七海は車から降りてじっちゃんであろう後ろ姿に向かって歩を進めた。近付くに
連れ、じっちゃんだと確信する。
「じっちゃん」
「ああ?」
相変わらずの粗暴な言葉遣いだ。
「何だ、玲じゃねえか。何してんだこんなトコで?」
「それはこっちの科白。じっちゃんこそ何してんの?」
「じっちゃんとはなんじゃこりゃ! お爺様と呼べと何遍も云わすな!」
そう云ってじっちゃんは、孫の左右のほっぺたを引っ張った。
「いたたたたっ! ちょっと何すんのよ!? それにその服装と言葉遣いでお爺様っ
てとてもじゃないけど合ってないんだけど」
「うるせえなっ、それでもそう呼ばれてえんだよ」
「いやいやいや、だからぜんっぜん紳士じゃないから」
そう云ってまた孫のほっぺたを引っ張った。
火葬場でこんなやりとりはどう視てもおかしいとは思ったがこのじっちゃんにそ
れを云ったところでどうなるもんでもないだろうと、何も云わなかった。
「で、何しに来たんだ? その服装だと葬式って訳じゃないな」
「うん。ちょっと――亡くなった友達を憶い出してね。それで彼女が焼かれた場所
に来てみようと念って来てみた」
「何だ、俺と同じじゃねえか」
「同じ?」
「まあな――よくお前と店に遊びに来てたあの子だろ。もう何年になった?」
「――うん、もう、五年になるよ」
「そうかあ、俺の方は、二十一年になるな」
「えっ、二十一年!? って五十歳代で亡くなったの?」
「そうだ。でもまあ、あの子なんて二十歳になったばかりじゃないか」
「まあ――ね。どうして亡くなったの?」
「自殺だよ――まったくもって馬鹿者だ! 結局、騙されて追い詰められてでっか
い負債だけが残ってな。一言でも何か云ってくれりゃあ何かできた筈なんだよ。死
んで、何が残るってんだ。まったくもって馬鹿者だよあいつは」
「そんな……」
「そんなじゃなくて、そうなんだよ。あんな、つまんねえ死に方しやがって。畜生!
まあ騙した会社ごとぶっ潰してやったけどな。ぶはははっ」
「ぶっ潰したって……やっぱ、紳士じゃない」
「まっ、あん時は紳士じゃなかったなあ~……今日がな、命日なんだよ。それで来
てみた。墓の前に行ってもいいんだがな。何だかこっちの方がな――で、お前は何
しにこんなとこに来てんだよ」
「ははは、血は繋がってるもんだね。じ――ん、っん~」
「いいよ呼び方なんて。で、なんだそりゃよ。血は繋がってて当り前だろうが」
「いやまあそれはそうなんだけど。考え方とかがさ……じっちゃんが想ってる事と
多分同じ。ここに来た方が、境目って云うのかな。無くなったモノと残ったモノだ
からかな。それと仕事で呼んだ本の事で、その表紙制作の依頼を請負ったから、イ
ンスピレーションを求めてね」
「それで、何か頭に降って来たか?」
「ん~、何となくね」
そして七海とじっちゃんは二人で晴れた空を視上げた。雲が流れる。
――うわっ、雲ってすんごい流れてる。それも下の方と上の方で流れる速さが違
うんだ。これって普通なのかな? もし当り前の事だったら、私はそんな事も識ら
ないで過ごしていたんだ。だから何って訳でもないけど、何だかすごく新鮮だった。
――けれど。
空は曾て無い程に蒼穹で清々しく、どこまでもどこまでも、幾つも幾つも、何も
かも吸込んでくれそうなのに、今にも物質化して落ちて来てしまう様な気持があっ
た。
もしかしたら臨界点が近いのかもしれない。そうじゃなきゃ私はきっとこのまま
ずっと同じ場所で同じ様な仕事を繰り返して、制作して、ビールを飲んでいるんだ
ろうと想った。一体私には何が出来るんだろうか? 今まで何となく流れで過ごし
て来た事が培っているけれど、振返ってみて果たしてそれがやりたい事だったのか
と単純に質問されたらきっと、それは違うよと答えるだろう。じゃあ、どうすれば
いいんだろう?
