掲題の今朝のもうひとつの朝日社説。
かなり説得的。
ご参考まで。
能登半島地震から8日で1週間となる。犠牲者は120人を超えた。今なお損壊した家屋の数が判然とせず、安否の確認がとれない人が大勢いるのは深刻な事態だ。応援派遣による行政の支援や道路の復旧などを進め、被害の全容把握を急がねばならない。
避難の長期化も前提に、仮の住まいや暮らしの再建へ向けた対策を練る必要がある。
避難者数は7日現在で3万人弱。床の上での雑魚寝や仕切りのない大部屋での集団生活はストレスが大きく、健康悪化につながる。医師らによる「避難所・避難生活学会」は避難所や車中泊で低体温症の危険があり、重ね着や温かい飲み物が効果的とし、具合が悪い人は病院へ搬送するよう呼びかけている。
過密状態が続けば感染症の不安もある。石川県は被災地以外の旅館・ホテルの活用や、暖房や水のある施設への分散も進める。東京都も都営住宅の提供を表明している。民間賃貸での滞在など補助が使える制度もあり、丁寧な情報提供が求められる。
16年の熊本地震では災害関連死とされた人が200人を超え、地震による直接死の50人の4倍以上だった。避難所や車中泊で健康を害した可能性がある。教訓としたい。
もともと災害救助法による避難所の開設期間は発生日から7日以内で、自治体の計画も応急措置としてつくられている。実際には阪神・淡路大震災で半年以上、東日本大震災では最大2年9カ月も被災者の生活拠点となった。
阪神大震災で被災した作家の小田実は、過酷な体験をもとに「これは人間の国か」と憤った。それから29年。災害多発国なのに日本の避難所環境は他国より劣ると指摘されてきた。国は3・11の後、ガイドラインを作って市町村に改善を促した。コロナ禍もあり、自治体もスペース確保などに取り組んだが、大災害時には計画通りの対応が難しくなるのも現実だ。
災害や紛争での人道支援のため国際赤十字などが策定した「スフィア基準」という指標がある。居住空間は1人最低3・5平方メートル▽トイレは20人に1基――などだ。日本の避難所は多くの点で基準を下回り、特に女性の視点が欠けているとの指摘は根強い。
新たな住居の確保まで、避難所は家を失った人の生活の場だ。在宅で不自由する人の支援拠点にもなる。根本的な解決策を考える必要がある。
被災者には誰もがなる可能性がある。いざという時に頼れる親戚や知人と話し合っておくなど、避難の選択肢を広げておくことも大切だ。