佐々木敏幸・縄岡好晴:著 明治図書 定価:各1600円 + 税 (2021.6)
私のお薦め度:★★★★☆ (個別編)
★★★★★ (集団編)
今月も2冊まとめての紹介です。推薦の言葉を梅永雄二先生が書かれているように(本文の中でも、ご本人が一部登場されます)、梅永門下(?)の、若手の実践家の先生方です。
支援ツールの中でも「個別編」で紹介されているさまざまのアイデアは、これまでもみなさんが取り組まれているものでしょう。育てる会でも、澤先生の支援ツール勉強会で、我が子へのオーダーメイドで、工夫を紹介しあっていますね。
一方で「集団編」で紹介されているアイテムについては、学校での先生や施設の指導者、就労先の支援員の方に依存していることが多かったのでは、と思います。本書の中では、著者のお一人、佐々木先生が特別支援学校の先生ということもあり、主に学校での構造化のアイデアになります。
教室は、個別の療育の場でも研究室でもありません。構造化は、個別の配慮を基本としますが、生活の場である学級では集団マネジメントの視点も欠かせません。環境設定は、個と集団の両輪で検討する必要があり、両方の要素がバランスよく作用し合う環境にすることが理想です。 (【集団編:行動障害のある友達と一緒に生活できる学級のエリアづくり】より)
本書の構成は各アイデアごとに(個別編 34、集団編 36)、「つまずきをひもとく」、「具体的設定と変化」、「大切にしたい視点」、「何のための構造化!?」の順に解説されています。
まずは、「つまずき」で、ASDの特性の視点から課題を見つけていきます。次に「具体的設定」で、支援ツールの使い方とその経過・結果が述べられています。そのツールの作り方については、第3章でそれぞれ丁寧に写真付きで、別途検索できるようになっています。その制作難易度についても、星印で分かるようになっているので、自分の器用さに合わせて選択していただければと思います。
また「大切にしたい視点」では、簡潔に、しかも他のつまずきにも般化できるアドバイスがあり参考になるものも多かったです。例えば・・・
・「指示待ち」は、その場で何を期待されているのか理解できていない状態だと認識する。
・我慢させるためのツールとして安易に視覚的な支援を用いない。
・時間が余っても事前に決めた周回数は変えない(増やさない)。(体力づくり)
・「スタイリッシュ」な空間づくりを目指す。
この、スタイリッシュという視点からは、よく段ボールを使ってのパーテーションなどの教材が挙げられます。
子ども達への不要な刺激を避けるため、物理的構造化の際に段ボールを使って仕切りなどを作ることがあると思いますが、時として「貧乏くさい」と批判されるケースもあります。
本書では、それをいかにスタイリッシュに、しかも頑丈に作るか、というところから入っていきます。
まず基礎編でも集団編でも最初に取りかかるのが「基礎段ボール」の作り方です。要は、段ボールの箱の不要な部分を切り取って、社名などのロゴの入った面を内側に貼り合わせて、無地で恒久的に使える段ボール素材を作りあげるということなのですが、ひと手間かけることによって、きれいでしっかりとしたパーテーションができあがるわけです。
作成後も、「壊れても常に修復して破損状態で用いないように管理する」ことを心がけて、子ども達が喜んで使ってもらえる教材とします。
本書では、そういった手作りの支援ツールがほとんどなのですが、目的は子ども達が理解して、学びに活かすことなので、もちろん良い市販のものがあれば利用していきます。
例えば、手洗いに固執して、3分以上も入念に手洗いを続けている(止められない)生徒への対応です。
コロナ禍の学校では、人との接触場面への慎重な配慮が求められています。特に、手洗いという重要場面では、他者と接触する物理的なやりとりは、特性に配慮した支援であっても厳密な対応が不可欠となります。
「ノータッチタイマー」(SATO)を水道壁面に設置しました。
手洗いに固執している子どもへ、センサーに手をかざし、ベルが鳴ったら終了を教えました。
他者から指摘されなくても、視覚的に確認して25秒以内に終えられることで、自発的に活用できるようになりました。
他に、普段は適当に手洗いしていた子どもも、見て時間を確認し丁寧に手洗いするようになりました。
ちなみに、ここで紹介されている「ノータッチタイマー(SATO) 手洗い当番」は、アマゾンでは1,651円で販売されているので、手作りするよりは手軽で便利だと思います。
他にも、本書ではASDの障害の特性に配慮した支援についても学ぶことが多いです。
・「飾り物」でしかないのであれば学級目標や個人目標は(掲示から)外す。
ASD児にとって、不要な視覚的刺激はない方が良いことは分かっているはずですが、特別支援学級などでも、漫然と「今月の目標」なんてものが黒板に書いてあることははないでしょうか。
・「ホウレンソウ」は対人関係の高度なスキルだと認識する。
・対面による場面設定ばかりを前提条件にしない。
