今回の展覧会は、東京ステーションギャラリーで開催中の展覧会、“坂田一男 捲土重来”
《会期2019/12/7-2020/1/26》
東京ステーションギャラリーの前回の展覧会が辰野金吾、その前が岸田劉生と、かなり有名な人物に焦点を当てていましたが、
今回の展覧会では坂田一男という、一般的 ・・・ どころかアート好きにさえほとんど知られていない画家を取り上げています。
まぁ東京ステーションギャラリーの展覧会と言えば、こうしたよく知らない人物にスポットを当ててこそ！
ですもんね。
ところでその人物、
■坂田一男ってだぁれ？
坂田一男（1889-1956）は岡山出身のキュビスムの洋画家。
第一次世界大戦後の1923年に渡仏、フェルナン・レジェに師事し、その後10年以上に渡りフランスで活躍。
1933年の帰国後は故郷の岡山で制作に励む傍ら、前衛グループ「アヴァンギャルド岡山」を結成、後進の育成にも励む。
しかし、坂田一男の画業については、生前、死後を通してこれまで岡山以外で紹介される機会はほとんどなく、現代においても知る人ぞ知る存在となっている。
尚、展覧会タイトルに含まれる“捲土重来（けんどちょうらい）”とは、「一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返して巻き返すことのこと。」なんだそうです。
なるほど、是非この展覧会を機会に、その評価を盛り返して巻き返して欲しいところ。
さて、作品をご紹介する前に、今回の展覧会はすべて撮影NG、写真撮影スポットも設けられていなかったので、美術館の前のTVモニターに映し出されていた展示作品から少しばかりご紹介。
（その為、画像が荒いです。）
まずこちらの作品は1925年に制作された《キュビスム的人物像》
渡仏して2年後ですね。
作品をパッと見てもう、『THE キュビスム』って感じの作品ですね。
1925年というと、キュビスムの創始者の一人、ピカソは既に新古典主義の時代からシュルレアリスムの時代への移行期ですが、坂田一男が指示したフェルナン・レジェはポップな作風に移行しつつも、一貫してキュビスム的な要素は残していますからね。
さて、こちらは1934年に制作された《静物 II》
こちらは日本に帰国して僅か1年後の作品ですね。
続いてこちらは1936年作の《コンポジション》
こちらの作品、描かれているモチーフは手榴弾なんだとか。
第二次世界大戦を間近にした、緊迫した不安定な時代ですからね。
ただ、この坂田一男という画家の作品、どの作品も全体的な傾向として、左右に中心線を持ったバランスの整った作品が多いので、非常に安定感のある構図をしています。
こちらは1955年の《コンポジション(メカニック・エレメント)》という作品ですが↓
この頃にはどうやら水平線を強調した作品が多くなる様です。
こちらはそれよりも前の1946年の《構成》
手前にうねうねとした謎の物体が描かれていますが、バックの水平線を基調とした線の影響からか、そんなに不安定な印象は受けないです。
恐らくなんですけど、この坂田一男という画家、
結構マジメな性格な人なんじゃないかなぁ。
そんな風に思いながら展示作品を眺めていたのですが、
この坂田一男、アトリエが岡山の干拓地にあり、海抜が低かった為、1944年と1954年の2度に渡りアトリエが水没、作品に甚大な被害があったんだそうです。
その為、絵の具が剥がれ落ちた作品も多かったそうですが、
そうした水害で受けた被害すらも作品の構成要素として残したんだそうです。
マジメ一辺倒な人物かと思いきや、アクシデントも作品に活かすとは中々のやり手ですね。
さて、展覧会では坂田一男の作品以外にも、フェルナン・レジェの他、ル・コルビュジエ、ジャスパー・ジョーンズに坂本繁二郎などといった画家の作品も展示。
それぞれの画家のキュビスム的表現の違いを見比べてみても面白いかと。
全体的には結構地味めな展覧会かもしれませんが、のんびりと絵の構成を見比べたりしてもいいかもしれませんよ。