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街歩記 -深夜特急に憧れて-

ぶらり旅した、その記録を残していきます。

青くて痛くて脆い

 

読み終わって浮かんだ言葉が、正にこのタイトルでした。

 

大学時代というのは特殊な時期ですよね。自分にとっては大人になる為の準備期間の様なものとして捉えていました。

 

『子供』と『大人』の境目の定義は、自分の周りの人や事柄を主観ではなく客観で捉えられるようになる事だと個人的には思っている訳ですが、これを理解する為には痛みが伴うのですよね。

 

僕らは断片的な知識を持って相手が何たるかを決めつけ、これによって相手を傷つける事があります。相手が傷付き、自分も傷つき返される事によって初めて自分が如何に周りの世界を主観だけで判断してきたかを思い知るのです。主人公の楓も、正にこの痛みを知る所となります。

 

全体としては叙述トリックに引き込まれ、最後の方は主人公が感じているのと同じ様に背中がひり付く感覚に襲われながら、楽しむ事ができました。同じ学生ものだからでしょうか、朝井リョウさんの『何者』と通じるものがあるように思えました。

何者の主人公も『分析』と称した主観的な周りの人間への批判を行っていましたね。両者の共通点は相手を理解する事を避け、自分が正しいと信じる事(理想)を疑わない所でしょうか。

 

ただこの本を読んでいる中で、主人公の気持ちに同調し最初主人公が『モアイ』を攻撃する事に違和感を持たなかった自分も、『大人』になりきれていないのだと反省している次第です。

 

こういう主人公独白型の文章ってズルいですよね。主人公を応援して気持ちがシンクロしている中、いきなり梯子外されて反省させられるのですから。。。でも面白かったです。