち」 の館長を務める酒井倫子さんである。

 

 

 じつはわたしは宮沢賢治を尊敬しているだけでなく、日本人作家として、何と言っても彼がいちばんだと評価してきた。それは他の作家と比較したり、こちらの価値観で順位付けした訳でなく、わたしの心にもっとも直裁的に訴えかけてくるのが、間違いなく宮沢賢治だという理由からである。

 だから、宮沢賢治について権威者と話せるというだけで、わたしにとって重大なできごとであり、嬉しいできごとだった。

 

 親友から、「今ちょうど宮沢賢治の童話に書かれた動物たちの絵画を展示しているし、夏の終わりにはカザルス会のチェロコンサートもある」 と聴いた。

 動物や音楽好きなわたしに、彼女は心を配ってくれたのだ。

 

 カザルスと云えば、わたしには思い出がある。

 まず、わたしが初めての大怪我をして、スキーができなくなりかけた時、友人が贈ってくれた 『カザルスとの対話』 という本である。そして、 『カザルスとの対話』 と同じくらい大切で、もっともっと身近に感じる 『カザルスへの旅』 という本だ‥‥。

 

 『カザルスへの旅』 にはいくつかの旅行記が入っていて、そのなかに 『パリひとり時代』 という自伝が入っている。

 

 

 『パリひとり時代』 に、わたしはどれほど慰められただろう。

 かつてのわたしは 『パリひとり時代』 を生きた人の感性が、宮沢賢治を愛しているのを知って、どれほど勇気づけられただろう。

 わたしが敬愛する詩人、立原道造がやはり宮沢賢治と深い関係を持っていたことを教えてくれたのも、この書だった。

 著者にぜひ逢ってみたいと、ずっと思わせてくれた物語でもある。

 

 『カザルスへの旅』 の著者の名前は覚えていなかったのだけれど、宮沢賢治とカザルスのつながりで、今回もう一度読みはじめた。

 すると、それがいとも不思議な糸でつながっていたのである。

 

 著者は伊勢ひでこさんだった。

 彼女の描いた絵を載せた童話なら、何冊か持っている。

 今回の絵本美術館の展示にも彼女の絵があった。

 それより何より、酒井さんと伊勢さんは大の親友だというのである。

 

 館長の心像世界で、宮沢賢治の文にもっとも絵を描いて欲しいのは伊勢さんだというのだ。わたしも 『パリひとり時代』 を生きた人こそ、賢治の文にふさわしいと感じている。

 それはちょうど砂糖菓子のようなショパン演奏と、屍の間に咲く花のようなショパンの違いを感じさせる。

 それは単に心地よいだけのシューベルトと、寂しさや焦燥感で狂いそうなシューベルトとの違いを感じさせる。

 ショパンもシューベルトも、これだけ弾かれていながら、それを感じさせる演奏者はごくわずかなのだ。しかし、そんな演奏家は確かに存在している。
 

 いろいろなものや人との出逢いがあるけれど、今回の出逢いは特別なものだ。

 近いうちにあの 『パリひとり時代』 の著者に逢えるかもしれない。

  『パリひとり時代』 から数十年を経て、彼女は、そしてわたしはどんな再会を‥‥現実世界では 「初めての出逢い」 を果たすのだろう?

 

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