快楽とコスト レンジローバーに見るエコとエゴの共存
かつて砂漠のロールス・ロイスと呼ばれ、高級SUV市場の王様として君臨したレンジローバーは、
いつの間にか栄光の座から滑り落ち、その堂々たる体躯に反比例して、
プレゼンスを示すことが難しくなってしまった。
いくつか理由はある。
ひとつは、レンジローバーというクルマが属していたカテゴリーが、それまでの
クロスカントリーからスポーツユーティリティビークル(SUV)へ名称が変わったのを契機に、
各メーカーの参入が飛躍的に増大し、競争が激化したことが挙げられる。
今から20年ほど前、レンジローバーと人気を二分していたのは、メルセデスのGクラスだけだった。
助手席に花束を置いて、タキシードを着た紳士が高級ホテルに乗りつけるという
シチュエーションを許容するレンジに対して、ドイツの軍用車として設計されたGクラスは、
フロントガラスに曲面ではなくあえて平面を採用するなど、高級ではあるものの、
あくまでもストイックでへビーデューティなクルマだった。
つまりレンジもGクラスも、共にニッチな市場に位置しながら、独自の世界観を具現したクルマだった。
時代が下りこのマーケットに、もう少し都会的なイメージを持ち込んだのが、トヨタのハリアーだ。
それにBMWのX5やメルセデスのMLクラス、フォルクスワーゲンのトゥアレグなどが続いた。
もちろんヨーロッパのメーカーだけが参入したわけではない。
フォードはリンカーンブランドのナビゲーター、GMはキャデラックブランドでエスカレードを投入し、
ついにはスポーツカー専業メーカーであるポルシェまでがカイエンというモデルで参入を果たす。
これだけの車種が登場すると、ヘビー⇔ライト、ラグジュアリー⇔スポーツという縦横2軸の
ポートフォリオで表現されるポジショニングマップは、あっという間に埋まってしまい、
他車と差別化できるマーケットがほとんど失くなってしまった。
IPOでお金を得たIT長者や外資系金融マンは特にカイエンを購入したし、
広告代理店勤務のできるサラリーマンはX5を乗りこなし、
なぜかデザイナーや音楽のディレクターなどのアート系の人たちはGクラスに留まった。
いずれにしても積極的にレンジを選ぶ理由はもはやなくなっていた。
ふたつ目は、やはりリーマンショックを契機とするラグジュアリーカーマーケット全体の縮小だ。
残念なことにイタリアの高級車メーカー「ランチア」は、その歴史に終止符が打たれることになった。
いたずらに数を追うのではなく、個性的な車を本当にその価値を理解している人のためだけにつくる、
というロマンティックなモノづくりが許されなくなっている。
モーガンやロータスはだいじょうぶだろうかと心配になる。
3つ目には、行きすぎと思われるようなエコブームが挙げられる。
ハイブリッドや電気自動車へ急速なシフトにより、内燃機関以外の次世代技術を持たないメーカーは、
すっかり蚊帳の外に置かれてしまった。
レンジローバーのスリーサイズは、全長×全幅×全高=4970mm×1955mm×1880mmで、
車は2,630Kgもある。これだけの巨体を動かすために、エンジンたるやV型8気筒5000ccで、
あろうことかスーパーチャージャーまで付いている。
10.15モード燃費は5.5km/l。ちなみにプリウスの10.15モード燃費は35.5km/lだから6.5倍も違う。
地球に対する環境負荷の掛け方も大きい。CO2排出量は348g/kmでプリウスのほぼ4倍に相当する。
レンジはただ乗っているだけで非常に肩身がせまいクルマなのである。
そこで、あまり罪の意識を抱かずレンジに乗る方法が今回発表された。
72,000Kmまでに排出するCO2をオーナーがカーボンオフセットという方法で買いとるというもの。
カーボンは変動するが、1トンあたりおおよそ4,000円だから、
72,000km×0.00348トン×4,000円≒10万円となる。
10万円コストを負担することで、少しリラックスして乗ることができるというわけだ。
つまり快楽のコストであり、エゴを通すためのエコに対する免罪符でもある。
