晴 

 寒暖計五十四度(注・=摂氏12.2度)

 

 

 午後交詢社の年始会に赴く、犬養毅、岡本貞烋、伊藤欽亮氏等に面会せり。山田敏行氏より交謡会新年会出し物の相談あり、夫々注意を与へ置けり。

 

[端唄保存会]

 帰途烏森今井にて催したる菊池武徳氏の新年謡ひ初めに出席せり、清流会の連中一、二名来会して数番の演奏あり、侍座のりゑ治は頻に端唄保存の必要を唱へ、今年より端唄保存会なる者を作りて、当家にて昼食後四、五時間練習あうる会合を催したき希望を述べ満座の賛成を得たり。猶ほ端唄一、二を唄ひたる中に尾崎紅葉の作あり、

  留めても帰る宥めても帰る帰るの三ぴよこぴよことんだ不首尾のうら田圃ふられついでにエエ夜の雨

 

 故清元梅吉の節付けにて「とんだ不首尾のうら田圃」を新内クドキにしたるが面白く聞かれたり。

 

 午前十一時中村歌右衛門夫婦自働車にて来宅、同乗して同人の代々木新宅に赴く。南方に開きたる二千坪許りの地面なるが、今度此処に新築せんとするに就き余は一応実地を検分して大体の図案を与ふる筈なり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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