自閉スペクトラム症 マイペースなきみに 家族はすったもんだ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

『 自閉スペクトラム症 マイペースなきみに 家族はすったもんだ 』  (2022.11)


井上 雅彦:監修  全国手をつなぐ育成会連合会:編集   中央法規  定価:1300円+税

 

       私のお薦め度:★★★★☆

本書は、全国手をつなぐ育成会連合会発行の月刊誌「手をつなぐ」に連載された 『自閉症のあるわが子のこだわり日記 「毎日すったもんだ」』 の4コマまんが(イラスト:マリマリマーチ)を編集して出版されたものです。
自閉症児を育てる家庭の、ほんとうに“すったもんだ”の日々のエピソード・・・その中から34話を選び出し、改めて場面別、「家庭」、「施設・病院」「行事・外出」「家・日常生活」の4つにまとめられています。本書の「はじめに」で連合会会長の久保厚子さんがこんな風に書かれています。

私の息子はダウン症で、47歳になります。重度の知的障害と自閉症・行動障害があり、股関節異常の障害もあって、いまは親元を離れて施設で暮らしています。
息子が小さい頃はいまほど福祉サービスがありませんでした。用事があって出かけるときには障害児の親同士で子どもを預けあったり、下の子が体調を崩したときに、息子が寝ているすきに歩いて数分の小児科へ連れていって戻つてきたら部屋はぐちゃぐちゃだったり……。いま振り返っても大変な毎日でした。

でも、だからといつて自己犠牲ばかりの報われない日々だったかと問われれば、「そんなことはまったくなかった」と答えます。ちよっとした言動に成長を感じて涙したり、ユニークな行動に思わず笑ってしまったり、きょうだいのほほえましい様子に癒されたり、逆に自分自身の未熟さを突きつけられたり……。振り返れば、家族としてのあゆみはたくさんの出来事や思いに彩られていたと感じます。


まんがに描かれているエピソード、自閉症児を育ててこられたご家庭なら、どれも“そうそう、大変だったね~ ”とアイヅチを打ちたきたくなるようなものばかりです。
でも中には今まさに、その大変さの真ん中にいて、子育てに悩んでいるお母さんもいるかもしれませんね。そんなお母さんにはぜひ本書を読んで、自閉症の大変さを、ユニークなほほえましい行動と見ようとしてていただきたいと思います。

「子どもの能力を発達という軸で誰かと比較して評価するのではなく、子ども自身の特性をユーモアという視点で見ていこう」――本書のマンガやイラストの随所にこの発想がちりばめられています。そうした思いに包まれたとき、読み手は温かい気持ちになるでしょう。「子ども自身のもつユニークな特性を理解し、受け入れながら価値を見出す」ということは容易なことではないと思います。実際の子育てはそんな哲学的なものではなく、時として子どもとのかかわり方に失敗したり、後悔したり、反省したりの連続ではないでしょうか。でも、そこには常にかけがえのないわが子がいるのです。
                                         
本書では、見開きページの右側に、家族が振り回されがちな“すったもんだ”の4コマまんがのエピソードが紹介されて、その下にそれぞれの家族からの簡単なコメント、思いが書かれています。


そして左のページには井上雅彦先生のイラスト(・・・雰囲気がよく出ています)があり、自閉症の特性からその行動の解説と具体的なアドバイスが書かれています。

その解説も、自閉スペクトラム症(ASD)をマイナスな障害として捉えるのではなく、ユニークな特性として分かりやすく書かれているので、親としてウンウンと納得してしまいます。

著作権もあり、まんが自体は紹介できないと思いますので、最初の1話だけコメントと解説を紹介させていただきます。

 

最初の話は「学校」の章の「何があっても学校は行くもの」です。


自閉症のまさちゃん、“学校は行くもの”と決めています。大雨強風で学校が休校となった連絡網が回ってきても納得しません。どうしても納得しないまさちゃんを連れ、お母さんは登山用レインコートに長靴という重装備で決死の覚悟で学校に向かいます。やっと着いた学校で、鍵のかかった校門を見て、ようやくまさちゃんも納得しました・・・・という4コマまんがです。

【家族からのコメント】
大雨の中、学校の正門まで来てようやく理解し、うちに帰つたら母はへとへとでした。大雪でも休みになる地域なので、通常は売っていないスノーシューズを履いて通う私たちを、近所の方が心配して声をかけてくださっていました。


【井上先生の解説】
「納得をさせるには工夫と努力と冷静さが必要」


「~しなさい!」「どうして○○がわからないの!」など、私たち大人は、時として子どもに強引に「正解」を押しつけてしまいがちです。様々なことを自分で判断し、解決法を考えられる力を子どもに身につけてほしいと思うなら、大人には、理解や納得をさせるための工夫と努力と冷静さが必要です。自閉症や知的障害のある子どもに納得して行動してもらうためには、言葉だけでは困難なことが多いため、絵や写真や動画で視覚的に状況を見せる、実際にやってみせる(モデリング)などの方法をとることになります。
お母さんは、嵐の中、子どもと学校に行き、鍵がかかっている校間を見せて納得させています。子どもの理解できる視点で付き合っていく、誰しもできることではないと思います。子どもが納得しないまま指示に従わせた場合、次回も同じ状況が起きやすいと思いますが、体験して学んだ場合は次に活かされることが多いと思います。まさちゃんがその後、同様の場面でどう行動したか知りたくなりますね。


こんな風に大変だけど、笑ってしまうような4コマまんがと、特性の解説や対応のヒントが見開きページにきれいに収まって、しかもフルカラーで34話、ぜひお薦めしたい1冊です。


なお、監修の井上雅彦先生には、育てる会でも令和7年度の即実践講座全10回をお願いしています。

支援者の方はぜひこちらも申し込んでくださいね。

  『令和7年度 現場の先生のための 即実践講座

 

              (「育てる会 会報 323号」 2025.3  より)

 

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目次

  はじめに

自閉スペクトラム症の特徴と理解

  はじめに
  ASD診断のある人・ない人
  ASDの原因
  ASDDのある人は増えている?
  ASDのある子どもの子育てヘの支援
  読者のみなさんヘ


すったたもんだの日々

    主な登場人物

 Ⅰ 学校
  1 何があっても学校は行くもの
  2 いつもと違う!?
  3 個性を大切に
  4 静かにしてね!
  5 一緒に帰ろう!
  6 運動会

 Ⅱ 施設・病院
  7 お父さんの服装
  8 思いに寄り添って
  9 連絡帳
  10 ルールヘのこだわりと寄り添い
  11 苦手な予防接種、打てるかな?

 Ⅲ 行事・外出
  12 写真撮影
  13 服装はきちんと!
  14 イルカショー
  15 法事に出席する
  16 パーソナルスペース
  17 服隠し
  18 ドライブ
  19 道へのこだわり
  20 赤ちゃん
  21 新しい生活様式

 Ⅳ 家・日常生活
  22 炊飯器のスイッチ、みてきて!
  23 わからないけれど
  24 仕事が早いね
  25 戸を開める
  26 おりん
  27 格納されるドアミラーに
  28 しめじの気持ち
  29 こだわり?
  30 減らないしょうゆ?
  31 おフロに入ろう
  32 おさがり
  33 私のお気に入り
  34 見えなければOK?

『手をつなぐ』編集者から

  伝えるポイントは、「具体的に」と「視覚的に」
  体験を重ねて不安をなくす
  難しい「暗黙のルール」
  落ち着いた生活のために環境を整える


 初出一覧
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