ベースのW先生のこと
ピンク(カタログで注文して、実際に届いたのは限りなく赤に近い橙色)のプレベを手にした私は、さっそく張り切って、ベース教室に通い始めました。
もともとお稽古大好き人間ですから、ベースをやろうと決めた瞬間、ベース教室はどこにしようかな?と考えたのです。
無事教室も決まり、30分の個人レッスンを受け始めました。
最初の日はドキドキ。エレキベース・・・さすがに私も歳を考えました。これが、大正琴や三味線ならいざ知らず・・・いや、そこまで歳では(怒)
でも、W先生はとても優しい先生で、最初のレッスンから楽しくて仕方ありませんでした。
実は、息子に少し習っていたのですが、もう、怒られるばかり!!
その点、W先生は優しくて、おまけに褒め上手。褒めの業師!わざとらしくなく、かつ、琴線に触れるような、一言二言で元気百倍の、
高等褒め術を駆使されるお方でした。
歳はまだお若くて、どこであの技を会得されたのか、不思議でした。
もちろん、口先だけのプレーボーイタイプとは程遠く、誠実さを感じさせる落ち着きもありました。
実際に、親切な方でもあったのです。
「レッスンの時間が都合の悪い時は、事前に言ってもらえれば、曜日や時間をその日だけ変更してもいいですよ」
数々のお稽古をこなしてきましたが、そんなの初めてです。
それから、こんなこともありました。レッスンに行くのに高速を使い、駐車場に停めるのも含めて30分ぐらいかかるのですが、ある日、高速の料金所の手前で、パンクしてしまいました。
さすがの私もその日のレッスンをあきらめ、先生に「今日は車がパンクしちゃったので、お休みします」と電話で連絡しました。すると「次のレッスンまで3時間ぐらい空いてるから、パンクが直ったら、ゆっくり来て下さい」との、返事でした。今思い出しても感謝、感謝です!!
しかし、W先生はどうしてあんなに、親切かつ、女の扱いがうまかったのでしょうか?
私が出した結論は『きっと奥様が、美人なんだけど大変なわがまま女で、毎日機嫌をとるうちに、あれほどの高等褒め術を身につけられたに違いない』ということでした。何事も日々の積み重ねが大事です。
ところが、W先生の奥様が、MCと楽器の演奏をされているライブを見る機会がありました。
その時は知らなかったのですが、後であれがW先生の奥様だと聞いてビックリ!!!
確かに可愛い方ではありましたが、MCもいい感じで、とても私が想像していたわがまま女には見えませんでした。
では、なぜW先生はあんなに褒め上手で、女の扱いに慣れていらっしゃったのか!?
その大疑問を解くカギが、一番最初のレッスンに隠れていました。
テキストの音源をダビングしたMDを渡してくださるとき「MD知ってますか?」・・・えっ、いまどきカセット使っている人、いるのかしら?
さらに「欠席の連絡は、メールでいただけるとありがたいんですが。メールやったことありますか?」・・・・・
完全におばあちゃん扱い・・・・・・
そんな歳ではないのに・・・・・・・・
W先生は、敬老精神にあふれ、年寄りの扱いがうまい方だったんですね(苦笑)
おばあちゃん子だったのかしら?
そんなW先生とのレッスンも、8ヶ月しか続きませんでした。音楽教室をお辞めになることになり、先生が代わってしまったのです。『これでもう、誰も私を褒めてくれる人はいなくなる』と思い、とても悲しかったです(涙、涙、涙・・・・)。
ところが、後任のK先生!この方がW先生に輪をかけて・・・、おっと、話が長くなりそうなのでK先生のお話は次の機会に。
〈冒頭の花は庭のトレリスに這わせたクレマチス〉