知的障害・発達障害のある子どもの住まいの工夫ガイドブック | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

西村 顕 ・ 本田 秀夫:著 中央法規出版 定価:2400円 + 税 (2016.8)

 

            私のお薦め度:★★★★★

 

育てる会でも、「グループホーム すてっぷ 1」が完成し、青年たちの新しい暮らしが始まりました。「ほっぷ 1」や「すてっぷ 1」は、最初から自閉症の特性に配慮した設計ですが、普通の家では少し難しいと思います。

まして自閉症の告知を受けたばかりのご家庭では、何の対策もないのが当然だと思います。

一方で、自閉の特性が最も顕著で、それこそ一瞬の目も離せないのが就学前の頃だと思います(我が家がそうでした)。

家からの飛び出しや塀からの転落、洗面所の水の出しっぱなしや、大量のトイレットペーパーで便器をつまらせたり・・・スイッチを何度も押したり、テレビの上に登ったり、窓から物を投げたり、冷蔵庫を開けて勝手に食べたり、と本当に色々やらかしてくれますね。

新米のお母さんなら「もう、イヤ!」となることもあったのではないでしょうか。

 

そこで、本書の登場です。

 

無断で衝動的に飛び出してしまった、大きな音を立てて近所から苦情を寄せられたなどの問題が頻繁に起こります。対策は、簡便さやわかりやすさだけでは不十分で、「安全」と「安心」の確保が重要な課題となります。

この本では、知的障害や発達障害のある子どもが家庭生活のなかでしばしば示す問題を取り上げ、それらを少しでも解消し、安全に安心して暮らすための工夫について紹介します。なかでも、家族が知らないうちに勝手に家から飛び出してしまうなどの「危険な行動」や、部屋の中で飛び跳ねる、大きな音を立てるといった「困った行動」への対処方法に焦点を当てています。(「はじめに」より)

 

著者は、共に横浜市総合リハビリテーションセンターに勤められていた、一級建築士の西村 顕 氏と、精神科医の本田 秀夫 先生の共著です。

実際の物理的な工夫については西村氏が、構造化やコミュニケーションの工夫については本田先生が中心となって書かれています。構造化の工夫などについては、「支援ツール勉強会」などでも取り組まれている方も多く、また書籍などもたくさんでていますので、今回は主に住まいの物理的な工夫についての部分を紹介していきたいと思います。

 

まず、本書で最初に取り上げているのが「玄関」での工夫です。

玄関から勝手に飛び出すことは、交通事故、行方不明など危険に直結するので、確かに最優先で取り組む課題になると思います。

 

本書では、その工夫について、それぞれの場所で「すぐできる工夫」「手軽にできる改修」「しっかりと改修」に分けて、それぞれのおおまかな費用とともに提案しています。

 

例えば、玄関では「すぐできる工夫」として、「玄関扉のサムターンが取り外せないか確認しよう」とあります。これなら「費用 0円」ですね。玄関に2つカギがある場合は、下についているサムターン(内側カギのツマミ)が取り外せる場合があるそうです。図解で取り外し方も説明してあるので、これでOKならサムターンをはずして保管しておくだけですみそうですね。

 

次は「手軽にできる改修」で、「ホームセンターで無断外出防止グッズを探そう」と、いろんなグッズが紹介されています。こちらは「費用 約100円~」となっています。

 

最後は「しっかりと改修」で、費用はそれぞれですが、建築士の立場からいろいろ提案されています。「両面シリンダー錠に変更」の場合は「費用 約3万円~」、「カギを追加する」場合は「費用 約4万円~」、賃貸でカギの改修ができない場合は「リモコン式の電気錠を設置」この場合は少し高くて「費用 約10万円~」となるそうです。

 

また、工事の際の、+αのアドバイスもあります。

 

カギを変えた後、それまで開くと思っていた玄関が突然開かなくなると、パニックを起こす人もいます。カギの工事の様子をあえて子どもに見せて、今日からカギのルールが変わるということをわかるようにすると、パニックを防ぎやすくなるかもしれません。

 

本書によると、自閉症のお子さんのいるご家庭の、実に90%が玄関からの無断外出があり、ご家族が悩まれているそうです。捜索願いを出して警察のお世話になるというのは、ほとんどのご家庭で経験されていることになりますね。水難事故や交通事故に遭わないためにも、本当に最優先で改善しなければいけないのが玄関ということです。

 

そして一方で、それぞれの場所の工夫の最後に「ドクターから」というコーナーがあり、本田先生からの自閉症の専門家としてのアドバイスも付け加わります。

 

