化学的風化、物理的風化、生物的風化作用と相互の関係 | 文字の風景──To my grandchildren who will become adults someday

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After retirement, I enrolled at Keio University , correspondence course. Since graduation, I have been studying "Shakespeare" and writing in the fields of non-fiction . a member of the Shakespeare Society of Japan. Writer.

         物理的風化でできた宮崎県青島の鬼の洗濯板

 

 

1. 風化とは何か  

 

 風化とは、岩石が気温の変化や雨などの作用で 崩れたり、軟化したり、溶けたり、あるいは色が変わったりすることをいう。岩石を構成する鉱物は種類により、また同じ種類の鉱物でも結晶や気温の変化によって熱膨張率が異なるが、鉱物は水の作用で徐々に分解していく傾向があり、これらの原因で鉱物の結合がゆるんだりして岩石が徐々に風化していく。

 風化には次の通り、化学的風化、物理的風化、生物的風化がある。

 

1-1    化学的風化について

 

 化学的風化作用とは、雨水、地表水と岩石が化学的に反応することによって岩石を構成する成分が水に溶ける作用をいう。陸上の岩石(岩石中のケイ酸塩鉱物や炭酸塩鉱物)は化学的風化作用のために、①ケイ酸塩鉱物+二酸化炭素+水→カルシウムイオン+炭酸イオン+二酸化ケイ素、②炭酸塩鉱物+二酸化炭素+水→カルシウムイオン+炭酸イオンとして水に溶ける。水に溶けたカルシウムイオンや炭酸イオン、二酸化ケイ素は海に流れ、大気中の二酸化炭素は、風化により炭酸イオンという形に変化して海に流れていく。そして、海に流れ込んだ二酸化ケイ素は沈澱し、チャートという岩石を作る。イオンは海の中で、③カルシウムイオン+炭酸イオン→炭酸塩鉱物(方解石(石灰岩))+二酸化炭素+水という化学反応を起こす。じつは、②と③だけでは、風化で消費される二酸化炭素と、炭酸塩鉱物が沈澱するときに発生する二酸化炭素の量は同じである。上記①と③が合わされることによって、ケイ酸塩鉱物+二酸化炭素→炭酸塩鉱物+二酸化ケイ素となり、風化作用は大気の二酸化炭素を取り除くはたらきをする。「風化作用は温度が高いほど強くなるので、温度が高いほど風化作用によって大気から取り除かれる二酸化炭素の量も多い」(註1)。

 

 また、最も水に溶けやすい成分は、ナトリウムNa、カルシウムCa、マグネシウムMgであり、次いでカリウムKで、さらにケイ素Si、アルミニウムAlと鉄Feの順に溶けやすい。とはいっても、Si、Al、Feはむしろ溶けにくいために、風化した岩石に残り、主な成分になる。とくにアルミニウムのケイ素に対する比率は、風化の進行の目安になる。アルミニウムが多いほど風化は進行していることになる。

 

 花崗岩などに含まれる長石は、化学的風化で粘土に変化する。これは、加水分解によって長石の結晶構造が壊れて粘土鉱物に変わり、粒が細かくなるからである。炭酸カルシウムCaCO3が主成分である石灰岩は弱い酸性の雨に溶ける。雨は空気中の二酸化炭素CO2を溶かし、弱酸性になっていることから石灰岩地域では化学的風化により大地が溶ける。そして浸食されて鍾乳洞やカルスト地形ができる。

 

1-2 物理的風化について

 

 物理的風化とは、高山や砂漠、極地などでは昼と夜、季節による気温の変化が大きく、このことから岩石が膨張・収縮することによって、岩石を構成する鉱物間の結合に割れ目が生じ進行する作用をいう。また礫や砂などが河川により運搬されていくときに岩石が崩されたり、木の根が岩石の割れ目に入って岩石を砕くことも、一種の物理的風化作用である。具体例としては次のようなことがあげられる。

 