――やりたい事をやればいいんだ。
やりたい事……?
「ねえ、じっちゃんってさ、いつお店やろうって思ったの?」
「何だあ、薮から棒に」
「やりたい事だからやってんでしょ、お店」
「そりゃそうだ。やりたいからやってんだ。やりたくもない事だったらどっかの会
社にでも入って何かの仕事してんだろうよ。同じ様な事を繰り返して安定した収入
を得て、家族を養う。まあそれでも楽な仕事はねえだろうがな。そんでも、いわゆ
るサラリーマンは理不尽な上に少なからず安定が成り立ってるんだろうよ……何だ
今の仕事やりたくてやってんじゃねえのか」
「う~ん、まあやりたいってのとはちょっと違うかな~。ほら私、大学の時に賞取っ
たじゃないその流れで始めた様なもんだからね。やりたい事って云うと――違うね。
かと云ってやりたい事がはっきりしてる訳じゃないんだけどね」
「ふ~ん。じゃあ何で此処に来た? 仕事の為のインスピレーションを求めてとか
云ってたが、本当はそんなもんじゃなくてもっと何か別のモノが欲しかった――そ
う感じたから此処に来たんじゃねえのか。そのはっきりしない何かをはっきりさせ
たくて此処の空を視上げに来たんだろ。違うか?」
「――かもね」
「っつても、もう決まってんじゃねえのかお前の中じゃよ。そのやりたい事ってや
つが。その動機っつうか、再確認がしたかったんじゃねえの」
「何それ。さっき云った事と矛盾してない?」
「ぶはははっ! そうだな。何云ってんだろうな俺は?」
「知らないわよそんな事。まぁそんな考え方も解らないでもないけど……で、じっ
ちゃんはいつ頃からお店をやろうとしたの?」
「んっ、二十六の時だな」
「へぇ~意外に早い。何か今のじっちゃん見てると人生崖っぷちみたいなところで
やりたいお店を開いたみたいな、のを勝手に想像してた」
「何だその本当の勝手な想像は。実のところな、俺の親父が一代で築いた会社がか
なり儲かってて金持ちだったんだわ」
「えっ、マジで!?」
「マジで。元々は店であるあの蔵はな、俺の爺様の生家が在った場所なんだよ。そ
んで親父がプラプラしてた俺に何かやれって云ったんだよ。普通な、自分の興した
会社に入ってそれを継いで護れとかって云うもんだと思うが、親父はいわゆる変人
だった訳だ。あの蔵を使って何でも好きな事しろって云いやがった。俺は、じゃあ
独りで喫茶店、今で云えばカフェってのか、それをやるって云ったら勝手にプラン
を立てて設備も何もかも用意して、おまけに右も左も判らんからその道で成功して
る知人を先生として呼んで教えて貰えって何か知らんが、ある程度マスターした。
そんでその先生、師匠が後は自分で前に進む事だね。とか云って修行終了。その間
二ヶ月くらい。まあでも始めた頃は、親の拗ね齧りまくってやってたからなあ、な~
んも考えてなかったんだよな。でだ、ある時ふっと念った訳だ。俺は何やってんだ?
