11月某日、私は学生時代のOB会の為に、

浜松から岡山経由で高知市まで電車で向かうことになった。

浜松から岡山までは新幹線「ひかり」で約3時間、

岡山から高知までは特急「南風」で約2時間半。

まずまずの長旅だ。

 

電車による長旅のお供は、何と言っても好みの雑誌ということで、

今回も浜松駅ビル8階の本屋さんで「STEREO SOUND」誌を購入。

更に、数日前に、オーディオ開発仲間のSさんから、

「知っている内容も多いけど、これ、なかなか面白いよ」と言って渡されたのが、

岡野邦彦著の「その常識は本当か これだけは知っておきたい 

実用オーディオ学」の本だった。

 

予定どうり浜松から「ひかり」に乗り込んだが、

あいにく、混雑していて暫らくは立ち席だったが、

名古屋からはやっと座ることが出来た。

そして、おもむろに「STEREO SOUND」誌を開く。

 

相変わらず、新しい高額モデルや評論家によるレポートが満載だ。

また、毎回楽しみにしている連載も楽しく読ませてもらった。

暫らくの間は楽しんでいたが、相生を過ぎる頃には、

評論家によるオーディオ機器への褒め言葉を駆使したレポートに

少しうんざりしてきた。

 

岡山駅でいつもの肉うどんの昼食後、「南風」に乗り込んだ。

今度は、「実用オーディオ学」の方に手が行った。

うんうん、中々面白い。

いつもは瀬戸大橋を渡る時の壮大な瀬戸内の景色や、

大歩危小歩危の大自然の景色を楽しむのだが、

今回はこの本にくぎ付け状態。

結局、高知駅に着くまでに半分位まで読み終えてしまった。

 

無事にOB会も終わり、

次の日には、来た時と逆の工程をたどることになる。

 

高知駅で電車に乗り込み、

早速例の本を取り出し読みふける。

結局、瀬戸大橋を渡る頃には、最後まで読み終えていた。

 

 

この本の著者はオーディオの専門家ではない様だが、

オーディオマニアの怪奇的な楽しみ方を否定するわけでは無く、

学者らしく論理的な検証を重んじているところに好感が持てた。

 

概要は、

「アースと電気配線の科学」、

「CDとハイレゾの科学」、

「SACDの科学と高音質の秘密」、

「室内音響の科学」、

「接続ケーブルの科学」、

「あると役立つ測定機材」 

の内容で、

オーディオにまつわる色々な情報が網羅されている。

 

オーディオに関連する学問は広く、

音響学や電子工学だけでは無く、

物理学、統計学、建築学、医学、物質工学、

更には音楽などの芸術全般についての理解も大きく絡んでくる。

この本ではメインとなる音響学や電子工学での話題をピックアップしており、

オーディオを探求している者であれば、

概要としては認識済と思える内容だが、

改めて理解を深める事が出来る。

 

まず私がハマったのが、「CDとハイレゾの科学」。

音質の差を図や測定データを駆使し、非常に分かり易く、

また納得できる内容にまとめられている。

ただし、「CDのエラー訂正の原理」については、

分かり易く解説しているとは言え、かなり専門的で難解な内容となっている。

 

「接続ケーブルの種類と特徴」では、

バランス接続(XLR)とアンバランス接続(RCA)の優劣についても述べられている。

たまたま先日、新規開発のDIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER DA502の試聴評価を行っていた時、バランス接続の極性のミスマッチによる音質劣化は別として、

極性が正しく接続されていても、

バランス接続の音質がアンバランス接続に比べて

楽器音の造形が散漫になることを体験した。

これはバランス接続の場合に、

アンバランス/バランス変換回路が増えることによる劣化である

可能性についてこの本に書かれており、納得した。

 

検証の為の測定機材やソフトウェアは、

一般的なオーディオマニアでも手を出しやすいものが紹介されており、

オーディオマニア自身による論理的な評価を奨励している。

その中で、たまたま私も利用させていただいている測定機材やソフトウェアを

以下に紹介しておく。


テスト信号発生ソフト WaveGene (free)


高速リアルタイム スペクトラムアナライザ WaveSpectra (free)


定在波による室内音響シミュレータ Stndwave2 (free)


リアルタイムアナライザ Phonic PAA3X (約70000円)


計測用マイクロホンBehringer ECM8000 (約5000円)


 

その他、この本には掲載されてはいないが、安価で有効な機材やソフトウェアとして、
コンデンサーマイク用ファンタム電源 ART PhantomⅡ(約6000円)


外付けUSBオーディオインターフェース CREATIVE SOUND BLASTER DIGITAL MUSIC SX(約12000円)


DIGITAL MULTIMETER Sanwa CD771(約7500円)


USBオーディオインターフェース TASCAM US-2x2(約12000円)


USB接続型オシロスコープ NOVATEK DSO-2090 USB (約20000円)

自作スピーカー測定プログラム MySpeaker(5000円)

 

この本は、

一般的なオーディオマニアが良いと思って採用したオーディオ機器の接続方法が、

以外にも音質劣化を招いている事があることを論理的に解説している。