10/23 | 怪談サークル とうもろこしの会

10/23



夕方、青山近辺を歩いていると
246の向こうから、暗い不協和音が近づいてきた。
音のする方を見ると、白いワゴンが一台こちらにやってくる。
スピーカーからはリストを讃える旨のテープを垂れ流していて
それが奇妙な音源の正体のようだ。
「キリストは全ての人の罪を背負いました」
その独特のイントネーションと文章が似ているところから
正月に新宿駅にいる人たちと同じ宗派のようである。
あそこはどうも外国人の活動家が多いのか、ワゴンの運転手も白人男性だ。
その彼がマイクを片手に、
「クイナサーイ」とか「オオイエース」とか
テープの演説に合いの手を入れてくるのである。
それがまたケントデリカットとデーブスペクターを足したような典型的な外人訛りで
ただでさえ奇妙な感覚にさせられるあの演説の中に
かなり食いぎみのタイミングで差し挟んでくるので、
全体として不思議なトリップ感を生んでいる。
それはまるで北方アジアの民族音楽のように
なにかに持っていかれてしまうような感覚を与えてくるのである。

……神は言われました、裁きの日は近い……
(クイナサイクイナサイクイアラタメナサアイ)
……死後、地獄にて永遠の苦しみにあうのです……
(イエースイエースイエースタタエナサイ)

ずっと聞いているうちに目眩がして、思わず246のガードレールに手をついた。