確かに就労後には「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を求められることが多いのですが、そもそも口頭での報告や相談を苦手とする特性があるのですから、それに替わるツールの使い方を教えてあげるのも支援のあり方の一つだと思います。
本書では、対面によらずに「報告」できる係活動確認表として、完了すれば自分の札を、自分で「まだ」から「○」に裏返して報告できるツールを作っています。
これも「口頭」ではないにせよ、立派な「報告」ではないでしょうか。
他にも、一番にならなければ気が済まない子に、みんなで楽しく遊べるためのいろんなゲームの作り方や、教室表示にピクトサインを設置し分かりやすくするなど、どちらかというと【集団編】の方に新しく教えられることが多かったようにも感じました。
もちろん、その前提には基礎として【個別】の支援が必要ですので、2冊を合わせてお薦め本とさせていただきます。
(「育てる会会報 284号」 2021.12 より)
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【個別編】 環境・時間・活動の 見える化アイデア 34
もくじ
推薦の言葉 ・・・梅永 雄二(早稲田大学 教授)
はじめに
準備編
支援ツールに活かせる身近な素材
支援ツール制作に役立つ基礎用具
第1章 構造化の利点とポイント
01 情報をわかりやすくするために
02 教育現場での構造化の意義
03 構造化の具体的な手立てとは
04 指導への活かし方
第2章 構造化のための支援ツール
物理的構造化
01 学習や活動に集中できる 個別の机上パーテイシ∃ン
02 自分の役割を遂行できる 水回りの布巾掛け
03 音の刺激を軽減できる 適材適所のテニスボール
04 整理整頓ができる 机の中のエリア分け
05 「好き」がかなう場 パーティションによるカームダウンエリア
06 活動の終わりを確認できる 完了したら放り込むカゴ
07 他者と適切な距離を保てるようになる 手繋ぎの代替・ゴムリング
時間の構造化
08 見通しをもって学校生活が送れる 上から下の流れによるスケジュール
09 見通しをもつて校外で活動する 宿泊行事・校外学習用の携帯式スケジュール
10 見通しをもつて活動できる 1つ提示―消去式―のスケジュール
11 注目しやすい&動機高まる ベージめくり式のスケジュール
12 スケジュールヘかえることができる 顔写真カードとポケット
13 見通しをもつて乗車できる スクールバス・バス停の乗降者確認B00K
14 なくなって終わりがわかる 体育的活動用のチップとボード
15 確認しながら自分でできる 忘れ防止のための指示書
16 行為を介して確認しながら自分でできる 左から右への操作式指示書
17 どうしても我慢しなければならないときを過ごすために 人生初の飛行機に挑戦するためのツール
18 自分で確認・管理できる 排せつの回数ツール
19 一人通学に挑戦できる 山手線の現在地確認B00K
活動の構造化
20 複数の個別課題に取り組める 個別学習のワークシステム
21 作業場所への移動ができる 資源回収の可動式指示書
22 工程を理解して作業できる iPhoneのアプリを利用した指示書
23 順番に達成して報告ができる 個別課題用のワークシステム 〈1〉
24 順番に自立課題を達成できる 個別課題用のワークシステム 〈2〉
25 スキルを補って作業へ従事できる メモ帳用の紙束づくりの設定
26 作業の正確性を導く スタンプ押し作業の設定
27 こだわりを利用して作業できるようになる ペットボトルのラベル剥がしの設定
28 再構造化によってできるようになる ネジの封入作業の設定の改善
29 「終わり」の理解と成功体験を得られる プットイン教材
30 ジグを活用するスキルが身につく 型はめ教材
31 模擬的な実習場面で般化・応用できるようになる 作業学習への接続を目的とした教材
32 自分の思いや希望を伝えられる コミュニケート・絵カードツール
33 用途に応じて自分の物を管理できる 日常生活ヘジグの機能を応用した箱
34 手持ち無沙汰になったら触って安心できる 隙間時間の活動をつくるためのグッズ
第3章 支援ツールの作り方
個別の机上パーテイシヨン(→01)
水回りの布巾掛け (→02)
適材適所のテニスボール (→03)
机の中のエリア分け (→04)
パーテイシ∃ンによるカームダウンエリア (→05)
手繋ぎの代替・ゴムリング (→07)
上から下の流れによるスケジュール (→08)
宿泊行事・校外学習用の携帯式スケジユール (→09)
1つ提示―消去式―のスケジユール (→10)
ページめ<り式のスケジュール (→11)
顔写真カードとポケット (→12)
スクールバス・バス停の乗降者確認BOOK (→13)
体育的活動用のチップとボード (→14)
忘れ防止のための指示書 (→15)
左から右への操作式指示書 (→16)
