令和元年、初めてのブログ更新になります。

本日、令和元年5月5日は「こどもの日」、そして明日5月6日の月曜日は、国民の祝日に関する法律(祝日法)第3条第2項の規定にしたがい、いわゆる振替休日となります。

ということで、今回は児童手当のお話です。

 

【1】児童手当は「社会手当」の一種

一般に社会保障の4本柱といえば、次の4つをいいます。

①社会保険

②公的扶助

③社会福祉

④公衆衛生

 

しかし、最近では、児童手当、児童扶養手当及び特別児童扶養手当等を「社会手当」と呼び、社会保障制度における5本目の柱(上記①~④に、⑤社会手当を追加する)と位置付けることが多いようです。

 

〔注〕このように、日本における「社会保障」は広い概念ですが、その範囲や定義は国によって異なり、例えば、イギリスで「社会保障(Social Security)」といえば所得保障(経済的保障)のみを意味しますし、アメリカでは主に年金制度を意味します。また、国際労働機関(ILO)や欧米諸国では、従来の「社会保障(Social Security)」という用語に代えて「社会保護(Social Protection)」という用語も使われています。

 

さて、上記「社会手当」は、社会保険と公的扶助の折衷的な金銭給付です。


受給者は無拠出であり、「親の出産」という個人の選択に依存することから、社会保険の範疇には該当しませんが、「収入認定」がないという点では公的扶助の範疇にも該当しません。

しかし、主な財源を租税に求めるという点では公的扶助に類似し、定型的なニーズに応じた支給をするという点では社会保険に類似します。

 

【2】児童手当の財源の事業主拠出について

児童手当の財源は主に租税ですが、「被用者に係る3歳未満の子どもに対する児童手当」の財源の一部は、事業主が拠出しています。

その負担割合は、次のようになっています。

①事業主:7/15

②国:16/45

③都道府県:4/45

④市町村:4/45

 

事業主の負担割合だけ分母の数字が異なっていますが、これは児童手当15,000円(月額)に対して、事業主が7,000円分を負担しているという意味です


★社労士試験の社一対策としては、国と都道府県と市町村の負担割合が、「4:1:1」になっていることを覚えておけばよいですね。

 

事業主負担に係る「子ども・子育て拠出金」の率のことを「子ども・子育て拠出金率」といいますが、これは、その根拠となる法律が「子ども・子育て支援法」(平成24年8月成立)によるからであり、それ以前は「児童手当拠出金(率)」と呼んでいました。

ちなみに、民主党政権時における平成22年度と平成23年度は、「児童手当法」と「こども手当法」が併存している不思議な時代でした。

 

この事業主負担分は、日本企業の賃金制度と大きな関係があります。

逆に言えば、だからこそ事業主負担分があるということを意味しているのですが…。


特に大企業においては、労働の対償とは言い難い「家族手当」や「扶養手当」なるものを支給していますね。

元来、児童手当法は、日本に「職務給」を普及させようとの目的で立法化する予定でした。


職務給」に移行すれば、労働の対償とは言い難い「家族手当」や「扶養手当」のようなものを事業主が支給する意味がなくなります。つまり、企業が負担するのではなく、社会全体で負担しようという理念がありました。


しかし、高度経済成長期とも相まって、日本の大企業においては「職能給」が普及します。


労働側が、生活給保障として「家族手当」や「扶養手当」などを要求していた面もありますが、企業側としても、従業員の福利厚生の充実という意味合いも込めて、「家族手当」や「扶養手当」などを支給することが普及していきました。


 先進主要国に比べ、日本の賃金制度における基本給にさまざまな「◯◯手当」が付けられていることは、終戦直後の労働運動が原因とされていますが、その理由が分かりますか?

これは、宿題にしておきましょう。

 

さて、以上に述べたような経緯もあり、児童手当法は、昭和47年3人目以降の子どもを対象に、1人当たり “3,000円” を支給する法制度として施行されました。

この「3人目以降の子ども」を対象として児童手当を支給するという仕組みは、昭和60年改正により2人目以降の子どもを対象とし、平成2年改正により3歳未満の1人目から支給することとなりました。

その後も、改正に次ぐ改正により、現在のような仕組みになっていきます。

ちなみに、3歳以上の子どもを対象に児童手当を支給することとなったのは、21世紀になってからです。


〔国際比較〕

世界で最も家族給付(家族政策)が充実していると言われるフランスの家族手当(日本の児童手当に相当するもの)は、第2子以降の20歳未満の子どもを対象に支給されます(第2子よりも第3子以降のほうが高額)。さらに、子どもが11歳以上になると、「年齢加算」といって、家族手当が増額されるようになっています。

★実は、ここにこそ、日本の賃金制度とフランスの賃金制度との決定的な相違点があり、ぜひ知ってもらいたいと思っているのですが、残念ながら長くなるので割愛いたします。


とにかく、日本では、子どもが小さい頃は親の年齢も若く、収入(所得)も少ないことを重視した家族政策をとりますが、フランスでは、子どもが成長するほど教育費などで親の経済的負担が厳しくなることを重視した家族政策をとるのです。

 

【3】子ども・子育て拠出金率

子ども・子育て拠出金率には、法定上限率が設定されており、平成29年度までは「1,000分の2.5」が法定上限率でした。

しかし、この率では少子化対策として不十分であるため、平成30年4月から、法改正により法定上限率を「1,000分の4.5」と引上げ、実際の子ども・子育て拠出金率も「1,000分の2.9」としました(従来の法定上限率を上回る率にすることができたというわけです)。

このように、実際の具体的な子ども・子育て拠出金率は、法定上限率(1,000分の4.5)の範囲内において政令(子ども・子育て支援法施行令)で定められます。

 

★平成31年度(令和元年度)の子ども・子育て拠出金率は、「1,000分の3.4」となっています。

 

【追記】

子ども・子育て拠出金は、厚生年金適用事業所の事業主が、従業員の標準報酬月額及び標準賞与額に子ども・子育て拠出金率を乗じて得た額を厚生年金保険料とともに納付することとされていますが、従業員が子ども・子育て拠出金を負担することはなく、全額事業主負担となっています。

また、従業員の中に児童手当の対象となる子どもを養育している者が1人もいない場合でも、事業主は子ども・子育て拠出金の納付を免れることはできません。

これは、高齢者の年金(厳密には、障害年金給付や遺族年金給付も含まれます)を現役世代の保険料等で賄うという「世代間扶養」の仕組みがあるところ、子育てをしている世帯の経済的負担を社会全体で支援するという「社会連帯」の理念に基づくものです。


なお、児童手当の年間支給総額は、約2兆円となっています。この金額をどう見るかは、あなた次第ということにしておきましょう。