自民補選全敗 裏金対応 信を得られず | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
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「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の朝日社説。

極めて説得的。

ご参考まで。

 

 裏金事件への岸田政権のこれまでの対応が、国民の信頼回復につながっていないことを如実に示した結果と見るべきだ。岸田首相は後半国会を最後の機会ととらえ、実態解明と政治資金制度の抜本改革を果たさねばならない。

 

 問題発覚後、初めての国政選挙となった三つの衆院補欠選挙自民党が全敗した。いずれも元は自民の議席であり、退潮は明らかだ。

 

 東京15区は選挙違反事件で、長崎3区は裏金事件で、それぞれ前議員が辞職したことに伴う。自民はともに勝算がないとみて、候補者を擁立せず、「不戦敗」を選んだ。政権政党として、有権者に選択肢を示す責任を果たせなかったことを、重く受け止める必要がある。

 

 唯一、新顔を立てた島根1区は、細田博之衆院議長の死去に伴うもので、96年の小選挙区制導入以降、細田氏が当選を重ねてきた。地力に勝る「自民王国」で議席を失ったことは、党への不信がそれほど根深いと知るべきだ。

 

 細田氏は裏金づくりを続けていた安倍派の元会長である。首相は2度、応援に入り、「党改革ののろしを、ここ島根からあげていただきたい」と訴えたが、通じなかった。真相究明も関係者の処分もおざなりで、政治資金の透明化にも後ろ向きでは、言葉だけだと見透かされよう。

 

 細田氏は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を指摘されながら、まともに説明責任を果たさなかった。疑念に正面から応えず、その場しのぎを繰り返す。裏金問題にも通じる、議員のこうした姿勢を改めねば、支持の回復は難しかろう。

 

 島根で自民の厚い壁を破った立憲民主党は、長崎では日本維新の会との野党対決を、東京では候補者9人の混戦をいずれも制し、野党第1党としての存在感を示した。

 

 とはいえ、裏金事件という「敵失」に負うところは大きく、次の衆院選で政権を託すに足ると認めてもらうには、政策面でも態勢面でも、まだまだ努力が欠かせない。野党をまとめ、消極的な自民に思い切った政治資金改革を迫ることができるかも問われる。

 

 今回、自民が候補者を立てなかった東京、長崎では、野党候補同士が競う構図となった。だが、衆院選で、政権批判票の分散を避けるには、野党間の選挙協力や候補者調整は避けられない。

 

 基本政策のすり合わせなど、高いハードルもあるが、与党に「政権を失う恐れ」を突きつけることは、国民に向き合う政治への転換に資するに違いない。