女教皇との出会いを通じて、冷静で客観的な視点を持ち、
内なる声に耳を傾けることの大切さを学んだフール──

潜在意識と直感に触れたその先で、次なる出会いが待っていました。

 

内に眠る知識と知恵に気づき、自身の潜在意識と直感を信じることを知った彼は、
様々な経験を積みながら、さらなる成長の旅を続けていました。

 

そんな中で、次に出会ったのは【3:女帝(The Empress)】でした。

 

 

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黄金色の穀物がゆれる、まばゆいばかりの大地――
その向こう、やさしく風が吹き抜ける草原に、
赤いソファにゆったりと身を委ねた女性がいました。 

 

白く繊細なドレスにはザクロの模様。
頭には、12の星がきらめく冠。
そしてその眼差しは、すべてを包み込む母のように温かく、
訪れたフールを優しく見つめていました。 

 

彼女の名は、【3:女帝(The Empress)】

 

 

背後には、豊かな森と命を育む川。
その風景すべてが、彼女の慈しみに満ちた存在を映し出しているようでした。

 

フールはその姿に、思わず息をのみました。
張りつめていた心がふっと緩み、
あたたかさが胸の奥に広がっていくのを感じながら、こう尋ねます。

 

「女帝様、私はこれからどうすれば良いのでしょうか?」

 

女帝は、柔らかな微笑みを浮かべたまま、こう語りかけました。

 

「まずは、あなた自身を満たしてあげましょう。
美しいものに触れ、美味しいものを味わい、心からリラックスできる時間を過ごして。
そうして満たされた愛と喜びは、自然とまわりへと広がっていくものなのです。」

 

その言葉を聞きながら、フールは気づきました。

 

これまでの旅では、“知ること”“深めること”にばかり意識を向けていた。
でも、“満たすこと”もまた、歩みを進めるために大切なのだと――

 

風に揺れる穀物の香り、鳥のさえずり、女帝が腰かける赤いソファのぬくもり。
今、この瞬間にあふれる豊かさを感じながら、フールの心は穏やかにほぐれていきました。

 

『もう私は、すでに与えられていたのかもしれない』
そう思った瞬間、女帝は優しく微笑みました。

 

「あなたが自分を慈しむこと――それは世界を愛するということ。
その優しさは、静かに広がり、やがて誰かを癒す灯となるでしょう。」

 

その言葉を胸に、フールは静かに頷きました。

 

焦らなくてもいい。
まずは自分の心にやさしくしてあげよう。
そう決めた彼は、静けさとぬくもりを心に抱きながら、また一歩を踏み出していきました。

 

 

 

 《タロットカード【3:女帝(The Empress)】とはどんなカード?》 

タロットカード【3:女帝(The Empress)】

黄金に輝く穀物畑を前に、ハートの装飾が施された赤いソファにゆったりと身を委ねる女帝。

ザクロ柄の白いドレスを纏い、12の星で飾られた冠を戴き、慈愛に満ちた微笑みを浮かべています。

そして、女帝の背後には、生命の源となる川が流れ、豊かな緑の森が広がっています。

 

 《タロットカード【3:女帝(The Empress)】を包む“色”と“叡智”の象徴》 

タロットカードには、描かれている色や形、配置にも深い意味が宿っています。
ここでは【3:女帝(The Empress)】のカードを彩る“色”たちが語るメッセージを、
自然と生命の象徴に満ちたこの一枚からひもといてみましょう。

 

このカードの主役ともいえる【黄色】は、
空の広がりと黄金色の穀物畑にあらわれ、
“繁栄”“実り”“豊かさの光”を象徴しています。
それは女帝の“包容力”“恵み深さ”を優しく物語っているのです。

 

さらに目を引くのは、
頭上にきらめく12の星と、ドレスにあしらわれた【白】、
ハート模様の装飾が施された赤いソファの【赤】、
背景に広がる森の【緑】──

それぞれの色は、女帝という存在をより立体的に映し出す、大切な要素となっています。

 

🔸テーマカラー

●【黄色】:

