【魔術師(The Magician)】との出会いによって、人生を“創造する力”が自らの内にあると知ったフール

旅のはじまりを前に、彼は町外れの静かな教会を訪れた。

 

朝靄がゆっくりと差し込む礼拝堂の奥――

 

そこには、水面に広がる波紋のような淡い水色の衣をまとい、グレーの石座に静かに座る女性の姿があった。

 

その手には聖なる書『TORA』。

 

彼女の名は、【女教皇(The High Priestess)】。

 

言葉なくフールを見つめるその眼差しは、まるで深い湖の底からすべてを見透かしているようだった。
冷たささえ感じるその静けさに、フールは思わず足を止める。

 

けれど、不思議とその場を離れることができなかった。
この人は――何かを知っている。

そう直感したフールは、そっと彼女の言葉に耳を傾けた。

女教皇(The High Priestess)は静かに目を閉じたまま、ゆっくりと語りかけてきた。

 

「フールよ。
旅に出たあなたが、再びここで足を止めたのは偶然ではありません。

心の奥にあるかすかなざわめき――
それは、まだ見ぬ未来への不安かもしれません。

けれど、答えは外にはありません。
あなたの内側に、すでにあるのです。」

 

静寂の中、彼女の声だけがやさしく響く。

「この『TORA』の書にも、こう記されています。
《目に見えるものが、必ずしも真実とは限らない。
内なる声に耳を澄ませたとき、本当の答えが現れる》」

 

「見えないものを信じる……?」

フールは問いかけた。

女教皇(The High Priestess)はゆっくりと頷いた。

「焦らなくていいのです。
目に見えないものこそが、あなたの道を照らす灯となる。

あなたの中に眠る“知恵”“直感”――
それは、静けさの中でこそ目覚めるのです。」

 

その瞬間、フールの胸の奥で、かすかな光がともるのを感じた。

 

魔術師がくれた“創造の力”が、外へ向かう力ならば、
女教皇が示してくれたのは、“内に宿る真実”と向き合うための、静かで深い導きだった。
 

次の一歩を踏み出すために、
今はまだ、“動く”よりも“感じる”とき。
静けさの中でしか見えないものがある。


フールはそう、静かに確信した。

 

 

 

 《タロットカード【2:女教皇(The High Priestess)】とはどんなカード?》 

タロットカード【2:女教皇(The High Priestess)】

白波を思わせる模様が描かれた高い精神性を示す水色の衣服を身に纏い、
 聡明で知恵や知識が豊かであることを示すTORA(トーラ)の書を持った女教皇。
 

 彼女はグレーの石座に座り、まっすぐにこちらを見つめています。
彼女の背後には男女を象徴するザクロとヤシの木が描かれたタペストリー、
両サイドにはBOAZ(ボアズ)の頭文字Bと書かれた黒い柱と
JACHIN(ヤキン)の頭文字Jが描かれたグレーの柱が建ち、
足元には細い三日月が輝いています。

 ≪女教皇を包む“色”と“叡智”の象徴≫ 

タロットには、描かれているモチーフや色にも深い意味があります。
ここでは、【2:女教皇(The High Priestess)】のカードに込められたメッセージを
女教皇を取り巻く象徴やモチーフの、“色”や“形”、“配置”からひも解いています。

 

全体的に水色が主のカードですが、女教皇の後ろのタペストリーに使われている色やアイテムにも重要な意味があります。

🔸テーマカラー

  • 水色:女教皇の“知性”や“冷静さ”だけでなく、“内面世界への沈潜”を表現する色。
    まるで水面の静けさのように、心を静めることでしか見えてこない真実があることを暗示。
     
  • : 「闇」や「未知」ではあるけれど、精神的探求には避けて通れない“影”の部分。
    女教皇がその「闇すら抱く存在」であることを象徴。
     
  • グレー:白と黒の中間として「中庸」や「バランス」を象徴し、女教皇が“善悪や感情に偏らず、
    真理を見抜く存在”であることを示す。
     
  • 黄色:タペストリーの背景や装飾に黄色が使われているのは、沈黙や静けさの中に潜む「覚醒の可能性」を表しています。
    【女教皇】は“静”のカードであり、感情を表に出すことはありませんが、その内には強い直感や叡智の光が宿っています。
    つまり、目には見えないけれども確かにそこにある“知の光”を象徴している色。
    それがこの場面での「黄色」です。
     