ただし気をつけなければならないのは、外出自体を全面禁上してはいけないということです。ここで紹介した方法は、子どもを閉じ込めたり、外出を禁止したりするためのものではないということをしっかり理解しておきましょう。

問題になるのは、誰にも何も言わずに「無断で外に出てしまうこと」です。

子どもが「外に出たい」という意思表示をしたときには、家族は本人の外出を適切な形で保障する必要があります。

意思表示をすれば出てもよい時間帯と夜間など出かけない時間帯とを、本人にわかる形で示す工夫も必要です。

少しずつでよいので、外出についてのルールを本人が身につけることができるよう、取り組んでみてください。

 

玄関から出られないようにして、これでひと安心・・と満足するのではなく、将来の自立に向けて地道に関わっていかなければいけない、ということですね。

 

こんな風に、「玄関」から始まり「窓」、「庭・駐車場」「キッチン」「階段」「トイレ」「洗面所・浴室」「扉・カーテン」「スイッチ・インターホン」「テレビ」・・・と、家の中のの気をつけなければいけない箇所、危険な所などの注意箇所と、その改善方法が網羅されています。

 

具体的な写真やアドバイスもたくさん載っていますので、きっと役立つ1冊だと思います。

 

              (「育てる会会報 288号」 2022.4 より)

 

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『 知的障害・発達障害のある子どもの住まいの工夫ガイドブック』


目次

  口絵 知的障害や発達障害のある子どもと住まい
      こんなことありませんか?

  はじめに

第1章 人が安全に・安心して過ごせる住まい

  1. 知的障害・発達障害のある人の特性と困りごと
  2. 誰が、何について、なぜ困るのか?
  3. 「構造化」による環境調整
  4. 要求や拒否ができるコミュニケーシヨン手段の保障を
  5. 環境調整は、なるべく子どものうちから


第2章 エリア別/テーマ別 環境改善方法

  1. 玄関
      困りごと ● 子どもが玄関から飛び出してしまう

  2. 窓
      困りごと ● 子どもが窓から身を乗り出す。窓から物を投げる

  3. 庭・駐車場
      困りごと ● 子どもが庭や駐車場から飛び出してしまう

  4. キッチン
      困りごと ● 子どもが冷蔵庫の扉を何度も開け閉めする
      困りごと ● 調理中に子どもがキッチンに入ってきて火や包丁に触ろうとする

  5. 階段
      困りごと ● 子どもが階段から転落しそうになる。上階から物を落とす

  6. トイレ
      困りごと ● 子どもがトイレットペーパーや水で遊んでしまう
      困りごと ● トイレットペーパーホルダーに登ってしまう
      困りごと ● 排泄物を壁に塗ってしまう

  7. 洗面所・浴室
      困りごと ● 子どもが水で遊んでしまう
      困りごと ● 入浴中、目を離したすきに風呂場から逃げ出す

  8. 扉・カーテン
      困りごと ● ドアで遊んだり、たたいたりする
      困りごと ● ドアの取っ手にぶら下がる。ハンドルを上下に動かし続ける
      困りごと ● 子どもがふすまを破る
      困りごと ● 子どもがカーテンにぶら下がる、障子を破る

  9. スイッチ・インターホン
      困りごと ● 子どもがスイッチやインターホンのボタンを何度も押す

 10. テレビ
      困りごと ● テ レビ台の収納を開けたり閉めたりし続ける
      困りごと ● 子どもがテレビをたたく。テレビを落とそうとする

 11. 音
      困りごと ● 子どもが家の中で大きな声を出す
      困りごと ● 子どもが家の中で飛び跳ねる、走り回る

第3章 住環境の整備事例

  事例-1 家からの飛び出しや、危険な行動に対する安全対策
          窓から飛び出す、キッチンにたびたび出入りするなど危険な行動が多く、家の中で安全

          に過ごせない

  事例-2 飛び出しや不適切な行動に対する転居前の新居全体と庭の環境整備
          無断で外へ出ていってしまう、冷蔵庫の食品で遊んでしまう、テレビをたたくなど、目が

          離せない

  事例-3 多動で危険の予測が難しい子どもの環境整備と居場所づくリ
          キッチンで小火を起こしたり、 トイレに紙を大量に流したり、すぐに予想外のことをして

          しまう

  事例-4 オープンなキッチンの環境整備と扉の取っ手の工夫
          キッチンで調理をしているときに子どもがいつもそばに来るので危なくて家事ができない

  事例-5 目的地までの動線の整備 
          居間からトイレまでの動線上に見えるキッチンや玄関が気になり、トイレまで到達でき

          ない

資料編

  1. 横浜市で行っている相談事業・助成制度
  2. 協力企業情報
  3. 参考文献

おわりに