空や大地に広がる穀物畑に使われており、女帝を象徴する色。
太陽の光を受けて輝くその黄色は、“繁栄”“実り”“生命の循環”を表し、
女帝の持つ“慈しみ”“物質的・精神的豊かさ”を象徴しています。
まさに『実を結ぶ力』を宿した色です。

 

また、女帝の周囲を囲む空間(ソファ背面など)に密かに配置されている♀マーク(ビーナス)の繰り返し柄。
♀マーク(ビーナス)は、“愛・美・女性性”の象徴。
それが繰り返されていることから、
「豊かさと愛に満ちた空間」「愛の波動があふれる場」として表現されていると考えられます。

黒地に黄色で描かれている点も重要です。
黒は未知”や“深遠な宇宙”、黄色は“知性・光・生命力”を示すため、
『内なる深みに宿る愛の力』『闇の中にも希望の光がある』ことを示唆していると解釈できるのではないでしょうか。

 

●【赤】:
女帝がゆったりと腰掛ける、ハート模様の赤いソファ。
これは、王座であると同時に、“情熱”“生命力”の象徴でもあります。
柔らかく心地よいその座り心地は、
物質的な満足だけでなく、精神的な安心感や充足も示しています。
赤は、内なる強さと、命を育む温もりを感じさせる色です。

 

そして、ドレスに描かれているザクロは、古来より“女性性”“豊穣”の象徴とされ、
赤は“命の源”“魂の再生”を意味します。
実の中に多数の種を宿すザクロは、『内に秘めた可能性』『生命の神秘性』そのもの。
この赤は、女帝が持つ『美しさの背後にある力強さ』を暗示しています。


●【緑】:

ソファのハートに描かれた【♀(金星)】のマークや、背景の森の緑。
これらは、“癒し”・“安らぎ”・“自然の恵み”を象徴しています。
『愛と美は、癒しの中で育まれる』というメッセージが込められ、
女帝が与える“安心して身を委ねられる空間”を表現しています。
また、緑は成長と調和の色でもあり、
母なる大地としての女帝の姿を、やさしく際立たせる色です。

 

 

👉色の基本的な象徴については、【導きの灯り 〜色彩編〜】で紹介中。

 

 

🔸カードに登場するアイテムとその意味

●女帝の背後に広がる森:

女帝のカードは、大地に根ざした豊かさ、愛情、そして育む力を象徴しています。
森はその象徴的な背景として、生命力と成長、そして心の安らぎを暗示しています。

 

しかし、よく見ると森の中に幹も葉も黒く影のように書かれた木が混在しています。
それらの木は黄色い幹に緑の葉が茂ったよりも高くなっています。

黄色い幹に緑の葉が茂った木は生命力や光を受けた成長、自然界の豊かさや希望。
黒く影のように書かれた木は影の部分、または内省の象徴。

つまり、この対比は、光と影のバランス、
そして“豊かさ”の裏側にある“静かな強さ”や“内面的な成熟”を象徴していおり、
『成長には影の存在も不可欠』であるというメッセージと考えられます。

森の中に「光と影」「陽と陰」が混在する構図、
一見目立たない黒い木のほうが高く描かれているのは、愛や実りの力を支える深い根のような力──
女帝が持つ“母なる強さ”と“影すら抱く包容力”を表現しているのかもしれません。

 

●女帝の足元にある「グレーの床」

女帝の足元には、自然の地面ではなく、グレーの石畳やコンクリートのような質感が広がっています。

このグレーは、自然界の中にあって“人工的な要素”や“物質世界での安定性”も取り入れていることを示しているかもしれません。


あるいは、精神性と物質性の境界としてのグレー(=中庸)を意味しており、
女帝が“精神性(宇宙・叡智)”“物質性(現実・実り)”を結びつける存在であることを象徴している可能性もあります。
女帝は“実際に手に取れる豊かさ”も扱うカードなので、グレーの床はその現実性の象徴でもあるかもしれません。

 

●ハート装飾(盾)

一見、ソファの装飾に見えるハートは、実はシールド(盾)を表しています。

ハートは人の心を、♀(金星のシンボル)は愛と美を象徴し、
この盾は『愛と美を受け止める力』を表しています。
緑色のシンボルは、やすらぎと癒しを意味し、
「大丈夫、私が守ってあげる」という女帝の優しいメッセージが込められています。

