恐怖!血も凍る2本立て! | ゾンビは走っちゃダメ!

恐怖!血も凍る2本立て!

 などと茶化していいわけもない、今月上旬にギンレイホールで観た『アイ・イン・ザ・スカイ』と『ヒトラーの忘れもの』の2本立て。

 

 『アイ・イン・ザ・スカイ』の舞台は現代の対テロ戦争。英米の連合軍がアフリカ上空のドローンからの爆撃で、自爆テロを準備するテロリストを抹殺しようとする。しかし、テロリストの隠れ家のすぐ近くの道端で少女がパンを売っている。少女を助けるために爆撃をやめるか、少女を犠牲にして自爆テロを防ぐか、決断を迫られる軍人や政治家たち。

 『ヒトラーの忘れもの』の舞台は第2次大戦後のデンマーク。占領していたドイツ軍が引き揚げた後、海岸に埋められた地雷を捕虜のドイツ少年兵たちが撤去させられる。地雷の暴発で次々と命を落としていく少年たちと、彼らとだんだん親交を深めていくデンマークの教官。危険極まりない作業を捕虜にさせていることに対して国全体としては「ナチの罪を忘れるな」という論理が優先する。

 どちらもどんよりと疲れる映画だ。少女を移動させるにはパンが早く売り切れて店じまいさせればいいのだなと、英米が案ずるお買い物競争になるが、それとて命がけ。地雷が爆発するぞと構えさせたり、このシーンでは爆発しそうもないなと思わせて隙をついたり。2本とも緊張感がずっと持続する。

 ドイツ兵に地雷の後始末をさせたなんて、デンマークにそんな史実があったとは知らなかったが、よくまぁ描けたなと思う。『アイ・イン・ザ・スカイ』ともども、自国の恥にもなりかねない戦争の一面だ。この手の映画が作られると、良くも悪くも「現実はそうじゃない」という声が上がるが、それらが映画であることはよくわかっている。映画なら「最悪の事態でもうちらの国は最善を尽くしましたよ」という逃げ道を少なからず用意しておくもので、この2本だって意地悪な見方をすればそうだ。でも、それ以上に迫ってくるのは、まともな精神状態を保つのが難しいくらい、死が身近にありすぎる戦争状態だ。

 どんより疲れたよ。