人生初の飛行機に挑戦するためのツール (→17)
排せつの回数ツール (→18)
山手線の現在地確認BOOK (→19)
個別学習のワークシステム (→20)
資源回収の可動式指示書 (→21)
iPhoneのアプリを利用した指示書 (→22)
個別課題用のワークシステム 〈1〉 (→23)
個別課題用のワークシステム 〈2〉 (→24)
メモ帳用の紙束づくりの設定 (→25)
スタンプ押し作業の設定 (→26)
ペットボトルのラベル剥がしの設定 (→27)
ネジの封入作業の設定の改善 (→28)
プットイン教材 (→29)
型はめ教材 (→30)
作業学習への接続を目的とした教材 (→31)
コミュニケート・絵カードツール (→32)
日常生活ヘジグの機能を応用した箱 (→33)
隙間時間の活動をつくるためのグッズ (→34) ・
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【集団編】 環境・時間・活動の 見える化アイデア 36
もくじ
推薦の言葉 ・・・梅永 雄二(早稲田大学 教授)
はじめに
準備編
支援ツールに活かせる身近な素材
支援ツール制作に役立つ基礎用具
第1章 構造化の利点とポイント
01 集団生活の場で構造化を活かすためには
02 構造化の具体的な手立てとは
第2章 構造化のための支援ツール
物理的構造化
01 活動に集中できる 段ボールのパーテイシヨン
02 見てエリアを理解できる 床へ線で示す枠組み
03 安定して生活できる 窓にカーテン・鏡|こシーツ
04 使つたものを正しく戻せる スポンジ・タワシ収納
05 理解に応じて共用物を管理できる 掃除道具が帰る場所表示
06 ひと目で場所と位置がわかる ゴミ箱位置の環境設定
07 迷わずに気持ちよく収納できる 用途に合わせた段ボール棚
08 自分の力で整理整頓ができる 所有物の居場所づくり
09 刺激が少なく安心できる シンプルに見渡せる教室空間
10 視覚的な安心を導く 刺激軽減☆収納術
11 自他の存在を確認できる 出退勤・役割確認表
12 「褒められる」を理解できる 頑張リコイン投入ボード
13 特性に応じた「報告」ができる 外出報告表ツール
14 対面によらずに「報告」できる 係活動確認表
15 自分に必要な情報ヘアクセスできる 教室正面黒板情報の取捨選択
16 必要なことへ集中できる ニーズに応える教室掲示
17 刺激を遮断できる 八ウス型カームダウンルーム
18 提出・持ち帰りがわかる 連絡帳BOX・配布物入れ
19 見ただけで教室の場所と意味がわかる 教室表示板
20 自分の教室を間違えない ピンクの目安箱
21 視界に入る刺激を抑える 適所に用いるシーツ布
22 机の位置や配置を理解できる シンプル・シンメトリーに配す机の位置表示
23 行動障害のある友達と一緒に生活できる 学級のエリアづくり
24 安全に管理・活用できる ピツタリ収納箱
時間の構造化
25 時間が見える タイマーのあれこれ
26 日にちだけを確認できる 手作リシンプルカレンダー
27 色や枠が手がかりになる 黒板の日付掲示
28 「適度な」手洗いができる 「ノータッチタイマー」(SATO)
活動の構造化
29 楽しく順番を決められる 給食配膳ルーレット
30 どの子も加わり決められる ジャンケンの代替ルーレット
31 勝敗体験を通じて対人関係スキルを学ぶ テーブルホッケー
32 人気ゲームで余暇活動を楽しむ コインでポン!
33 どの子も楽しく参加できる カーリング・ゴルフ
34 身近に面白スポーツを楽しめる ハエ叩ミントン
35 数の理解がなくでも楽しめる 色すごろく
36 空白時間に目的をもつて活動できる 子どもを褒める機会づくり
第3章 支援ツールの作り方
段ボールのパーティション (→01)
スポンジ・タワシ収納 (→04)
掃除道具が帰る場所表示 (→05)
ゴミ箱位置の環境設定 (→06)
用途に合わせた段ボール棚 (→07)
所有物の居場所づくり (→08)
シンプルに見渡せる教室空間 (→09)
刺激軽減☆収納術 (→10)
出退勤・役割確認表 (→11)
頑張リコイン投入ボード (→12)
外出報告表ツール (→13)
係活動確認表 (→14)
ニーズに応える教室掲示 (→16)
八ウス型カームダウンルーム (→17)
連絡帳BOX・配布物入れ (→18)
教室表示板 (→19)
ピンクの目安箱 (→20)
適所に用いるシーツ布 (→21)
シンプル・シンメトリー|こ配す机の位置表示 (→22)
学級のエリアづくり (→23)
ビツタリ収納箱 (→24)
手作リシンプルカレンダー (→26)
黒板の日付掲示 (→27)
給食配膳ルーレット (→29)
ジャンケンの代替ルーレツト (→30)
テーフルホッケー (→31)
コインでポン! (→32)
カーリング・ゴルフ (→33)
ハエ叩ミントン (→34)
色すごろく (→35)
子どもを褒める機会づくり (→36)