さて、前回の記事で紹介していたスイッチャーが無事完成に至りましたので、ご報告したいと思います。
Arduinoを利用したスイッチャーの製作はこれで3台目になります。最初は自作のMIDIループセレクターとZOOM MS-50Gをコントロールする為のスイッチャーで、これで1回ライブをやりました。そして前回のライブで使用したUSB-MIDIと3ループを内蔵したループスイッチャー、で、今回はMS-50G+のコントロールを主目的としたUSB-MIDIスイッチャーということになります。ライブの度にスイッチャーを作っているようなところもありますが、実際にはスイッチャーを作ったからライブをやるみたいな感じだったりして。
メインのエフェクターボードは旧MS-50Gのほか、ドライブ系はアナログなので、3ループのスイッチャーで構成しています。
今回のMS-50G+の方はドライブ系もいけそうなので、コンセプトとしては最小構成でのボード作成を意図したものということになります。
仕様としては、
・4パッチx10バンクで40のMIDIプログラムチェンジ信号を送出
・40パッチには任意のプログラムチェンジナンバーを設定可能
・MS-50G+用のUSB-MIDI出力とレガシーMIDIを同時送信
・プログラムチェンジナンバーに連動したアンプch切替機能
・アンプch切替はYAMAHAとFenderの極性切替可とする
・バンクナンバーとプログラムチェンジナンバーの表示機能
・バンクナンバーのアップ及びダウンボタンの実装
・ケースのままプログラム書き換えが可能
・DC9Vと006P電池の2電源仕様
ということで、構成部品としては、Arduino ProMini3.3VにミニUSBホストシールド、メモリ用のEEPROM、表示用の4連セグメントLEDの他、プログラム書き込み用のUSBシリアル変換機、アンプch切り替え用のリレー回路、電圧変更用のレギュレーター回路などを内蔵しています。
ケースは250x55x40mmのタカチのアルミケースで、今までの物より2まわりくらい小さいケースになります。ですので、スイッチの間隔から横に4つ並べるのが限界という判断になりました。それから、スイッチは今まではいわゆるフットスイッチを使ってきましたが、今回はLED内蔵のプッシュスイッチを利用しています。よほど乱暴に扱わなければ強度的にも大丈夫だろうというのと、価格的な判断ですね。部品に関しては今回はストック品を活用することを心がけました。あとは、小型化に資する部品選定です。ボリュームも半固定抵抗を利用したり、スイッチ類も基板取付タイプを使ったりしています。他に電池BOXや部品固定用の部品などを3Dプリンターで作成しています。
今までの経験から、内部の部品配置も立体的に検討してほぼキレイに収まりました。
手前にあるのがパッチ切り替え用のプッシュスイッチ、左右両端にあるのがバンクアップダウン用のフットスイッチになります。高低差を付けることで誤踏を防げるようにしました。
電源電圧は9Vですが、USBホストシールドやセグメントLEDなどの動作電圧が3.3V、USB出力やMIDI系統が5V、リレー動作が9Vなど複数電圧が必要となり、9V-5Vのレギュレータ基板を使用していますが、配線に気を使います。配線量はそこそこあるので、そこが一番面倒なのですが、無事配線が終わったあとの動作テストではまったく動かず。案の定プッシュスイッチ内蔵のLEDの配線が逆でした。なんかここは毎回間違ってしまうようで、原因の一つはスイッチに表示されているマークですね。片側に赤い丸が付いているので、ついそっちに+をつないでしまうのですが、これが逆なので。
その配線を直すと無事に動作しました。
プログラムは、前回のスイッチャーのコードを一旦利用します。基本部分はほぼ同じなので、8割型は動作OKです。
あとは、異なる部分を修正していきます。前回まではバンクアップスイッチしか実装していませんでしたが、今回は4パッチに減るということもあって、バンクダウンスイッチも実装することとしたので、その部分の修正と、アンプch切り替えのコード、それから、MS-50G+に対応するLSB信号の追加などで、久しぶりのコーディングなので、ちょっと手こずりました。
完成して、テスト結果もOKだったので、ワイヤレスのBOSS WL-60とMS-50G+を組み合わせて簡易なボードにまとめました。
スイッチャーの消費電流はリレー動作時で65mA、MS-50G+は150〜200mA程度だったので、1台のDCアダプターで対応できるかなとも思ったのですが、スイッチャーからのノイズが乗ってしまうようなので、スイッチャーの電源アダプターは単独に分けました。これでノイズも気にならなくなりました。
MS-50G+、WL-60、自作スイッチャー全て電池でも動作可能なので、最悪はこの3台だけ持っていけば済むことになります。
旧MS-50Gの時代にも似たようなことを考えましたが、どうしてもドライブ系は満足できず、絵に描いた餅で終わってしまいましたが、ようやく理想型に到達したという実感です。
ライブをやるにはやや非力ですが、スタジオ練習やデモ程度なら十分対応できます。
例えば、同じZOOMのG2 FOREなどを使うことを考えれば、パッチの切り替えに関しては、こっちの方が勝手はいいように思います。
ZOOMからMS-80IR+という製品のリリースが出ました。
これはアンプ、キャビネットシミュレータに特化したマルチストンプということで、専用アプリを使えばIRデータの読み込みにも対応しています。
MS-50G+では、MS-50Gにあったアンプのキャビネットなどの選択がなくなっていたのは、このモデルの存在があったからなのだろうと思わされます。
今どきのマルチエフェクターにはアンプシミュレーターがほぼもれなく内蔵されていますが、アンプシミュレータというのは、基本的に卓に繋ぐか、ヘッドホンでの練習時などにしか使わないものだろうと思います。トランジスタアンプのセンドリターンにつなぐのもよく聞く話ですが、コントロールしにくいし、個人的にはあまり価値を感じません。アマチュアレベルでは、それよりもある程度のチューブアンプを入手して使いこなす方がいいように思いますし、スタジオでもライブ会場でもチューブアンプは大抵あるので、余程のこだわりがない限りそれで十分という気がします。
ただ、このMS-80IR+で面白いなと思ったのは、シミュレーターを通った信号とそうでない信号を分けて出力できるという点です。ライブ会場でアンプシミュレータを通した音を卓に送って、アンプにはスルーの音で対応するのは、私も一度やってみたいなと思っていた方法なので、興味が湧きました。
ライブハウスなどでは、ギターアンプの音をマイクで拾って卓に送り、そこで音量をコントロールする方法が取られたりしますが、音量はともかく音質に関してはオペレーターまかせになってしまいます。思った通りの音質になるかどうか分からないので、ここをなんとかしたいなと思っていました。で、その為の機材やシステムも考えてはあったのですが、いかんせんけっこう機材が増えてしまうのが難点でした。その点、このMS-80IR+ならアンプシミュレーターから音質調整、残響付加まで1台で賄えるので、現実的になってきます。ただ、同シリーズの中では値段がやや高めの設定になっており、機能的なところで見合うのかという点は気になります。似たような製品は他にもあり、このシリーズの優位性はやはりコンパクトかつコスパにあると思うので、頑張っていただきたいところです。自分としては、ライブをやるなら買いというところでしょうか。8月中旬発売ということなので、レビューを待ってみたいと思います。