略式手続について、東洋経済オンラインに寄稿して、その問題点を指摘しました。

 

 

 

 

この記事では、二つ目の問題点として挙げている冤罪の危険性ですが

 

もう少し詳しく説明すると下記のような事態が起こっています。

 

被疑者が勾留されている比較的軽微な事件(否認事件)で不起訴を目指して検察官と交渉をすると(ほぼ)かならず直面するジレンマ的状況があります。

 

それは以下のような経過をたどります。

 

(検察官との電話)

弁「かくかくしかじかなので被疑事実は認められないから不起訴処分にして速やかに釈放するべきだ。」

 

検「そうはいいましても証拠はそれなりにありますし検察官としては被疑事実は十分立証可能だと思います。」

 

検「ところで、本件、有罪であることを前提とした場合でも、検察官としては略式命令で満期には釈放させようとは思っていますけど、弁護人のさきほどのお話では被疑者は略式に同意してくれませんよね~。でしたら公判請求しかないですかね~」

 

弁「う。。。」

 

ここで弁護人は、早期釈放という利益と否認を貫いた場合に予測されうる最悪な事態(公判請求され勾留は継続、あとは保釈でがんばるだけ。)を天秤にかけた上で、さらには、不起訴になる見込み・確率を自己の経験に照らして見極めた上で、ある種の「賭け」をしなくてはならない状況に追い込まれる。

 

(接見室にて)

弁「・・・と検察官は考えているようですが、どうされますか?」

 

被「せんせい、わたしはやっていないんです!!やっていないんだから遅くとも満期には不起訴で釈放されるんでしょう??」

 

弁「いや、私としても、そうあって欲しいし、そのための弁護をしているつもりですが、確実に釈放されて出てこれるかは検察官が決めることなので、正直なんともいえません。」

 

被「えー!!それは困る。何が何でも満期には出てこれないと困っちゃう。。。」

 

ここで弁護人は検察官が示唆していた略式命令の話を被疑者に話さざるを得なくなり、罰金を支払えば釈放されることはほぼ確実であることを伝えざるを得ない。

 

この状況で略式手続の話を弁護人から出されたら、早期釈放を第一に考えている被疑者のほとんどは略式手続に同意する途を選択するであろう。

 

この瞬間、虚偽自白が生まれ、新たな冤罪がまた一つ生まれることになる。

 

この冤罪に略式手続の存在が一役買っていることは明らかである。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 
 弁護士 戸舘 圭之 Yoshiyuki Todate/Attorney at Law

  〒102-0083 東京都千代田区麹町2−12−13LYNX麹町7F
  戸舘圭之法律事務所 http://www.todatelaw.jp
  TEL 03−3288−0112
  FAX 03−3288−0113 
 e-mail todate@todatelaw.jp blog https://ameblo.jp/todatelaw/