再演物はどうしても初演が強い。
ただ今回は地方公演と本公演の違いがあり、専用劇場のスペックや箱と出演者の規模が大きくなったこと、稽古期間もしっかりとれているはずなので、初演のアドバンテージと本公演の有利さはどっこいどっこいだと思っている。
ミュージカル作品としての完成度は間違いなく雪が上だと思う。
あ、こういうメロディだったのかハモリだったのか、こういう歌詞だったのか、てなことが何回かあった。
ミューファンを連れて行くなら断然雪。
しかし、星ロミジュリに感じた疾走感、ダイナミズムは感じなかった。
雪は昔から良くも悪くも端正で、それが今回はロミオの精神世界を描くのに適していて、若者の破天荒さや無垢な凶暴さを描くのに適さなかった。
ここまでカラーの違う再演ものも少ないのではないだろうか。
ここまで違えば、優劣ではなく、まったく好みの問題だと思う。
ともに生粋の御曹司トップ、しかも穴のない実力を持つ二人がトップとして組を率いたからこそ、ロミジュリという器の大きい作品なればこその面白い競演。
見比べて両組とも良さを再確認できた。
あえて言うと私はロミジュリは星版が好きだ。初演アドバンテージを差し引いても、多分、変わらない。
しかしもし今回と同じ雰囲気を両組が描き出したとして、エリザならば、雪に軍配を上げるだろう。
私は、実は「ロミオとジュリエット」という物語が元々好きではない。
子供の頃に読んで「んなアホな」と思った印象が強すぎた。
それを払拭するパワーをもって、まったく新しいロミオ像を見せてくれたのが柚希ロミオだった。
ちえロミオは愛する喜びに満ちていて、何にも負けない強い魂を持っていたので、悲劇のストーリーでも、ハッピーエンドのように思わせてくれた。
彼の人生を生ききった、という説得力のある笑顔が悲劇を上回る圧倒的な幸福感を与えてくれた。
年を経るごとに、悲劇ものが辛くなる。
雪ロミジュリは、もちろん単なる悲劇ではないが、ハッピーエンドには感じなかった。
愛と死の戦いは続いていく…本当にそんな感じ。
やはり星より観念的な分、愛と死が前面に出てきていたからか。
多分それと、雪の二人は‘これから’幸せになりそうなカップルだったのだ。
苦難を乗り越えて、これから。
星は4日間で十分ラブラブもしていた。
雪の二人は、お互いの置かれた状況をよく理解していて、おそらく手放しで恋の喜びに浸ることは生前中なかったように思う。
だから雪はより切ないのだ。
いや、だからこそ、死後、全てから開放されたデュエットダンスが彼らの恋の結実なのだろうか。
ならば、キムロミオに、生前とまったく違う、この場面だけは本当に全然違う、憑き物の落ちたような笑顔を、最後に見せてほしかった。
そしたら私は、彼らはこれで幸せになったのだ、と納得できた。
すみません、もうちょっとだけ続きます・・・・。