筑波大学DACセンター:監修 佐々木銀河:編・解説 ダックス:著
金子書房 定価:1600円 + 税(2022.10)
私のお薦め度:★★★★☆
クリスマス~お正月、発達障害のあるお子さんのいるご家庭でも、この時期はクリスマスプレゼントやお年賀、お年玉など楽しい行事が続く日々ではないでしょうか。
そこで、今回のお薦め本は肩のこらない、気軽に読める本を紹介させていただきます。
この本は、障害のある大学生を支援する筑波大学DACセンターで働く発達障害当事者のダックスさんから見た「発達障害」について、専門家の監修・解説を加えて、正しく、わかりやすくまとめたマンガです。
ダックスさんの「自分の発達障害や支援について、もっと早く知っていたらと思う。発達障害の理解・啓発に携わる仕事がしたい」という言葉をきっかけに、この本が生まれました。
(はじめに:佐々木銀河)
ここで紹介されている筑波大学DACセンターとは「ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター」の略で、性別、国籍、年齢及び障害の有無にかかわらずすべてのヒトの人権、尊厳、個性、能力発揮などが確保できるダイバーシティ(多様性・共生)社会の実現を目指して設立されたそうです。
その中で最初に取り組まれたのが、大学における発達障害を持つ学生への支援でした。その後は、発達障害学生だけでなく、身体障害学生・LGBTQ学生への支援も始まっていくわけですが、そのDACセンターの中でも、発達障害学生支援プロジェクト(RADD:Project on Reasonable Accommodation for Developmental Disabilities:発達障害(学生)への合理的配慮)に携わる、通称ダックスさん、発達障害をもつ当事者でもあるダックスさんが描かれたマンガです。
横文字が並んでしまいましたが、これまでもWebマンガとして人気のあった、ダックスさんをはじめとする面々が発達障害について悩みながらも・・・わかりやすく説明してくれています。
それでは、本書に登場するキャラクターのみなさん(?)を紹介します。
○ ダックス:一見、普通のダックスフンドに見えるけれども、他者の気持ちを理解できない、忘れ物が多いなど、実は目に見えない問題を抱えている。
○ ネコ(アサダ):空気を読むのが古手で、友だちができないことが悩み。肌触りのよいものとお話を考えることが好き。
○ トリ(エドヒデ):忘れっぽくて、 じっとしているのが苦手。突然突飛な行動をしがちだが、思ったことをズバッと言える。
○ サカナ(ルディ):文字を読んだり書いたりするのが苦手。ゲームにはものすごい集中力を発揮する。
○ グレー:自分のことを普通のトカゲだと思っていたが、大学に入ってから心と体の不調に悩んでいる。
○ ニュート:グレーの幼なじみ。グレーのことをあたたかく見守っている。
こんなキャラクターたちです。
いろんな発達障害をもつ動物たちですが、ちなみに括弧の名前は、トリさんが途中でつけたアダナで、ネコくんはASDなのでアサダ、トリさんは自分でADHDのエドヒデ、サカナくんはLDなのでルディという訳です。
グレーくんは、後半の主人公なのですが、大学に入ってから自分が発達障害ではないか、と気づくグレーゾーンのトカゲです。そして、ニュートくんは定型発達・・・と言うか、発達障害としての特性の薄い、ニュートラルと思われるグレーくんの友だちのトカゲです。
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちだけでも、十人十色、いろんな特性の違いがあるわけですから、発達障害全体でみると、ホントに一つにまとめていいのか、というぐらい、いろんなタイプの子たちがいますね。
前半はそんなキャラクターたちのエピソードが続きます。
例えば、LDのサカナくんとASDのネコくん(アダナがつく前)のやり取りです。
サカナくん:あ―ん この本文字が多すぎて目で追えない!
誰か昔読してくれればいくらかは理解しゃすぃのに
あっネコくん私本を読むのが苦手で・・・ここ読んでくれない?
ネコくん:うんわかった ・・・ 『 じ~~~っ 』 ・・・ 読みました
ダックス:ネコく~ん、この場合の『読んで』は『音読して』という意味だと思うぞ
いかにもASDアルアルですね。こんな風に話はすすんでいきます。
ところで、サカナくんが「ルディ」、ネコくんが「アサダ」くんとアダナをつけられたように、本書の題名ともなっている、彼らの様子はどのような理由で「発達障害」と名づけられたのでしょうか?
もし「発達障害」という言葉がなかったら、彼らはどうなっていただろうか。「発達障害」は生まれつきなのだから、「発達障害」というネガティブな言葉などなくても、彼らの「個性」とでも言いかえればよいのではないかと思うヒトもいるかもしれない。だが、「個性」と言ってしまうことで、彼らが戦っている「障害」の存在を忘れてしまわないだろうか。これまでの苦しかったこと、周りに認められなかったことなど、言葉で表しきれなかったさまざまな経験と感情に「発達障害」という言葉が組み合わさって、パズルが解けたかのように感じたキャラクターもいたかもしれない。
そうですね。「個性」と呼んでしまえば、ニューロダイバーシティという言葉に代表されるように、 ”当事者のそれぞれの個性を活かし、その多様性を尊重し、そのままで共生して行こう” という方向に進んでいきそうです。
それはそれでいいとも思うのですが、「発達障害」と名づけることで、その場合はそれぞれの障害特性に適した支援を考えることができますね。「名づける」ということは、単なるレッテル貼りではなくて、共通する部分を抽出して、それに応じた療育方法、子育てをしていくということになります。
そう考えると、ものごとや現象に、「名前をつける」というのは大切なことなのでしょう。
「ヒトはそれを『発達障害』と名づけました」この題名、結構深いですね。名づけたところから、支援のスタートです。
なお、このキャラクター達、本の表紙の面々ですが、逢いたくなったら、筑波大学DACセンターのRADDのページで待っていてくれます。発達障害をもつ学生への支援の情報が他にもいろいろ載っていますので、ぜひ一度覗いてみてください。
また、本書の元になった、同名の「ヒトはそれを『発達障害』と名づけました」のマンガも、このページの「教育関係共同利用拠点」の「発達障害啓発マンガ」のページにデジタルブックとして載っています。前半55ページ分までのマンガの部分は無料で読めますので、大いに参考にしてください。
(「育てる会会報 296号」2022.12 より)
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目次
はじめに
「発達障害」という言葉に、私たちはどのように向き合うのか
『発達障害とは?』
「発達障害」と名づけられることで、変わること、変わらないこと
『発達障害のグレーゾーン』
『当事者さん達の自己紹介漫画』
『まとめ』
大きな「苦手」の森の中にある小さな「得意」の芽を見つけ、育てる