【米国市況】株反発、9月利下げ観測強まる-ドル一時144円台半ば | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

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「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝のブルーンバーグ記事。
ご参考まで。
 
Rita Nazareth

  • FOMC議事要旨では「幾人か」の当局者が7月利下げの論拠指摘

  • 米雇用者数は2009年以来の大幅下方修正-労働省の年次改定

21日の米株式相場は反発。公表された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨と年次改定に伴う米雇用者数の大幅下方修正を受け、9月利下げ観測が強まったことが相場の押し上げ材料となった。

株式 終値 前営業日比 変化率
S&P500種株価指数 5620.85 23.73 0.42%
ダウ工業株30種平均 40890.49 55.52 0.14%
ナスダック総合指数 17918.99 102.05 0.57%

 

  S&P500種株価指数は史上最高値に近づいた。同指数の主要な業種別指数はほぼ全て上昇した。

 

  FOMCが7月30-31日に開いた会合で、幾人かの当局者が7月に利下げを行う妥当な論拠があるとの認識を示したことが議事要旨で明らかになった。同会合では主要政策金利の据え置きを全会一致で決定していた。

FOMC議事要旨、「幾人か」の当局者は7月利下げの論拠を指摘 (2)

 

  ハリス・ファイナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「9月利下げへの疑念をFOMC議事要旨が一掃した」と指摘した。

Traders On The Floor Of The New York Stock Exchange As Fed Chair Powell Holds New Conference

ウォール街は9月利下げに備える

Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

 

  議事要旨には、「大多数はデータが引き続きほぼ予想通りの内容となれば、次回の会合で利下げを実施することが適切になる公算が大きいとの考えを示した」と記された。

 

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、問題は9月利下げの有無でなく利下げ幅だとし、「市場は現在、50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)より25bpの利下げ確率をより多く織り込んでいる。8月雇用統計が極端に期待外れの数字とならなければ、現時点ではそうなる可能性が高いように思える」と述べた。

 

  個別銘柄では、ディスカウントストアを展開するターゲットが一時16%高。既存店売上高が前年同期比プラスに転じた。一方、百貨店のメーシーズは通期の売上高予想を下方修正したことが嫌気され、一時14%安と明暗が分かれた。

 

  米労働統計局によれば、年次改定により3月までの1年間の雇用者増は81万8000人下方修正されそうだ。下方修正幅は2009年以来最大。

米雇用者数、2009年以来の大幅下方修正-年次基準改定の速報値 (2)

 

  雇用者数の年次改定が市場に大きな影響を与えることは通常ないが、今年は労働市場が過度に冷え込んでいるのではないかとの懸念が広がる中、注目を集めていた。 

 

  ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は「9月のFOMC会合で利下げ幅を25bpにするか50bpにするかを決める上で、次回発表の雇用者数を判断材料にするのがいかに『ばかげた』ことか。それがこの基準改定から私が得た主要なメッセージだ」とコメント。

 

  「この改定データが示唆するのは、次回発表される雇用者数の数字がどうなるにせよ、実際には恐らくもっと低いということだ」と述べた。

 

  キャピタル・エコノミクスのジェニファー・マキューン氏は、各国・地域の中央銀行当局者がカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)でフォワードガイダンスを多く示す可能性は低く、当局の政策が「データ次第」であることを強調すると予想。

 

  「大部分の国・地域は経済成長を続け、インフレが当局目標に向かって鈍化しつつある。数週間前にはリセッション(景気後退)懸念が広がったが、金融市場もその後安定している。市場を誘導する上で、過去のイベントの時期ほどプレッシャーはない」と指摘した。

外為

  ニューヨーク外国為替市場ではFOMC議事要旨の公表後に、ドル指数がこの日の最安値を付けた。7月利下げに論拠があるとの認識を幾人かの当局者が示したことが材料視された。

 

  ブルームバーグのドル指数は一時0.2%下げた。

為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1230.07 0.08 0.01%
ドル/円 ¥145.25 -¥0.01 -0.01%
ユーロ/ドル $1.1151 $0.0021 0.19%
    米東部時間 16時47分

 

  円は対ドルで一時0.55%高の144円46銭まで上昇。議事要旨の公表後に上昇幅を拡大した。雇用者数の年次改定発表前である米東部時間午前10時ごろには1%余り下落して146円77銭まで売られる場面があったが、上昇に転じた。

ドル・円相場の推移

 