ってな。それからはもう死に物狂いで店やって、現在に至る訳だ」
「いやいやいや、何かすごい省略してるんだけど」
「だってよ~。必死んなって苦労した話聴いたって別に楽しかねえだろお」
「まぁ慥かに。私、そういうの好きじゃないからね」
そう云って二人は空を視上げた。すう~っと風が吹いて、緑の香りを孕んで二人
を包んだそれはその香りを残して去って行く。
「で、じっちゃんはあのお店いつまで続けるの? だってもう今年で七十七でしょ」
「知らねえよ。辞めたくなったらそん時に辞めるし、死ぬまで続けるかもしれねえし。
まっ、この歳まで続けてるって事は、まだ暫くは続けんじゃねえかな」
「ふ~ん」
「まっ、辞める事考えてたんじゃあ続けらんねえよ」
「ですな」
二人は同じタイミングで立ち上がって、息を大きく吸込んで、わああ~! と叫
んだ。火葬場の駐車場で。
空は曾て無い程に蒼穹で清々しく、どこまでもどこまでも、幾つも幾つも、何も
かも吸込んでくれそうなのに、今にも物質化して落ちて来てしまう様な気持があっ
た。
――けれど、さっきまでとはどこかが違う様に感じた。上手く説明できないけど、
物質化してしまうと念った感情が吸込んでくれた空で少し昇華している様な気がし
たんだと思う。体を軽く伸ばして、息を吐き出した。
「さて、俺はもう帰るわ。さすがに四時間も空を視てると飽きるな」
「四時間!? ちょっと~、余計なお世話かもしんないけどお店大丈夫なの?」
「ホント余計なお世話だな。今日は定休日だよ」
「あ、そう」
「んじゃ、俺は帰るな」
「うん。私ももう少ししたら帰る」
「おう。偶には店に顔でも出せ、じゃあな」
「は~い」
去って行くじっちゃんの後ろ姿を視ながら、自分のじっちゃんだけど、あんな風
に生きて、あんなファッションを着こなすのがかっこよく思えた。
――私も、何か行動しなきゃな。
そんな気持と同時に悔しさにも似た哀しみが込上げて来て、よく解らない物体に
も思えるモノが頭の周りをぐるぐると回っている様な気がして七海は、わああ~!
とまた叫んだ。
――やっぱり、早く死に過ぎだよ……バカ。
振返って車に戻ろうとするとさっきとは別の葬列者たちが七海をちらちらと視る
視線を感じた。涙を拭って車に駆け込んで帰路についた。
連れ、じっちゃんだと確信する。
「じっちゃん」
「ああ?」
相変わらずの粗暴な言葉遣いだ。
「何だ、玲じゃねえか。何してんだこんなトコで?」
「それはこっちの科白。じっちゃんこそ何してんの?」
「じっちゃんとはなんじゃこりゃ! お爺様と呼べと何遍も云わすな!」
そう云ってじっちゃんは、孫の左右のほっぺたを引っ張った。
「いたたたたっ! ちょっと何すんのよ!? それにその服装と言葉遣いでお爺様っ
てとてもじゃないけど合ってないんだけど」
「うるせえなっ、それでもそう呼ばれてえんだよ」
「いやいやいや、だからぜんっぜん紳士じゃないから」
そう云ってまた孫のほっぺたを引っ張った。
火葬場でこんなやりとりはどう視てもおかしいとは思ったがこのじっちゃんにそ
れを云ったところでどうなるもんでもないだろうと、何も云わなかった。
「で、何しに来たんだ? その服装だと葬式って訳じゃないな」
「うん。ちょっと――亡くなった友達を憶い出してね。それで彼女が焼かれた場所
に来てみようと念って来てみた」
「何だ、俺と同じじゃねえか」
「同じ?」
「まあな――よくお前と店に遊びに来てたあの子だろ。もう何年になった?」
「――うん、もう、五年になるよ」
「そうかあ、俺の方は、二十一年になるな」
「えっ、二十一年!? って五十歳代で亡くなったの?」
「そうだ。でもまあ、あの子なんて二十歳になったばかりじゃないか」
「まあ――ね。どうして亡くなったの?」
「自殺だよ――まったくもって馬鹿者だ! 結局、騙されて追い詰められてでっか
い負債だけが残ってな。一言でも何か云ってくれりゃあ何かできた筈なんだよ。死
んで、何が残るってんだ。まったくもって馬鹿者だよあいつは」
「そんな……」
「そんなじゃなくて、そうなんだよ。あんな、つまんねえ死に方しやがって。畜生!
