
病院の掲示板に貼られていたポスター
認知症を抱えた自分に向きあう
それぞれの声を目にしました
父の認知症状が出始めた5月下旬
目の当たりにしたのは
トイレ後に下着をしっかりと上げない
半分お尻をだした姿
ズボン下は尿で濡れたまま
着替えをせずに
通帳を探し続ける父の瞳は
彷徨い人のように
うつろでした
自分がおかしいと感じ
自分自身を確かめるかのように
数日後には
今から電車で関ヶ原に行くと言い出したのは
お昼頃のこと
(実家からは2時間以上かかる距離)
正直あの時
止めたい気持ちを山ほど抱えたまま
父を見送りました
帰ってきたら必ず電話をする約束で
様々な起こりうる想定も覚悟の上でした
もうずっと以前に
心配という荷物は自分が持っていればいい
相手に押し付け
相手の尊厳を奪わない
そう痛いほど学んだ
その日
電話がかかってきたのは
22時過ぎてからでした
疲れ切った声と
満足げな父のありのままの声
彷徨いながら
自分を取り戻したい想いの中に
どれほどの葛藤があったのかは
計り知れないけど
自分の中にある答えに辿り着けるのは
自分でしかない
自分自身で出来ることを認め
自分自身で出来ない事を認め
ありのままの自分を認めた時から
不安の中にも
自分を信じるチカラが
父の中に生まれたのもしれない
先日免許証が出てきました
嬉しそうな父の笑顔を眺めながら
心配という私の不安はもう無くなっていた
バイクを処分すると言ってくれた
認知症状が出始めたころ
一度バイクの鍵を隠した私でした
でもどうしても気持ちがざわついて
数分後元に戻した
その翌日テレビから流れるニュースは
90歳の女性が運転する車が
歩行者を巻き込んだ事故と
免許証を取り上げられた男性が
自宅を放火したニュースだった
テレビをじっと見つめる
父の後ろ姿を眺めながら
ただ祈るしかなかった
今年の4月父の誕生日
お祝いにご飯を食べに行く際のこと
自分はバイクで行くからと頑として
譲らない
もうバイクを辞めさせたいと
強く思っていた頃でした
これが正面から写真に収めた
最初で最後の写真
そして父がバイクに乗った
最後の日になりました
父との体験からじっと目にしたポスター
聞こえていますか?
「認知症と生きる」わたしたちの声。
一緒に読んでくださり
ありがとうごさいました