 

12の星で飾られた冠

この冠に飾られた12の星は、黄道十二宮(こうどうじゅうにきゅう)を象徴しています。

黄道十二宮とは、天球上の太陽の通り道である黄道を30度ずつ12等分した領域のことです。

 

【黄道十二宮の名称】
白羊宮(はくようきゅう)/金牛宮(ぎゅうぎゅう)/双子宮(そうじきゅう)/巨蟹宮(きょかいきゅう)/獅子宮(ししぐう)/処女宮(しょじょぐう)/天秤宮(てんびんぐう)/天蝎宮(てんかつぐう)/人馬宮(じんばきゅう)/磨羯宮(まかつきゅう)/宝瓶宮(ほうへいきゅう)/双魚宮(そうぎょきゅう)

 

これらは、私たちがよく知っている十二星座に対応しています。

この冠を戴く女帝は、宇宙の生みの親、すなわち生命の源を象徴しています。

 

 

 《タロットカード【3:女帝(The Empress)】正位置の解釈》 

今ここにある“豊かさ”に気づいていますか?

【女帝】のカードが正位置で現れた時、
それは『物心両面で満たされる時が来ている』というサインです。
それは、何か大きな結果を手にする前触れかもしれませんし、
今すでに与えられている環境の中に“感謝すべき豊かさ”があることへの気づきかもしれません。

キーワードとなるのは育む力”受け取る力”

あなた自身の中にある優しさ”・“思いやり感受性が、誰かにとっての癒しとなり、
あなた自身にも大きな恵みをもたらしてくれるでしょう。

また、自然とのふれあいや、心が満たされる体験(アート・音楽・美味しい食事・温かい交流など)を通じて、
エネルギーが循環しやすいタイミングでもあります。

特に、女性的な感性や創造性が開花しやすいとき。
物事を形にする育てていくというプロセスに喜びを見い出せるでしょう。

 

🌿日常生活へのアドバイス
 

  • 自分自身にご褒美をあげましょう(好きな香り・お気に入りの服・自然の中で過ごす時間 など)
  • 五感を満たすことで、創造性や癒しの力が高まります
  • 与えるだけでなく「受け取ること」にもOKを出して

 

 《タロットカード【3:女帝(The Empress)】逆位置の解釈》 

与えすぎて、疲れていませんか?

 

【女帝】が逆位置で出た時、
「自分を犠牲にしすぎていない?」という問いかけのサイン。
周囲を満たすことにばかり意識が向き、自分自身のケアが後回しになっている可能性があります。

『ちゃんとしなきゃ』『満たしてあげなきゃ』と無意識に頑張りすぎているかもしれません。
または、“本当に望んでいないこと”を、周囲に合わせて続けてしまっている…
という状況も考えられます。

女帝の逆位置は、“愛”や“豊かさ”が空回りしてしまうイメージ。
自分を空っぽのままにしておくと、どれだけ与えても満たされず、無力感や疲れにつながってしまいます。

 

🌿日常生活へのアドバイス

  • 「私が我慢すればうまくいく」という思考に注意
  • 無理に優しくしようとせず、自分の心の声に正直になって
  • 自然の中で深呼吸し、自分に優しい時間を持ちましょう

     

 《まとめ》 

女帝との出会いは、フールに『まずは自分を満たすこと』の大切さを教えてくれました。
自らの幸せが満ちてこそ、愛や豊かさは周囲にも波及していく――
そんな深い学びが、フールの旅の次なる力となっていきます。

 

あなたは自分自身を満たすことを意識していますか?
日々の生活に追われたり、心配事で心がいっぱいいっぱいになってしまうことが多々あるかと思います。

 

そんな時は、【3:女帝(The Empress)】を思い出してみてください。

そして、些細なことでも自分をほめてあげましょう。

 

 

 

 《次回予告》 

 

次なる出会いは──
信念と責任を背負い、王座に座す厳格な人物。
フールが受け取る新たな試練とは?
第4章【4:皇帝(The Emperor)】へと続きます。