まあ騙した会社ごとぶっ潰してやったけどな。ぶはははっ」
「ぶっ潰したって……やっぱ、紳士じゃない」
「まっ、あん時は紳士じゃなかったなあ~……今日がな、命日なんだよ。それで来
てみた。墓の前に行ってもいいんだがな。何だかこっちの方がな――で、お前は何
しにこんなとこに来てんだよ」
「ははは、血は繋がってるもんだね。じ――ん、っん~」
「いいよ呼び方なんて。で、なんだそりゃよ。血は繋がってて当り前だろうが」
「いやまあそれはそうなんだけど。考え方とかがさ……じっちゃんが想ってる事と
多分同じ。ここに来た方が、境目って云うのかな。無くなったモノと残ったモノだ
からかな。それと仕事で呼んだ本の事で、その表紙制作の依頼を請負ったから、イ
ンスピレーションを求めてね」
「それで、何か頭に降って来たか?」
「ん~、何となくね」
そして七海とじっちゃんは二人で晴れた空を視上げた。雲が流れる。
――うわっ、雲ってすんごい流れてる。それも下の方と上の方で流れる速さが違
うんだ。これって普通なのかな? もし当り前の事だったら、私はそんな事も識ら
ないで過ごしていたんだ。だから何って訳でもないけど、何だかすごく新鮮だった。
――けれど。
空は曾て無い程に蒼穹で清々しく、どこまでもどこまでも、幾つも幾つも、何も
かも吸込んでくれそうなのに、今にも物質化して落ちて来てしまう様な気持があっ
た。
もしかしたら臨界点が近いのかもしれない。そうじゃなきゃ私はきっとこのまま
ずっと同じ場所で同じ様な仕事を繰り返して、制作して、ビールを飲んでいるんだ
ろうと想った。一体私には何が出来るんだろうか? 今まで何となく流れで過ごし
て来た事が培っているけれど、振返ってみて果たしてそれがやりたい事だったのか
と単純に質問されたらきっと、それは違うよと答えるだろう。じゃあ、どうすれば
いいんだろう?
――やりたい事をやればいいんだ。
やりたい事……?
「ねえ、じっちゃんってさ、いつお店やろうって思ったの?」
「何だあ、薮から棒に」
「やりたい事だからやってんでしょ、お店」
「そりゃそうだ。やりたいからやってんだ。やりたくもない事だったらどっかの会
社にでも入って何かの仕事してんだろうよ。同じ様な事を繰り返して安定した収入
を得て、家族を養う。まあそれでも楽な仕事はねえだろうがな。そんでも、いわゆ
るサラリーマンは理不尽な上に少なからず安定が成り立ってるんだろうよ……何だ
今の仕事やりたくてやってんじゃねえのか」
「う~ん、まあやりたいってのとはちょっと違うかな~。ほら私、大学の時に賞取っ
たじゃないその流れで始めた様なもんだからね。やりたい事って云うと――違うね。
かと云ってやりたい事がはっきりしてる訳じゃないんだけどね」
「ふ~ん。じゃあ何で此処に来た? 仕事の為のインスピレーションを求めてとか
云ってたが、本当はそんなもんじゃなくてもっと何か別のモノが欲しかった――そ
う感じたから此処に来たんじゃねえのか。そのはっきりしない何かをはっきりさせ
たくて此処の空を視上げに来たんだろ。違うか?」
「――かもね」
「っつても、もう決まってんじゃねえのかお前の中じゃよ。そのやりたい事ってや
つが。その動機っつうか、再確認がしたかったんじゃねえの」
「何それ。さっき云った事と矛盾してない?」
「ぶはははっ! そうだな。何云ってんだろうな俺は?」
「知らないわよそんな事。まぁそんな考え方も解らないでもないけど……で、じっ
ちゃんはいつ頃からお店をやろうとしたの?」
