瀬戸大橋を架けた男


杉田秀夫


瀬戸内海をまたぐ橋の上を自動車と

列車が行き来するという長大橋の

建設は、極めて危険な工事でした。

水深50メートルでの橋梁工事は

世界でも初めてというものでした。


瀬戸大橋の建設には工事期間だけで

約10年という長い期間が費やされました。


杉田さんはその頃、国鉄の技術者

として主に橋梁の工事に関わって

いました。

瀬戸大橋建設に携わるために国鉄

を辞めました。


ところが、オイルショックのために

工事が突然無期延期となりました。


「逆境の中でやり遂げる気持ちが

大事だ。この時間を無駄にしては

ならない」


自分自身は海中工事の研究や

水深50メートルの海に潜るための

訓練を黙々と続けていました。


ようやく工事が再開してからも

様々な苦難を乗り越え、

完成を迎えました。


瀬戸大橋開通から32年が経ちました。

この橋の海深く、見えないところに

ある土台が、世界に誇れる瀬戸大橋

を、私たちの生活や命を支えてくれています。


大きな情熱を注ぎ、夢をあきらめず

誰もが不可能だと思っていたことを

成し遂げた人たちがいたことを

胸に、私自身も世のため人のため

大きなことでなくとも、目の前の

ことに取り組んでいくことが

誠実に生きていくことなんだと

思い至るのでした。