こうした仕組みはこれから少しずつ他の快楽系のクルマにも波及していくように思う。
いつの間にか栄光の座から滑り落ち、その堂々たる体躯に反比例して、
プレゼンスを示すことが難しくなってしまった。
いくつか理由はある。
ひとつは、レンジローバーというクルマが属していたカテゴリーが、それまでの
クロスカントリーからスポーツユーティリティビークル(SUV)へ名称が変わったのを契機に、
各メーカーの参入が飛躍的に増大し、競争が激化したことが挙げられる。
今から20年ほど前、レンジローバーと人気を二分していたのは、メルセデスのGクラスだけだった。
助手席に花束を置いて、タキシードを着た紳士が高級ホテルに乗りつけるという
シチュエーションを許容するレンジに対して、ドイツの軍用車として設計されたGクラスは、
フロントガラスに曲面ではなくあえて平面を採用するなど、高級ではあるものの、
あくまでもストイックでへビーデューティなクルマだった。
つまりレンジもGクラスも、共にニッチな市場に位置しながら、独自の世界観を具現したクルマだった。
時代が下りこのマーケットに、もう少し都会的なイメージを持ち込んだのが、トヨタのハリアーだ。
それにBMWのX5やメルセデスのMLクラス、フォルクスワーゲンのトゥアレグなどが続いた。
もちろんヨーロッパのメーカーだけが参入したわけではない。
フォードはリンカーンブランドのナビゲーター、GMはキャデラックブランドでエスカレードを投入し、
ついにはスポーツカー専業メーカーであるポルシェまでがカイエンというモデルで参入を果たす。
これだけの車種が登場すると、ヘビー⇔ライト、ラグジュアリー⇔スポーツという縦横2軸の
ポートフォリオで表現されるポジショニングマップは、あっという間に埋まってしまい、
他車と差別化できるマーケットがほとんど失くなってしまった。
IPOでお金を得たIT長者や外資系金融マンは特にカイエンを購入したし、
広告代理店勤務のできるサラリーマンはX5を乗りこなし、
なぜかデザイナーや音楽のディレクターなどのアート系の人たちはGクラスに留まった。
いずれにしても積極的にレンジを選ぶ理由はもはやなくなっていた。
ふたつ目は、やはりリーマンショックを契機とするラグジュアリーカーマーケット全体の縮小だ。
残念なことにイタリアの高級車メーカー「ランチア」は、その歴史に終止符が打たれることになった。
いたずらに数を追うのではなく、個性的な車を本当にその価値を理解している人のためだけにつくる、
というロマンティックなモノづくりが許されなくなっている。
モーガンやロータスはだいじょうぶだろうかと心配になる。
3つ目には、行きすぎと思われるようなエコブームが挙げられる。
ハイブリッドや電気自動車へ急速なシフトにより、内燃機関以外の次世代技術を持たないメーカーは、
すっかり蚊帳の外に置かれてしまった。
レンジローバーのスリーサイズは、全長×全幅×全高=4970mm×1955mm×1880mmで、
車は2,630Kgもある。これだけの巨体を動かすために、エンジンたるやV型8気筒5000ccで、
あろうことかスーパーチャージャーまで付いている。
10.15モード燃費は5.5km/l。ちなみにプリウスの10.15モード燃費は35.5km/lだから6.5倍も違う。
地球に対する環境負荷の掛け方も大きい。CO2排出量は348g/kmでプリウスのほぼ4倍に相当する。
レンジはただ乗っているだけで非常に肩身がせまいクルマなのである。
そこで、あまり罪の意識を抱かずレンジに乗る方法が今回発表された。
72,000Kmまでに排出するCO2をオーナーがカーボンオフセットという方法で買いとるというもの。
カーボンは変動するが、1トンあたりおおよそ4,000円だから、
72,000km×0.00348トン×4,000円≒10万円となる。
10万円コストを負担することで、少しリラックスして乗ることができるというわけだ。
つまり快楽のコストであり、エゴを通すためのエコに対する免罪符でもある。
こうした仕組みはこれから少しずつ他の快楽系のクルマにも波及していくように思う。