セツコ・オマージュ ~松田聖子はかく語りき~ | ちょっと蛇足的な、ココロ模様。

ちょっと蛇足的な、ココロ模様。

人からたまに変わってる、と言われます。
だって変わらなきゃ、何も始まらないじゃない?

by ちょっとナナメ上を行く吟遊詩人 小林宏行                    


セイコといえば、野菊の墓
セツコといえば、火垂るの墓である。

先月の江東シネマフェスティバルで日向寺太郎監督との出会いが、
あの名作を深堀りするキッカケとなった。

言わずと知れた不朽の名作。
2008年に実写版として映画化された『火垂るの墓』で
メガホンを取った日向寺監督は製作にあたり、
松田聖子に対してこのように語っている。


最初にお会いした時に
「母親の原像」をお願いしますと。
現場では何も言っていません。
僕としては、母親をちゃんとやってほしいということと、
出番の限られた役なので、
ある種の華やかさが必要だと思ったんです。
母性だけだと観客の印象にあまり残らない。
だから、ぱっと出てきた時の華やかさがあって
印象に残ることが重要でした。

(アットニフティ『火垂るの墓』日向寺太郎監督インタビューより

吟遊詩人tomtomの蛇足的なココロ模様
日向寺監督、叔母役の松坂慶子、節子役の畠山彩奈ちゃん、
清太役の吉武怜朗クン、母親役の松田聖子(左から)


松田聖子。

それは象徴。

幾多の遍歴も自らエネルギーとし、輝きも衰えず。
ジェンダーシンボルとして未だに君臨する稀有で貴重な存在。

象徴的に扱うには決して多くを露出せず、
華やかで控えめな演出が欠かせない。

アニメ版も含めこの作品をご覧になった方には説明するまでもないが、
セツ子の母親は物語の序盤で命を落としてしまう。
多くを露出すると存在価値が薄れてしまうからだ。

私の今までの記憶を辿ると
スティーブン・スピルバーグ監督の『オールウェイズ』で
晩年のオードリー・ヘプバーンが演じた天使のハップ
もっとわかりやすい記憶を遡るとすれば、
ウルトラマンシリーズのウルトラの母である。


アイコン。

これも象徴。

本来はギリシャ語で「イコン」と読み、
キリスト教において神や天使や聖人を記念し象徴として
模られた絵や像で敬拝の対象とされるものである。

吟遊詩人tomtomの蛇足的なココロ模様
キリスト教のイコン 「生神女」


吟遊詩人tomtomの蛇足的なココロ模様
セツコ役の畠山彩奈ちゃんと


前述で例に挙げたオードリーやウルトラの母でも、
古来のキリストのイコンでも、
それは太陽のような存在。そして崇拝の象徴。
すべてを煌びやかに包み込むオブラート。

しかし、この「火垂るの墓」では、
それが皮肉にもそれが悪循環となり、
物語は思わぬ方向に進んでしまう。

吟遊詩人tomtomの蛇足的なココロ模様
サクマ式ドロップス。
作品を観た人なら誰もが咽び泣く。

私の映画観賞史上、
鮮烈な記憶を残したキーアイテムのひとつ。

(まさか復刻版がアマゾンで扱っているとは驚いた)

この作品を観た後は誰もが感じるだろう。
スーパーのお菓子売り場を通るのも、ためらってしまうこと。
何を隠そう、それが今のワタシです。(泣)

しかし、アイテムとは名ばかりで語るには
あまりにも言葉が軽すぎる。

松田聖子扮する母親と同様、
このドロップスもあることを示唆する
非常に重いアイコン。

象徴と遺物は何を我々に伝えたかったのか?

後日ブログ更新にて、私がこの作品から想う
その真意を語りたいと思います。



火垂るの墓』 予告編 by 日向寺太郎
~『星空の下の君へ』 by 松田聖子




セツコの振る舞いにはただ涙。
そしてセイコの素晴らしい隠れた名曲です。
聖子の曲を聴いて涙腺崩壊したのは『瑠璃色の地球』以来か。


吟遊詩人tomtomの蛇足的なココロ模様

先月の江東シネマフェスティバルにて日向寺太郎監督と。
映像製作について非常に意義ある時間をいただいた。
客観的と主観的のその境界線は芸術作品だからこそ
難しくもあり面白くもある。

そして、感謝!


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