2016年を振り返って | ポンコツ軍曹の不人気ブログ「いいかげんが好い加減」

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日々思った事を好い加減に書いてます。

2016年の大晦日を迎えた。

今年はどんな年だったかな。来年の自分をイメージするためにも、ザックリとでもここで2016年を振り返ってみようと思う。

 

思えば、2016年の初日の出は、病院の窓から眺めたっけ。

入院していた南相馬市立総合病院(以下「市立病院」と記す)の俺の病室は、南側に大きな窓があり、東南東から上る冬の日の出をベッドに居ながら見る事が出来た。


2015年11月に発症した3度目の脳梗塞により、入院していたのだ。

過去2回の脳梗塞で、右半身を麻痺させてしまったのだが、今回は左半身の麻痺。それも末梢より体幹の麻痺が強く、身体が土台からぐにゃぐにゃになった。

両半身とも駄目になった。

「杖を突いて歩けるようにはなるんだろうけど、杖無し歩行までは回復しないかもなぁ。とはいっても未だに立つ事もままならないし、そうそう長く入院もしてらんねえし、どうすっぺなぁ。まぁ何とかなるだろ(笑)」何ていう風に思ってた。
病院で年越しなんて、なかなかオツな経験だ。病院だろうが「謹賀新年」な事は間違いない。辛気臭さの中にちょっぴり正月のフレーバーを利かせたあの微妙な空気は、なかなか面白い空気だった。

新年の誓いは「今年は立って一人で便所に行けるようになる」だった気がする。

 

浜通りの近隣にはリハビリ病院の空きベッドが無く、自分でリハビリ病院を探すもやはり空きベッドが無いからと転院を断られ、、かといって自宅に戻れるほど機能回復はしていなかった。だから無理を言って市立病院に入院させてもらい、リハビリを受けていたのだが、重症の脳卒中患者はあとからあとから入院してくる。順番を開けなければ。

3月に退院する事に。

その頃には、さすがに「立って一人で便所に行く」という新年の誓いは達成していたのだが、いきなりアパートで独り暮らしが出来るもんだろうかという不安は正直あった。

でも、そんな事ばかり言っていられない。

ええい!ままよ!

と退院し、そこから毎日杖を突きながら南相馬の町中を歩き廻る日々が始まる。

もちろんリハビリのためだ。

 

ところが…これが良かったんだな!

車に乗っていては一瞬で通り過ぎてしまい、見落としてしまう街の風景や空気がダイレクトに感じられるあの感覚…本当に素晴らしかった!

季節は春から初夏にかけてだったのだが、そんな季節も良かったんだろうな。

有機体としての南相馬の街、生命感や息遣いを、どどーんと感じる事が出来た。

 

確かに南相馬は、震災で悲劇に直面した街だ。

津波でたくさんたくさんの方が亡くなったし、原発事故で多くの方々の生活が台無しになった。
避難している最中に亡くなった方もたくさんおられる。
悲嘆に暮れる方も、先行きの不安に押しつぶされそうになっている方も、風評被害を嘆く方も、放射能の不安を抱えたままの方もおられる。

 

でも、南相馬は生きている!

生きようとしている!

 

すっ転びそうになりながら、あちこちで休み休み、ふらふらと歩きながら、そんな様子が見えてきた。
道端で話をするお年寄り

「こんにちは!」と挨拶をしてくれる道行く人

子連れで買い物をするママさん

学校に通う子どもたち

路地で元気に営業する商店

 

悲劇や浪花節は注目されるけど、こうした部分は注目されないじゃん。

日常生活を送る「市井の人」。

 

それに気付いたら、俺のやる事が見えてきた。

片輪者の俺だけど、やる事有るじゃん!

入院中に温めておいたプランがいくつかあった。

それがリアルな風景と結びついた瞬間だった。

 

かくして俺の「ダイアログインタビュー」への取り組みが始まった。

南相馬の「市井の人」へ、この街に住むことについてインタビューを行い、それを文章化しアーカイブして、たくさんの人に見てもらおうというのが、俺の「ダイアログインタビュー」で取り組む事だ。そうする事で、被災地としてのステレオタイプな南相馬では無く、リアルな南相馬を伝えられると思ったのだ。

早速南相馬市民の方何人かにお話を伺った。インタビューと言っても特に質問は用意せず、自分語りをしてもらい、そこから今の生活への想いやこれからの展望を好きなように話してもらうという形にした。

 

すると…出てくる出てくる!深い思いや、みんなで共有したくなるような面白い話が!

 

インタビューはどれも、最低でも1時間半は語ってもらっているロングインタビューになっているので、文字起こしの作業はなかなか大変だ。

でも今、俺はとてもワクワクしている。

この事業にたどり着き、関われる喜びを感じている。

先行きは分からない。でも、これを形にする事で、大きな価値を生む事が出来ると思っている。

お金にはならなかったとしても。

 

「軍曹、生き残ったからには、あなたには何かしらの役割が与えられてるんだよ!」

と声をかけて下さる方がたくさんいらっしゃる。

でも、俺はそうは思わない。ただ、生き残ったからには面白く充実した人生を送りたいと思っている。

その結果何かを残せるなら、最高に幸せな事だ。

 

片輪者だって幸せは目指せる。

その部分は、五体満足であろうがなかろうが、変わらないんだと思う。

どういう状態の自分が、オンリーワンで幸せな自分なのかを知る事が、大事なんだと思う。

それを知るには勉強も必要だし、誰かの協力も必要だろう。

2016年は、そんな事に気付けた価値ある一年だった、、