母の看取の中で見つめていたもの



3月24日
体温32度の連絡を受け旅立ちの日まで大きな葛藤に向き合いながら愛の中で過ごしました







施設から最後の緊急の連絡となったこの日終末期にみられる下顎呼吸ではないようでしたが母は「うー、うー」と呼吸のたびに声をだしていた

32度の低体温
四肢や唇にはチアノーゼ
手は皮膚のすぐ下に水分が見えそうな透明感のある肌に倍ほどに膨らんだ浮腫み、声掛けには僅かな反応もなかった


何度も繰り返されてきた母の緊急の連絡でしたがこの日が本当に最期の日になる…そう覚悟を持って施設に向かい車を走らせました。


母の身体の苦しみを感じながら人の命の力強さも学びました
電気毛布を使用していて数時間後32度から33度と上がり始め「うー、うー」という声も時々止まるようになり変化が見えてきた

圧迫骨折をしている父の身体も考え母を思うと葛藤は抱えたままその日は帰宅することにした






人は様々な選択の中で
今を生きている

その行動の裏側には
肯定的(善意)な意図がある



学んできた言葉に
何度も支えられました




翌日、施設に確認するとOS-1を100mlと数口食事も口にしたと…


その瞬間は父の体調を含め日々起こる出来事を受け止め対応するだけで精一杯
混乱の中、母は今度もまたいつものように大丈夫かもしれないと思ったり…また同時に私の中で言葉にならないもやもやとした葛藤が始まっていきました



父を連れて母と過ごす時間の中では覚醒することはなく
医師との面談以降それまで内服していた薬も全て中止されていたので身体の浮腫みの酷さに心が傷んだ





父は母を見つめながら

いつまで
こんな状態で苦しませておくんだ
安楽死はできないのか…



辛い気持ちをそう言葉にした





母を大切に想う…


私達家族も施設スタッフさんも同じ気持ちだけれど
その受け止め方はその人の経験や価値観などにも左右されているように感じ始めていきました



24時間365日運営の施設
面会に行くたび話を聞けるスタッフさんは変わり、日を重ねるごとに母の姿が違って聞こえる

3日目のスタッフさんは母のはっきりと覚醒しないこの状態では誤嚥の可能性もあり飲食は難しいですね…と言われ

4日目のスタッフさんは
「昼夜逆転してるみたいで明け方に起きかかることが多くてその時に肩を叩いてなんとか食べてもらってます。ご飯だけだと食べないですけど甘いものがやっぱり好きなんですね、食事に一緒に乗せて口に入れると食べるのでそうやって昨日は2割ほど食べてもらえました。でももう差し入れの甘いものが無いので食べることは出来てないです」






前日と今日では
違う世界にいるような感覚






それは甘いものと認識できて少しでも味わって食べているのでしょうか…
表情ははっきりと覚醒してる感じなのでしょうか…


不安な気持ちの中
違和感を覚えた気持ちを質問すると




少し戸惑うように
「それは…目はなんとなく開いてますがそうですね…分かってないかもしれません…」と。









まるで水風船のように浮腫んでいる手
身体の向きに合わせて下になる側の手に浮腫みが強く出てくる
身体の中の水が移動している

  


目の前の見えている母と
話を聴き感じる母に

母の今の姿がわからなくなる

混乱しながら
母のいのちを見つめる自分がいた



翌日
徐々に腰の痛みが強くなる父を休ませ
一人で施設に向かい




相談員さんに
自分の中の混乱と想いを丁寧に伝えた
母を大切に想う皆さんの気持ちをひとつにしたくて今のもやもやした葛藤も話した



母のいのちに向き合い
皆さんにも悩んでもらいたかった
一緒に感じて母と繋がってほしかった


そして口にするものは母の好きな甘いものであっても無くても母のいのちに寄り添った介助であってほしい…そう願った







兄の看取りは苦しかった…
可能性と現実の狭間で今すぐに決断しなければいけない状況が突然目の前に現れた
一人では救えない
今決めなくてはいけない
誰かが答えなければいけなかった
その日の葛藤を抱えたまま父と母の元に通い続けてきました






兄を看取ったあの日の自分の
確かな愛に繋がり
母の身体と心の声なき声を
大切に感じながら寄り添いました





母にとって

最善のタイミングで旅立ってほしい


ある日を堺に心からそう願いました




それまで尿が僅かにしか出ていなかったけれど、そう願った日の夕方…大量に出たとの連絡を受けました




そして翌日未明
旅立ちの報告を受けました

その日夜勤の方がとても気になり訪室した時は変わりなかったそうですが、その30分ほど後詰め所で気にしながらカルテ記入していると、温度センサーが徐々に下がり始めたのを確認し急いで母のところへ向かい旅立ちの瞬間に寄り添っていただけたのだそう…





私達が到着したとき母は
とてもとても温かった

父も私も母のそのぬくもりに触れ
その瞬間の想いを身体に受け取りました



愛の中で向き合った
兄と母の看取りに悔いはない




そう思いながら葛藤した気持ちは
今も大切に沸き起こってくる





それでいい






それでいい







大切なことだから













4月下旬
実家お片付けの休憩に訪れた
お店の窓の目の前で
巣作りに励む小鳥に遭遇





みんな愛おしく生きている
これから愛を育み生まれ育つ
命を感じながらの
微笑ましく贅沢な珈琲時間でした


















リハビリ病院から特別に外出の許可をいただき父も参列する中で49日法要を無事に執り行うことが出来ました









大切に綴ってきた母の旅立ち


お世話になりました
施設スタッフの皆様


お読みくださいました皆様

コメントやメッセージ

お手紙や御志

また気持ちを重ね
想いを馳せてくださった皆様へ





大きな支えと癒しを戴きました


本当にありがとうございました🙏




心からの感謝を込めて










2022年5月15日

すま子🌟 美保🌟