 (1)塩類風化:海岸などの塩分の多い場所で起こる風化で、塩分の結晶化による圧力などで岩石が破壊される。塩類風化によってできる地形としては岩盤や岩塊の表面に形成される風化穴であるタフォニが知られている。

 

 (2)凍結風化:主に水の凍結によって起こる。水は凍結すると体積が膨張し、固体になると体積が減少する性質を持っている。岩石の亀裂に水が浸透し、それが温度変化によって凍結することで体積が増加し、岩石に大きな圧力がかかり亀裂を拡大させ、岩石の破壊が進行する。

 

 (3)乾湿風化(スレーキング):乾燥状態と湿潤状態が繰り返されることによって起こる。モンモリロナイトなどの粘土鉱物は水を含んで膨らむ性質をもつものがあり、そのことで岩石が破壊される。乾湿風化によってできた地形として宮崎県の青島にある鬼の洗濯板が有名である。

 

1-3 生物的風化について

 

 生物的風化は、動物や植物、微生物に起因する風化のことをいう。

生物的風化は次のように化学的な生物風化と物理的な生物風化に二分することができる。

 

(1)化学的な生物風化:植物の根から分泌される水素イオンと鉱物内の塩基の交換や、生物の遺骸から発生する弱酸性溶液によって岩石を風化させることをいう。

 

(2)物理的な生物風化は、植物の根などが水や養分を求め、また上部を支えるためにより深くより大きく肥大・成長していく際に、岩の割れ目に根が入り込み、岩石を分解することなどをいう。植物の根圧に起因した岩石の破壊などもその例である。

 

2. 化学的風化、生物的風化、物理的風化作用の相互の関係について

 

 「それぞれの風化作用は単独に働くのではなく、互いに関連しながら岩石の風化を促進している(註2)」。岩石は物理的風化によって、粒度を減少させ、より小さな砕屑物に変化する。この現象は、岩石の温度変化・圧力変化によるもの、水の凍結・融解によるもの、風化表面の剥離、岩石と他の固体・液体との衝突による破壊、塩類の結晶成長にともなう破壊などが含まれる。温度や圧力の変化によって風化するのは、岩石を構成する鉱物の膨張率や弾性率が異なるため、鉱物間の結合が壊されるからである。こうして生じた微細な割れ目は、水の冷却凍結による裂かの拡大や水とかかわった化学的風化に大きな役割を果たす。

 

 つまり、細分化した岩石は全体の表面積が増加し、水や大気と接触して、水和、溶出、酸化・還元といった化学反応をうける。化学反応は岩石の表面で起こるために、物理的風化によって岩石の破砕が進むほど、風化の速度はおよそ表面積に比例することから化学的風化作用が活発になる。さらに、酸化によってできた微細な凹凸が物理的風化を促進させる。

 

 生物的風化の現象の一つである植物の根が岩石の割れ目のなかで成長すると、くさび作用をもたらし、その結果岩石が粉砕されるという物理的風化を促進する。物理的風化が進むと隙間が多くなって、酸性の雨水が隙間に入りやすくなり、化学的風化も起きる。

 

 このように化学的風化、生物的風化、物理的風化作用は、互いに影響して複合的に起こり、助け合っている関係にある。物理的風化や生物的風化が進めば、化学的風化が進行しやすくなるし、逆に化学的風化、生物的風化が進めば物理的風化が容易になる。

 

 

<引用註>

1 山賀進(2010)、『一冊で読む地球の歴史としくみ』、ベレ出版、p.74 

2 西村祐二郎、鈴木盛久、今岡照喜、高木秀雄、金折裕司、磯崎行雄(2010)、『基礎地球科学』、朝倉書店、p.124

 

<参考文献>

1 鹿園直建(2009)、『地球惑星システム科学入門』、東京大学出版会

2 岡村聡,武蔵野実,渡辺暉夫,石田聖,久保田喜裕,久家直之,棚瀬充史,水落幸広,吉野博厚(1995)、『新版地学教育講座④ 岩石と地下資源』、東海大学出版会