[FT]世界経済に「大遮断」の危機 マーティン・ウルフ FT | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」のランダム日誌
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元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」のランダム日誌

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掲題の4月15日の日経(FT)ウェブ記事。
かなり説得的。
ご参考まで。
 
 
Financial Times

国際通貨基金(IMF)は14日に発表した最新の世界経済見通しの中で、世界の現状を「グレート・ロックダウン」と表現した。だが、筆者は現状を踏まえると、むしろ「グレート・シャットダウン(大遮断)」と呼んだ方がよいと考える。そもそも今の惨状はロックダウン(都市封鎖)が根本の原因ではないし、封鎖を強行していなかったとしても世界経済は崩壊していただろうし、封鎖を解除しても経済の崩壊は続くかもしれないからだ。

 

イラスト James Ferguson/Financial Times

イラスト James Ferguson/Financial Times

 

呼び方はともかく、これだけははっきりしている。これは第2次世界大戦後、世界が直面する最大の危機であり、1930年代の大恐慌以降、最大の経済的惨事だ。しかも世界は、大国間の溝が深まり、多くの国の政府の高いレベルが恐ろしい無能ぶりをさらけ出す中で、この危機を迎えている。この危機はいずれ終わるが、その後、どんな世界が待ち受けるのか――。

■IMFの経済予測は楽観的すぎないか

IMFは今年1月時点では迫り来る厄災に気づいていなかった。中国が他国に全く情報を伝えていなかっただけでなく、自国政府内でも適切に情報交換をしていなかったためだ。おかげで我々はパンデミック(世界的な大流行)のただ中にあり、甚大な被害を受けている。

しかし、今なお不明な点は多い。中でも重要なのは、この世界的脅威に対し、各国の近視眼的な指導者たちがどう対応するかを見通せないことだ。

予測などあてにならないかもしれないが、IMFは現時点で、世界の1人当たり国内総生産(GDP)は今年4.2%減少するとみている。金融危機の際の2009年の縮小率が1.6%だったのと比べても大きな減少ぶりだ。20年の1人当たり実質GDPの伸びがマイナスに陥る国は、世界の90%に上る。09年は62%だった。当時は、中国の力強い成長が世界への打撃を和らげた。

IMFは、1月時点で今年も穏やかな成長を見込んでいた。だが14日の予測では、19年10~12月期から20年4~6月期までの半年の成長率は先進国がマイナス12%、途上国はマイナス5%になるという。だがIMFは楽観的にこの4~6月期が底で、以後、回復すると予想する。ただし、先進国の成長率は22年までは19年10~12月期の水準を下回ったままだ。

この「基本シナリオ」は、経済活動が20年下半期に再開するのを前提としている。従って経済が下期に再開すれば、20年の世界経済の成長率はマイナス3%となり、21年はプラス5.8%に転じると予想している。先進国に限れば20年の成長率はマイナス6.1%、21年はプラス4.5%だが、この予想は楽観的すぎるかもしれない。

■疫病が猛威を振るう中で経済は再開できない

IMFは、酔いも覚めるような別の3つのシナリオも想定している。第1は、都市封鎖が基本シナリオの1.5倍に長引いた場合、第2は21年に感染が再流行した場合、第3はその両方が現実となるケースだ。

都市封鎖が長引いた場合、20年の世界GDP伸び率は基本シナリオより3%低くなる。再流行した場合、21年の世界GDP伸び率は基本シナリオより5%低下し、両方の不運が重なると21年の伸び率は基本シナリオから8%近く低くなる。最後のシナリオでは、21年の先進国の財政支出のGDP比は基本シナリオ(この場合でも好ましくないが)から10ポイント上昇し、公的債務残高のGDP比は中期的に20ポイント高くなる。

実際にどのシナリオになるかは全く分からない。もっと悪い事態もあり得る。ウイルスが変異するかもしれないし、感染から回復した人の免疫が持続しないかもしれない。ワクチン開発に手間取る可能性もある。この病原体は、我々の傲慢な自信を完全に打ち砕いたのだ。

では我々はどう対処すべきか。一つは、死亡率をコントロールできるようになるまでは都市封鎖を解除しないことだ。疫病が猛威を振るう中で経済活動は再開できない。そんなことをすれば死者数を増やし、医療崩壊を招くだけだ。買い物や出勤が許されたとしても、多くの人はそうしないだろう。

だが経済再開に向けた準備を整える必要はある。検査、感染経路の特定、隔離、治療への対応力を大幅に高めることが重要だ。そのための費用を惜しんではならない。新ワクチンの開発、製造、使用への投資も同様だ。

何よりも国際協調が大事だ。米ピーターソン国際経済研究所が今月公表したリポートは、主要20カ国・地域(G20)が果たすべき重要な役割に触れた冒頭の序文の中で「簡単に言うと、Covid-19の世界的流行の中で国際協調を欠くというのは、もっと多くの人が死ぬことを意味する」と断じた。

■我々は必要な対応策を知っているはずだ

国際協調が重要なことは、保健政策の面でも、効果的な国際経済対策を確実にするという面でも言える。パンデミックもグレート・シャットダウンも世界的な出来事だからだ。ピーターソン国際経済研究所のリポートの中で、元IMF主席エコノミストのモーリス・オブストフェルド氏が強調するように、保健対策では国際支援が不可欠だ。だが、貧しい国々を債務免除や助成金や低利融資で経済支援することも重要だ。IMFはSDR(特別引き出し権)を新たに大量に発行し、割当対象国が必要としない分は貧しい国に回すべきだ。

トランプ米大統領を就任当初から突き動かしてきた誰の得にもならない経済ナショナリズムは非常に危険だこうしたナショナリズムは欧州連合(EU)にさえ広がりを見せている。貿易は自由にできなければならない。特に医療用の機器や物資(それだけではないが)の輸出入を止めてはならない。大恐慌後のように世界経済が細分化されると、回復が困難になるばかりか不可能になる可能性さえある。

パンデミックが今後どうなるのか、経済がどう対応していくのかはわからない。だが我々は、この恐ろしい混乱を最低限の損失で乗り切るために何をすべきかわかっている。

まず、この感染症をコントロール下に置かなければならない。封鎖解除後には、こうした感染症に対応するための様々な管理システムの構築に巨額の投資もすべきだ。また、今回の感染拡大による影響から人々と潜在的な経済力を守るために、必要な資金を投じる必要もある。援助なしでは切り抜けられない国々に暮らす何十億もの人々を支援することも忘れてはならない。何より、パンデミックの中では、いかなる国も孤島ではないことを忘れてはならない。

未来のことはわからない。だが、未来をつくるために何をすべきかはわかっている。我々は果たしてその努力をするのか。それが問題だ。我々にその決意がないのではないかと、筆者は強く恐れている。

By Martin Wolf

(2020年4月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)