「ゲイリー・マレンを日本に呼ぼう」プロジェクト  | 曇りときどき晴れ

「ゲイリー・マレンを日本に呼ぼう」プロジェクト 

初めてお小遣いで買ったレコードは、エルトン・ジョンの「Goodbye yellow Brick Road」だった。
1973年、私が中学校に入学した年のことだ。
ときおり若い人から誤解されるが、私はビートルズ世代ではない。
自分の意思で音楽を聴きだしたときには、もうビートルズは解散していた。
クラスには、ビートルズを聴いている友人もいたけど、私の耳はなぜか反応しなかった。
今もあまりビートルズの曲を知らない。

なぜ、エルトン・ジョンの「Goodbye yellow brick road」を買ったのか?
そもそも私の家はそれほど裕福ではなかったので、ステレオがなかった。
ステレオを持っている友人の家で聴いていたのだ。
いつも友人の持っているレコードだけ聴かせてもらうのは悪いと思っていたし、
友人と趣味が合わないので自分の聴きたいレコードをかけてみたい気持ちもあった。
いつか自分のレコードが手に入れることがささやかな目標になっていった。

一生懸命貯めたお小遣いで、クラスで誰も持っていなかったエルトン・ジョンの最新作を選んだ。
しかも2枚組だったから、高額だったけど自尊心も満足できた。
アルバムの1曲目が「Funeral For A Friend(Love Lies Bleeding)」という曲。
エルトンジョンが発表したすべての曲の中で最も私が好きな曲だ。
私が初めて自分の意思で選んで購入したレコードの記念すべき一曲目でもある。
聴いてもらえばわかるが、曲の構成はプログレそのものだ。
この曲を聴いたことで、私はプログレやハードロックにはまっていく。

キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー、イエス、キャメルなど。
さらにディープ・パープル、レッドツェッぺリンなどのハードロックに傾倒していくことになる。
かと言って、軽いポップミュージックを全く聴いていなかったわけではない。
ルべッツの「シュガー・ベイビー・ラブ」、ジグソーの「スカイ・ハイ」、ファーストクラスの
ビーチ・ベイビー」、アバの「ウォータールー」なんかも好きだった。

でもレコードはあまりに高額なので、清水の舞台から飛び降りる気持ちにならなければ買えなかった。
だから、私が2枚目のレコードを手に入れたのは、
「Goodbye yellow brick road」を手に入れてから1年以上過ぎてからだった。

それが「Queen Ⅱ」。
代表曲「ボヘミアン・ラプソディ」はクイーンの4枚目「オペラ座の夜」に収録されているので、
まだクイーンがメジャーになる前のアルバムだ。
「Queen Ⅱ」は特にフレディ・マーキュリーが担当したブラックサイドを聴いて驚いた。
特に、「The Fairy-Feller's Master-Stroke & Nevermore ~ 「The March Of The Black Queen
にかけての複雑な曲の構成や、多重録音によるハモリの美しさ、もちろんメロディラインの豊かさ、
ブライアン・メイのギターオーケストレーションに代表される独自性の高いサウンド、
ロジャー・テイラーの裏拍を多用したドラミングなど、驚嘆することばかりだった。
これまでいろんな音楽を聴いてきたけど、「Queen Ⅱ」以上に衝撃を受けたレコードやCDはない。
ただ1974年当時、クイーンのファンを公言することは、ホモをカミングアウトすること同じくらい、
勇気を必要とする難事業だった。
クイーンは私のクラスだけではなく、世界中からアイドルバンドとみなされていたからだ。

だから、私は「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットするまで隠れキリシタンのように、
レコードを買ったことさえごく親しい友人以外には言わず、ひっそりとしていなければならなかった。

「Queen Ⅱ」に出会って以来、今でもずっとクイーンを聴いているが、1991年11月24日、
フレディ・マーキュリーが亡くなってからは、熱が急速に冷めてしまったことは否定できない。
フレディのいないクイーンは、クイーンとは思えなかった。
フレディは単なるクイーンというロックバンドのボーカリストではなかった。
単なるボーカリストということなら、ポール・ロジャースでもジョージ・マイケルでもいいと思う。
とは言え、誰が代わりを務めても違和感は拭えない。

それで、ゲイリー・マレンの話になる。
結論から言えば、ゲイリー・マレンはフレディ・マーキュリーのモノマネをしている人だ。
芸人なのか歌手なのか、そもそも芸能の世界にいる人なのかどうかもわからない。
ただ、いろんなフレディのイミテーションを見てきたが、笑ってしまうくらい桁違いに上手い。
上手いというより、声質や歌い方、マイクパフォーマンスに関して言えば、
フレディ・マーキュリーそのものにしか聞こえないし、見えない。
歌もものすごくうまい。
声の調子がいい時のフレディと同じかそれよりもう少しうまい。
「フレディが乗りうつっている」というレベル。
つまり、ルパン三世を演じている山田康雄の真似をしている栗田貫一に匹敵するということ。
バックのミュージシャンも、ぜんぜんアマチュアレベルではない。
とにかく時間があったら、聴いてみて。
Somebody To Love
ボヘミアン・ラプソディ
DON'T STOP ME NOW
Keep Yourself Alive
Radio Ga Ga

まだ、日本ではあまり知られてないみたいなんだけど、ゲイリー・マレンを観に行きたいなあ。
そう思ってくれる人が大勢集まれば、呼べるかもしれない、と思う。