「んっ、二十六の時だな」
「へぇ~意外に早い。何か今のじっちゃん見てると人生崖っぷちみたいなところで
やりたいお店を開いたみたいな、のを勝手に想像してた」
「何だその本当の勝手な想像は。実のところな、俺の親父が一代で築いた会社がか
なり儲かってて金持ちだったんだわ」
「えっ、マジで!?」
「マジで。元々は店であるあの蔵はな、俺の爺様の生家が在った場所なんだよ。そ
んで親父がプラプラしてた俺に何かやれって云ったんだよ。普通な、自分の興した
会社に入ってそれを継いで護れとかって云うもんだと思うが、親父はいわゆる変人
だった訳だ。あの蔵を使って何でも好きな事しろって云いやがった。俺は、じゃあ
独りで喫茶店、今で云えばカフェってのか、それをやるって云ったら勝手にプラン
を立てて設備も何もかも用意して、おまけに右も左も判らんからその道で成功して
る知人を先生として呼んで教えて貰えって何か知らんが、ある程度マスターした。
そんでその先生、師匠が後は自分で前に進む事だね。とか云って修行終了。その間
二ヶ月くらい。まあでも始めた頃は、親の拗ね齧りまくってやってたからなあ、な~
んも考えてなかったんだよな。でだ、ある時ふっと念った訳だ。俺は何やってんだ?
ってな。それからはもう死に物狂いで店やって、現在に至る訳だ」
「いやいやいや、何かすごい省略してるんだけど」
「だってよ~。必死んなって苦労した話聴いたって別に楽しかねえだろお」
「まぁ慥かに。私、そういうの好きじゃないからね」
そう云って二人は空を視上げた。すう~っと風が吹いて、緑の香りを孕んで二人
を包んだそれはその香りを残して去って行く。
「で、じっちゃんはあのお店いつまで続けるの? だってもう今年で七十七でしょ」
「知らねえよ。辞めたくなったらそん時に辞めるし、死ぬまで続けるかもしれねえし。
まっ、この歳まで続けてるって事は、まだ暫くは続けんじゃねえかな」
「ふ~ん」
「まっ、辞める事考えてたんじゃあ続けらんねえよ」
「ですな」
二人は同じタイミングで立ち上がって、息を大きく吸込んで、わああ~! と叫
んだ。火葬場の駐車場で。
空は曾て無い程に蒼穹で清々しく、どこまでもどこまでも、幾つも幾つも、何も
かも吸込んでくれそうなのに、今にも物質化して落ちて来てしまう様な気持があっ
た。
――けれど、さっきまでとはどこかが違う様に感じた。上手く説明できないけど、
物質化してしまうと念った感情が吸込んでくれた空で少し昇華している様な気がし
たんだと思う。体を軽く伸ばして、息を吐き出した。
「さて、俺はもう帰るわ。さすがに四時間も空を視てると飽きるな」
「四時間!? ちょっと~、余計なお世話かもしんないけどお店大丈夫なの?」
「ホント余計なお世話だな。今日は定休日だよ」
「あ、そう」
「んじゃ、俺は帰るな」
「うん。私ももう少ししたら帰る」
「おう。偶には店に顔でも出せ、じゃあな」
「は~い」
去って行くじっちゃんの後ろ姿を視ながら、自分のじっちゃんだけど、あんな風
に生きて、あんなファッションを着こなすのがかっこよく思えた。
――私も、何か行動しなきゃな。
そんな気持と同時に悔しさにも似た哀しみが込上げて来て、よく解らない物体に
も思えるモノが頭の周りをぐるぐると回っている様な気がして七海は、わああ~!
とまた叫んだ。
――やっぱり、早く死に過ぎだよ……バカ。
振返って車に戻ろうとするとさっきとは別の葬列者たちが七海をちらちらと視る
視線を感じた。涙を拭って車に駆け込んで帰路についた。