友だち作りのSST | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

エリザベス・A・ローガソン、フレッド・フランクル:著    金剛出版  定価:3800円 + 税 (2018.11)

山田 智子、大井 学、三浦 優生:監訳 山田 智子:訳

 

            私のお薦め度:★★★☆☆

社会性やコミュニケーションに弱さを持つ自閉スペクトラム症の子どもたちは、友だちを作るのが苦手と言われます。同時に、高機能な子どもたちは、思春期ごろになると、友だちがうまく作れなくて悩むこともありますね。
「友だちがほしいけれど、作れない」・・・そんな自閉症児の本人や家族のために書かれた本です。

「別に友だちなんか作らなくてもいいよ」と視点を変える話や、「自分がしてほしいことをしていたら、友だちはきっとできるよ」というような抽象論ではなく、「こういうことを学んで、順に身につけていけば、確実に友だちをつくることができるよ」という、科学的に実証しいいくSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)のマニュアル本です。
「自閉スペクトラム症と社会性に課題のある思春期のためのPEERSトレーナーマニュアル」と副題にある通り、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で開発された
PEERS(Program for the Education and Enrichment of Relational Skills)、友だちを作ったり関係を維持したりすることが困難な思春期のASD児に焦点を当てた、保護者によるサポートを指導に取り入れた介入プログラムのトレーナーのための本となっています。

日本でよく行なわれているSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)はロールプレイングなどを通して、挨拶や会話など、社会人としてふさわしい態度を身につけることが中心になることが多いのですが、PEERSの場合は友だちを作るために必要な技能を、決められたセッションに従い、ひとつひとつクリアしていくように設計されています。

このプログラムでは、14週間にわたって毎週90分間。保護者と子どもたちが同じ時間に別室でセッションに参加します。活動内容には、会話をするためのスキル、たとえば、会話に入る・出る、電子通信機器によるコミュニケーション、自分に合う友だちの見つけ方、からかい・いじめ・社会的な場面での拒否への対応方法、思いのすれ違いへの対応方法、友だちと楽しく一緒に遊ぶ方法などがあり、マニュアルを使用して指導します。

ですから、参加する本人と保護者に対しては、このプログラムを最後まで、やり遂げる意欲があるか、本人がレッスンについていける言語能力があるか、保護者が毎週出される宿題で子どもをサポートできるかなど、あらかじめ納得して参加していただくことになります。
「試しに参加してみようかな・・」では、最初から参加は認められないでしょう。
結構厳しいですね。

14週のうち少なくとも11週は、同じ保護者にセッションに参加していただかなければなりません。
→もし、保護者が交代で参加しなければならないとか。 3セッション以上欠席しなければならない、また最初の2セッションを欠席しなければならないという場合は、メンバーからは除外します。


このように、同じ保護者がセッションに参加するよう求められていますので、共働きの場合などは、職場での事前の調整も必要になってきますね。
また、この14週のプログラムの間は、PEERSのメンバー同士はセッション以外で交流してはいけないことから分かるように、このPEERSは「友だちづくり」の集まりではなく、まさに「友だちの作り方を学ぶ」集まりといえるでしょう。

指導にあたるメンバーは保護者グループと子どもグループにリーダーが各1人、子どもグループを助けるコーチが1~2名、子どもグループに参加する人数は7~10人ですから、保護者の数も同じぐらいになります。

これまで PEERSのソーシャルスキルグループに参加しているASDの子どもたちは、同じASDの子どもたちと同士だと心地良く感じ、よりうまくいくという様子が何度も観察されています。つまり、ASDの子どもたちだけのグループにすることが望ましいと言えるでしょう。ADHDや他の社会的な行動問題を抱えた子どもは、一般的に集団の場でASDの子どもを受け入れにくいという様子が見られます。途中でプログラムからドロップアウトすることを防ぐためにも、ASDと他の特性の子どもたちは、別々のグループにする方が良いでしょう。

こうして、ASDの子どもたちだけで構成されたグループにより、いよいよPEERSのレッスンが始まります。セッション1の「導入と会話のスキル Ⅰ 情報交換」から始まり、セッション14の「プログラムの終了と卒業」まで、14週のセッションです。
各セッションごとに保護者グループと本人グループに分かれて、宿題の振り返り、当日のレッスン、宿題の説明があります。本人向けセッションでは、不適切なロールプレイや適切なロールプレイを実際にやってみせることにより、当日の課題についての正しい対応を学んでいきます。

