週末のお昼時、年中人手不足に悩まされているバイト先のレストラン「Délicatesse(デリカテッス)」は大賑わいだ。
そして、事件は起きた。
カランコロン
いらっしゃいませ。
二人組の欧米人男女は店員を一瞥することもなく、空いている席へ一直線。
ロボットのように無表情の私は、二人分のお冷を持ってテーブルへ向かった。
"Where's the English menu? Bring it here."
英語が得意なわけじゃな私でも、彼氏っぽい男が発した言葉の意味はだいたい分かるが、横柄なお客様であるのはすぐ分かった。
"Sorry sir. We have a only Japanese menu"
勇気を出して発したへたくそな英語も通じたようで、メニューに載っている料理の写真を二人が興味深そうに覗いていた。
「すみません」
「はい、ただいま」
そうこうしている間も、他のお客さんから声を掛けられる。
バイト代、上げてくれないかな。
つづく