日本人の世界観が今後の人工知能(AI)研究を左右する~「雪国」・ベルサイユ宮殿から考える~
本日の人工知能未来社会経済戦略本部の第二回会合では、人工知能(AI)研究の第一人者である公立はこだて未来大学前学長の中島季之先生からお話を伺いました。
○AIを考える上での大事な世界観
われわれの所属するグループ(集団)には、大きく二つの世界観があります。
① 無矛盾世界観(欧米的な世界観)
これは、文字通り矛盾が存在しない世界観であり、集団を上部から観る世界観。すなわち、神の視点で、超越的な存在者が、ルール(戒律)によって世界を観るというもの。
② 容矛盾世界観(日本的な世界観)
これは、矛盾の存在を前提に考える世界観であり、超越した視点からではなく、同じグループ内に存在する他者の存在を認め、そのグループ内のルール(内部規範)によって世界を観るというもの。
○この世界観の違いがAIを考える視点の違いに
欧米的な客観的な外部観察者の視点では、システムの外から客観的に科学を考えるが、日本的な内部観察者の視点では、システムの一部という視点から、主体的に科学を考えるということで、今後のAIは後者の視点が必要不可欠になってくる。
○川端康成の「雪国」からも。ベルサイユ宮殿と桂離宮からも。
・「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」←「自分」の視点
・「The train came out of the long tunnel into the snow country」←「鳥」の視点
すなわち、英語では虫の視点(状況依存視点)が取りにくいのです。
また、西欧の庭園(ベルサイユ宮殿)はその配置自体に意味があり、外から見ることで理解が出来ますが、日本の庭園(桂離宮)の美は環境の中に埋め込まれています。
○AI研究の方向性は日本的・東洋思想的な考えで
・「独立知能」から「環境」の重視へ
すなわち、環境全体をどう制御していくか、どうデザインしていくか、といった視点からAIを構築していく必要がある。
・「個」から「社会」へ
欧米のように、個人VS環境ではなく、環境全体の中で、人間・AIを考えていくか、そういった視点がAI研究にとって重要となってくる。
○日本のAI研究にとって必要なことは?
欧米と比べて資金がゼロが一つ足りない状況。米国はAI研究を「国防」としてやっているから資金が豊富。
日本は災害が多いため、防災・減災に予算が付きやすいので、この分野に絡めてAI研究予算を付けてもよいのではないか。 例えば、原発や災害用のロボットは高価だが、平時には使えないので、企業として参入しにくい。この点、国が国策として進めていく意義がある。
また、データの活用とデータの集積がまだまだ日本は弱いため、政府などが責任をもって、3Dデータなどを含めて一元的に管理していく必要があるのではないか。
以上、本日の本部でも中島先生が多くの示唆を与えてくださりました。引き続き、年央の成長戦略や骨太の方針へのしっかりしたAI関連政策の反映をめざし、本部の事務局次長として頑張って参ります
衆議院議員 石崎徹
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