 

 

  市場の焦点は、23日のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長らの講演にあらためて移る。

 

  ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのグローバル為替責任者、ブラッド・ベクテル氏は「パウエル議長はいつものようにフェアウエーの真ん中に位置するだろう。50bp利下げの可能性は残しておくが、いずれの方向にも事前にコミットすることはない」と予想した。

 

  ドルが下げる中、ポンドとユーロはともに2023年7月以来の高値を付けた。ポンドは対ドルで一時0.65%高の1ポンド=1.3119ドル。ユーロは一時0.4%高の1ユーロ=1.1174ドルに上昇した。

国債

  米国債市場では、金融政策の影響を受けやすい年限短めの債券を中心に利回りが低下した。9月利下げ開始との見方が強まったことが背景。 

 

  2年債利回りはFOMC議事要旨の公表後に一時9bp余り下げ、約3.89%を付けた。 

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率
米30年債利回り 4.08% 1.5 0.37%
米10年債利回り 3.80% -0.8 -0.20%
米2年債利回り 3.93% -5.5 -1.39%
    米東部時間 16時47分

 

  金利スワップ市場では年内に約100bpの利下げが織り込まれている。インプライド金利は9月の0.25ポイント利下げを示唆。0.5ポイントの引き下げ確率はおよそ20%となっている。

 

  ブリークリー・ファイナンシャル・グループのピーター・ブックバー最高投資責任者(CIO)は議事要旨を受け、「要するに米金融当局は9月18日に利下げに踏み切るということだ」とし、「25bpと50bpのいずれになるかだけが問題だ」と述べた。

 

  雇用者数の改定について、カーバチュア・セキュリティーズの債券トレーディング責任者、トーマス・ディガロマ氏は「今回の下方修正により、米金融当局にとっては9月に利下げに踏み切る理由がまた1つ増えた」と指摘。「データ発表を受けて、9月の50bp利下げに私は傾いている。米金融当局は最初

の一歩として、大幅な利下げで市場を安心させたいのではないか」と述べた。

9月の米利下げ観測強まる、雇用統計の年次改定後-国債利回り低下 

 

  この日実施された20年債入札は堅調な需要を集めた。原油安も国債相場の支援材料となった。 

Two-Year Treasury Yields Drop After Updated Data | Revised US jobs data fuels bets on Fed rate cuts

 

 

原油・金

  ニューヨーク原油先物は続落。アルゴリズム取引による売りが優勢となり、1月以来の安値をつけた。週間石油統計では在庫減少が示されたものの、需要を巡る懸念は払拭(ふっしょく)されなかった。

 

  TDセキュリティーズのコモディティー(商品)ストラテジスト、ダン・ガリ氏は、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が1バレル=72ドルを割り込んだことで、トレンドフォローのアルゴリズム取引による売りが加速したと述べた。

 

  ガソリン先物相場が2.3%下落するなど、石油精製品の下げも重しとなった。

 

  パレスチナ自治区ガザでの停戦交渉の進展もここ数日、相場の足かせとなっている。ブリンケン米国務長官は20日遅く、イスラム組織ハマスとイスラエルの停戦合意を確保できずに中東を去ったが、「イスラエルは提案を受け入れた」と強調した。オプション市場も、中東情勢の緊迫化に対する懸念が和らいでいることを示唆している。

 

米国務長官、ガザ停戦合意確保できずに中東訪問終了-「時間が重要」

 

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、WTI先物10月限は前日比1.24ドル(1.7%)安い1バレル=71.93ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.15ドル下げて76.05ドル。

Oil Extends Algo-Driven Slump | WTI futures dropped 5.3% in the previous three sessions

 

 

 

  金スポット価格は最高値近辺で推移。FOMC議事要旨と雇用統計の年次基準値改定データを受けて、9月の利下げ観測が強まった。

 

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は、予想されていた雇用者数の下方修正は「早ければ9月の米利下げサイクル開始の論拠を強める」と指摘した。その上で「金が上値を再び試す展開となるには、利下げサイクルの開始が必要だ」とし、1オンス=2475-2480ドルがテクニカルなサポート水準になるだろうと述べた。

 

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時24分現在、前日比2.56ドル安の1オンス=2511.43ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は3.10ドル(0.1%)安の2547.50ドルで終えた。

 

原題:Stocks Up as September Fed Cut Seen as ‘Done Deal’: Markets Wrap(抜粋)

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