スノボ 国母選手問題 ファッション問題でパッションを奪うファッショ | 曇りときどき晴れ

スノボ 国母選手問題 ファッション問題でパッションを奪うファッショ

国母選手。
服装の乱れについて報道された当初は、ただのファッションセンスの問題だと思っていたのに、
「反省してま~す。」会見から、国賊扱いになってしまった。
今日になって国母選手の通う東海大学は、応援会を中止すると発表した。
日本中が、バッシングしているようにさえ感じる。
教師の一人くらい、身体を張って擁護してやればいいのに、と思う。
大げさに言えば、原理主義的。
マスコミがそうした空気をつくりだしている。

私がおかしいなと思い始めたのは、やくみつる氏の下記の発言が報道されてからだ。
「本来、制服を着崩すことがよくないのに、学校では恒常化しており先生がとがめることもない。
この風潮に待ったを掛けるためにも、国母選手は本国に召還すべきだ。
競技に出場させるのは温情を多分に感じる。」
なんで高校や中学の制服問題と、国母選手のファッションが同じ次元で語られるのかわからない。

やく氏は、髪を金色に染め、薄汚い髭面、帽子をかぶり、アロハシャツを着て、テレビで正論を言う。
正論を言うのはいい。かつて亀田父との対決では溜飲を下げた。
だが、国母選手のファッションについて評論できるほど、
やく氏のファッションは公共の電波に相応しいとは言い難い。
いい年こいて、着崩しているというレベルではない。見苦しいし、汚い。
まず、きちんとスーツを着て、髪を黒く染めて「七・三」に分け、髭をすっぱり剃った上で言うべき。

まあヒップホップムーブメント。
ラップミュージック、だぼだぼの(だらしなく見せる)ファッション、タトゥなどは、ダンスや
スノボだけではなく、バスケットボール、格闘技などのスポーツにも影響を及ぼしている。
やや悪ぶってみせることがカッコイイという暗黙のルールがあるらしい。
ストリート系のムーブメントだからなのか、ブルジョア系のゴルフやテニスには信奉者が少ない。
これが私のヒップホップに関する知識のほぼすべてだ。

好きではないが、過去の若者が主導したムーブメントとなんら変わらないと思う。
目くじら立てて、国母選手を国賊扱いする60歳前後の団塊世代は、かつてヒッピームーブメントや、
サイケデリックにどっぷり染まり、本気で革命を信じ、肩まで髪を伸ばし、トンボメガネをかけ、
ベルボトムジーンズをはいて、デモに明け暮れていた。
イデオロギーを奉じていたのはほんの僅かで、ほとんどの学生にとってファッションだったはずだ。
こうした文化に少しだけ影響を受けたグループサウンズ(GS)に対し、髪が長いという理由だけで、
NHKは紅白歌合戦への参加を拒絶した経緯がある。
この時団塊世代は、NHKに対して「憲法で保障されている表現の自由が脅かされる行為」だと非難した。
高校野球でも、坊主頭より少し長いという理由で高野連が個別の学校や選手に注意したことがある。
女子高生のスカートの長さに対する議論も、まだ終わっていないのかもしれない。

たかがファッションじゃないか、と思う。
日本代表というより、国母選手はヒップホップムーブメントにかぶれた
スノーボード界の代表選手という意識なんだと思う。
ドレッドヘアや鼻ピアスを含め、腰パン的な着崩しは、ヒップホップアーティストとして、
軽くイケてるファッションであり、彼なりの自己アピールだったのだと私は理解している。
記者会見の「反省してま~す。」もアーティストしてのノリだし、
まず着崩しファッションの何がいけなかったのか彼は理解していなかったように思う。
理解していないのに、いきなり記者会見会場に引っ張って来られて、
「いいから謝れ!」とでも言われたら、私でもああいう態度とるかもしれない。
20歳前後の若者がすべて石川遼クンのように前向きで謙虚というわけではないのだ。

デビューしたての頃のイチローも、よく場違いな短パンをはいていたけど、誰も諌めなかったし、
昨年のWBC2009の優勝インタビューでの「ほとんどイキそうになった」発言も、誰も咎めなかった。
昔、尾崎将司は、煙草をふかしながらゴルフの大会に出ていたけど、誰も文句言ってなかった。
結局、少し目立つ弱い者をイジメて喜んでいるだけだ。

国母選手をスケープゴートにして何がうれしいのかわからないし、
彼を擁護する意見をあまり取り上げようとしない、マスコミに怒りと怖さを感じてしまう。
それに注意するにしても、競技が終わってからでもよかった。
どんなにできた人間でも、あれだけ叩かれれば競技に対する集中力が落ちる。

国母選手事件を総括するなら、
「単なるファッション問題でパッション(情熱)を奪うファッショ(原理的統制主義)。」

ともあれ今回の国母選手事件で、やくみつる氏に対する評価(もともと高くないけど)は、
確実に地に落ちた。

PS.朝日comからの引用。
『川端文部科学大臣が、こういうことは二度とあってはいけない」と厳しく批判した。
自民党の下村博文氏の質問への答弁。
 川端氏は「ファッションという意味ではそういう服装もあるのかもしれない」と述べたうえで、
「国民注視のもとでオリンピックが開かれ、日本選手団が日の丸を胸に参加した時に、
代表として適切でない服装をしたことは極めて遺憾だ。
コーチも指導していただきたかった」と述べた。』

こんなのホントにファッショじゃん。