うさぎのラビット

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今日、スターバックスでカフェオーレのショートを頼んで待っていた。どうしてショートなんだ?俺の何を知っていて、あの女性は「ショートですか?」と言ったんだ?つい、「はい、ショートです」と答えてしまった。ボクサーパンツの上にスーツズボンを着けているわたしのショートさがわかったんだろう。ついズボンのジッパーを点検した。
隣のレジで真っ白い大きなうさぎが、「カフェ、オレーオーレオーーーレ」と騒いでいる。「承知しました。ショート、ーー」「ノンのん、ノーショート、わたしはロングロング」と言っている。ちらっとわたしを見た気がした。
支払う時、うさぎは「ラビットペイ」と言った。お店のひとは「デビッドですね」と言うが、うさぎは譲らない。「いいえ、ラビットです。ラビット、ラビット、ラビットです」
うさぎが取り出したのは、うさぎのぬいぐるみだった。お店のひとは、ぬいぐるみを無理にスキャンさせた。「ありがとうございますございます」デビッド端末にはうさぎの毛が野球ボールほど丸くなっていた。
うさぎはニコニコしながら、あたかも待ち合わせしていたような笑顔でわたしのテーブルへ来て、椅子を白い右足で動かして座った。
椅子に座るとうさぎの腿は椅子から溢れて、まんまるの白いボールになっていた。
「ねぇー、トモさん、ひとつ取引しませんか。わたしはあなたにいくらでも使えるラビットペイに使えるみみをあげます。あなたはわたしに、右耳をください」
「わたしの右耳が役にたちますか?」
「そうですねー、役にたつかどうかはあなたからはわかりません。でも役に立つのです。日頃は絶対に明かさないことですが、あなたはわたしの好みの右耳をもっていますので、お話ししましょう。わたしたちの国、ラビットランドでは右耳が大切なんです。ヘッドフォーンも右側しかありません。車のウインカーも右側しかありません。ハンドルも右側しかありません。ギターも左手なして弾けるようになっています。頭が思ったところをギターは自動的に押さえてくれます。レストランでもナイフで切ろうとすると、肉は黙って切られるのです。インベーダーゲームも右手だけで行います。トマトを切るのも右手だけで行います。トマトが黙って切られるんですね。アァー、話しすぎました。つまり、右耳右手は大切なんです。しかし、いつも右耳を使っていると、すり減ってしまうんです。レコード盤のように。タイヤのように」
うさぎは話しをぴょんぴょんと続けた。
「すると右耳がレコード盤のようにすり減ってくるんです。時々、ターンテーブルの針を換えないといかないように」
俺はだいたい理解した。
「つまりわたしの右耳が必要ということですか」
「お願いします。われわれラビット族の将来のために。ラビットペイの口座にはうさぎの国が現金を振り込みますので」
後ろから、お店の人が「これ、もうよろしいでしょうか?」とシナモンシュガーをもった。「いいですよ」
その瞬間、うさぎは「ありがとうございます」と言った。
窓を見ると、わたしの右耳はうさぎの耳になっていた。首を回すと、うさぎはいなかった。
それ以来、わたしは右のうさぎの耳を時々、撫ぜながら、デビッドカードの契約を考える。ひとびとも慣れたようだ。俺も慣れてしまった。
問題は、スターバックスで支払いをする時、右耳をPOSにもっていかなくてはいけないこと。銀行でお金をおろすとき、耳をATMのカード入れに入れないといけないこと。
さてこれからコーヒーを飲みに行くが、面倒といえば面倒だが、わたしは首を傾け耳をスキャンしてもらってもらう。しかしわたしはこのことにはあんまり気にならない。腹筋が鍛えられたと思えば、良かつたのかもと思う。
あとひとつ悩みは、このままうさぎの耳をもって生きていくとき、耳を低い天井にひっかけないように注意しなければならないこと、なにしろうさぎの耳には慣れていない、それとうさぎの耳がいろいろな獣の足音を聞き分けるので、あまりおびえないことである。東京の駅で、オオカミや狐、熊や栗鼠の足音も聞こえるのである。その時、俺は立ち上がって音を聞き分ける。だが時々、駅やレストランでつま先立ちしてしまう。
それだけでなく、その時わたしは真っ白なうさぎになっている。オレンジのTシャツを着けて。
いつからか俺はぴょんぴょんと通勤して、ぴょんぴょんとスーパーへ向かっている。さて、ぴょんぴょんぴょんーー。
それから、うさぎでもジャイアンツファンではなく、タイガースファンですので、間違えないでくださいね。後楽園を歩く時はいろいろなプレゼントをいただけるのは嬉しいが。

以前にアップしたストーリーです。昔読んだ方はどこが変わったか、思い出してください。無駄だと思ったらやめてください。




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