  • :タペストリーに描かれたザクロの実が「赤」として目を引きます。
    ザクロは生命・女性性・豊穣の象徴であり、「肉体性」と「魂の再生」を兼ね備えた果実です。
    女教皇は一見冷静で精神的な存在に見えますが、この赤が示しているのは、
    精神性の奥にある“命の根源的な力”や“受け入れる力”です。
    精神と肉体の両面を持つ存在であること、そして直感や知恵の根本には感情や本能があるということも暗示しています。
     
  • :タペストリーにはヤシの葉(あるいは樹木の緑)が描かれており、
    それが「緑」として象徴されています。
    緑は、女教皇の静けさの中にある安らぎや優しさ、慈愛の象徴です。
    一見冷たく見える彼女の姿にも、見る者を包み込む癒しの力や、
    内面の成長を促す穏やかな波が流れています。
    また、自然のサイクル(=月の満ち欠け)と調和することで、
    自らの直感や魂のリズムに従う重要性も示しています。

 

👉色の基本的な象徴については、【導きの灯り 〜色彩編〜】で紹介中。

🔸カードに登場するアイテムとその意味

  • 数字の2:調和、協力、バランス、受容、二元性など。また、人間関係やパートナーシップ、そして状況の安定を象徴。
     
  • TORAの書:ユダヤ教の律法書であり、女教皇が秘教的知識や霊的真理へのアクセスを持つ存在であることを示す。布の一部で隠されているのは、「すべての知識はまだ明かされていない」ということ、または“探求を通じて初めて開かれる”という真理の在り方を象徴している。
     
  • BOAZ(黒い柱)/JACHIN(グレーの柱):善悪・陰陽・月と太陽、男性性と女性性といった二元性のバランスを象徴。BOAZ=受容・強さ/JACHIN=始まり・確立。
    女教皇がその中央に座っていることは、「バランスの中に真理がある」「中立の視点こそが叡智を導く鍵」ということを示している。
     
  • ザクロとヤシの木(タペストリー):ザクロは古代から“女性性”や“豊穣”の象徴であり、多数の種があることから“隠された叡智”の象徴とされる。ヤシの木は再生や生命の持続性を表し、精神性だけでなく自然界のサイクルにも繋がることを示している。
     
  • 三日月:満ち欠けを繰り返す月のように、不安定な感情や内面の揺らぎを象徴しています。
    また、女性性・受容性・感受性といった“陰”の力を表し、【2:女教皇(The High Priestess)】が持つ神秘性や精神性の高さを示しています。
    さらに、月が黄色で描かれていることにも注目したいところ。
    月は通常、銀白色や白で描かれることが多い中で、ここでは「黄色=知性・希望・内なる光」として扱われ、
    この三日月が“内面の暗闇に差し込む知恵の光”となっているのです。

    2:女教皇(The High Priestess)】の静寂に包まれた世界の中で、この小さな月の灯りは、
    「暗闇の中でも答えはある」「光はあなたの内にある」ということを静かに示しています。

     

 《タロットカード【2:女教皇(The High Priestess)】正位置の解釈》 

●あなたの中には、すでに多くの”知識”と”洞察力”が備わっています。
今は焦らず、静かな心で『内なる声』に耳を傾けるとき。

 

●見えないものの中にこそ、本当の答えが隠されている。
焦らずに物事を見極めよう。

 

●あなたの内に宿る”知恵”が導きの灯りとなる。自分の中にある”知識”と”洞察力”を信じて

 《タロットカード【2:女教皇(The High Priestess)】逆位置の解釈》 

心の声が聞こえづらくなっているかもしれません。
外部の情報や他人の意見にふりまわされていませんか?

 

●情報過多や感情の揺れに注意。冷静さを取り戻すことがカギ。

●他人の意見をうのみにせず、自分の心に問いかけて。

●がむしゃらに進むのではなく、一度立ち止まって内なる声を再確認する時間も大切。

 

≪まとめ≫

2ーーバランスを表す数字 焦らず、静かに心の声に耳を傾けるとき。

 

目に見えるものだけが全てではない。
あなたの中に眠る「知恵」と「直感」が、真実への道を照らす。
迷いや不安の中でも、自分の心の奥底にある灯りを見失わないようにーー

≪次回予告≫

大地の恵みと花なる愛があふれる世界