本日はもう1本。2本目はサザンオールスターズ「彼氏になりたくて」(2015年リリース、アルバム『葡萄』収録) です。

この曲はサザンオールスターズとしては久し振りともいえる、切ないラブソングです。2006年以降、そういった曲は皆無で、そのまま2008年の無期限活動休止へ繋がります。その後2013年に活動再開した際も、桑田佳祐さんがラブソングを書くことは無く、こうして迎えたサザン10年ぶりのオリジナル・アルバム『葡萄』の中の一曲、「彼氏になりたくて」で久々に披露されました。

桑田さんは曲のイメージとして1970年代のアメリカン・ポップスを想起して作っています。また、歌詞のテーマやタイトルはジョン・レノン (John Winston Ono Lennon) とポール・マッカートニー (James Paul McCartney) が初期のローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) に提供したシングル「彼氏になりたい」(I Wanna Be Your Man) が基になっており、こうした「君の彼氏になりたいんだ」というロマンティックな曲が、昨今見られなくなってきたことも、この曲を作るきっかけになっています。桑田さんはメロディーを作った段階から「叶わぬ恋」になるというイメージをぼんやりと持っていたといいます。

報われない、けど君への想いは誰にも負けない。そんなラブソングになっています。

「Baby, baby 夜毎夢の中で」

「Say you love me 見つめていたい」

主人公の僕は、ずっと君のことを想っていました。毎晩君のことが夢に出てきて、ずっと僕のことを見つめてくるのです。僕もその夢に呼応するように、君のことを見つめていたいのです。

「あの吐息まじりの甘い言葉でイカせてよ」

君が僕に甘い言葉で囁くのです。僕はいつも悶え苦しむのです。吐息交じりで話す君の声。これで僕を天国へと誘って欲しいと思うのです。

「Bye bye, baby シャボン玉みたいに」

「壊れて消えた愛」

でも僕は君にフラレているのです。別れを告げられるかのような失恋。それはシャボン玉のように「パチンッ」と音を立てて割れるような、そんな悲しい終わりだったのです。

「窓ガラスに映る惨めな恋の抜け殻よ」

窓ガラスに映ったフラレた僕の顔は、とても見てられないくらい惨めな顔をしていました。

「君の彼氏になりたくて命に代えたって」

「空のブルーに目が眩んで抱き寄せた裸のエンジェル」

それでも僕は君への想いはとても強く、命に代えても惜しくないほど、君の彼氏になりたいんだと君に伝えたいのです。相当君への想いが強いんでしょう。男性でしたらこういった経験はあるはず。それを体現したストレートな歌詞です。

「Tell me, tell me フラれたその訳を」

「もう恋なんかしない」

なんで僕はフラれたのか。実はその訳を君は教えてくれないのです。君に見合う男になるから、教えてほしい！と懇願します。そして君の彼氏になれないのなら、僕は恋なんかしないとまで言うのです。

「この広い世界で奇跡みたいなひと目惚れ」

君との出逢いで実は惚れていた僕。ひと目惚れだからこそ、相当君への恋心は強いんでしょう。

「ひとりぼっちの Birthday Party」

「悲しき Love Story」

本当は君と一緒に楽しみたかった誕生日パーティー。ご飯も用意してケーキも食べて、プレゼントを贈り合って。そんな理想を抱いていた僕を現実に引き戻す、ひとりぼっちの誕生日パーティー。こんな悲しいラブストーリーはありません。

「映画のように口説きたくて」

「キメたのに何故かロンリー」

映画のラブストーリーに憧れて、同じような口説き文句も用意して、バシッと決めた筈なのに、何故か僕はひとりぼっち。憧れは無情にも散りゆくのです。

「君に届かぬ Invitation」

「涙の Celebration」

誕生日パーティーの招待状まで用意していたのに、君に届くことは無く、そしてひとりぼっちで寂しく過ごすパーティーで僕は涙が出てしまいます。ここまで悲しく切ない事があっていいのでしょうか。

「枯れ葉のように風に舞って」

「人混みに消えた招待状(レター)」

そして要らなくなった招待状は、人混みに紛れて、枯れ葉のようにして消えていきました。

とてもメロウなバラードで、ストリングスがより「僕」に寄り添うような優しい旋律を奏でています。ストリングスアレンジは島健さんによるもので、『葡萄』の他の曲と同様、島さんはリズム・レコーディングの段階からアレンジに参加して曲のイメージを膨らませていったといいます。アコースティック・ギターは斎藤誠さんによる指弾き。ドラムはループ、ベースは曽我淳一さんによるシンセサイザーであるなど、基本的には打ち込みとなっています。また、木管編成が足されており、フルートとオーボエ、イングリッシュ・ホルンが入っています。

君への想いが強い、けど儚いラブソング。サザンらしさが出ているそんな普遍的な一曲だと思います。

君への想いは強く。サザンオールスターズ「彼氏になりたくて」