それぞれの進め方は、具体的にセッションごとに詳しく書かれているので、このマニュアル通りに進めていけばいいと思いますが、個人的に面白かったのは、保護者セッションでの「困った親」への対処法でした。

○    注目要求が強い
この例は、やろうとしなかった宿題について慌てて言い訳をしようとしたり、どれだけ日々の生活が大変かを話す保護者です。このような場合は、宿題をちゃんとやってきた親へ話を方向修正することが大切です。


○    自分の子どもは、セッションの学習内容の一部は不必要であるという保護者
このタイプの親は、自分の子どもがこのグループにいるべきかどうか迷っています。そして、グループをコントロールしようとしたり、グループリーダーに自分たちをグループに受けいれるように仕向けたりします。
その場合、保護者に対して、あなたの子どもはグループが必要であると説得しないことが大切です。他のグループメンバーは親切に関わっているかもしれませんが、それにより得られることはないし、むしろリーダーがその人にやめてもらえたらと望んでいます。グループセッションではない時間を取って、より適切な場を紹介しましょう。


要は、PEERSは、「本当に友だちを作りたい」と願っている本人と保護者のためのプログラムであり、生半可にはついていけない分、最後までやりとげられたら、確実に成果をあげられるであろうプログラムだと思います。
育てる会でも、このPEERSプログラムを、実施ができないか、検討中です。
乞うご期待です。

なお、ご家庭の都合で14週連続参加が難しかったり、年齢や言語能力が違っていたり、また本人にそこまで友だちを作りたいという意欲が育っていないご家庭もあると思います。
そんな方の為には、同じ著者が、保護者や本人のためにPEERSのエッセンスを紹介した「友だち作りの科学」(金剛出版:定価 2800円+税)という本もあります。
PEERSプログラムへの参加ほどの成果はあげられないかもしれませんが、ご家庭で取り組める友だち作りを助けるために、こちらも機会があれば、お薦め本として改めて紹介したいと思います。

 

                   (「育てる会 会報 280号」(2021.8) より)

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目次

  PEERSが思春期や青年期の社会性の課題のある人たちに必要なわけ・・・辻井 正次
  はじめに
  謝辞
  著者について

Ⅰ はじめに

  1 はじめに
     このマニュアルの使い方
     必要とされるスタッツ
     PEERS の効果が期待できる人は
     マニュアルの構成
     研究データ
     PEERSを学校環境で使用すること
     本マニュアルの成人期前期の若者 (Young Adulns) への使用

II プログラムを始める準備

  2 プログラムを始める準備
     スクリーニング (参加者を選ぶ)
     電話スクリーニングの流れ
     PEERS電話スクリーニング・データシート
     保護者と子どもへのインテーク面談
     インテーク面談の終了
     子どものインテーク面談チェックリスト
      PEERSにようこそ! (ウェルカムレターのサンプル例)
     グループを作る

Ⅲ セッション

  3 セッション 1 : 導入と会話のスキル Ⅰ ・・・ 情報交換
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
     ジェパディ回答用紙 
  4 セッション 2 : 会話のスキル Ⅱ ・・・ 双方向会話
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
  5 セッション 3 : 会話のスキル Ⅲ ・・・ 電子通信コミュニケーション
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
  6 セッション 4 : 自分に合った友だちを選ぶ
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
  7 セッション 5 : ユーモアノ適切な使い方
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド 
  8 セッション 6 : 仲間に入る Ⅰ ・・・ 会話に入る 
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
  9 セッション 7 : 仲間に入る Ⅱ ・・・ 会話から抜ける
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド 
 10 セッション 8 : 一緒に遊ぶ
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 11 セッション 9 : スポーツマンシップ
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 12 セッション 10 : 拒否 Ⅰ ・・・ からかい言葉・とまどい言葉への対応 
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 13 セッション 11 : 拒否 Ⅱ ・・・ いじめや悪い評判への対応 
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 14 セッション 12 : 思いのすれ違いへの対応方法 
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 15 セッション 13 : うわさやゴシップへの対応方法     
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 16 セッション 14 : プログラムの終了と卒業 
     保護者 セッション・セラピストガイド
     子ども  セッション・セラピストガイド
 17 ケーススタディ
     事例 1 : マーティン
     事例 2 : ティナ
     事例 3 : ダニエル

  文献

Appendices
  評価尺度
    Appendia A 
      ソーシャルスキルに関する知識 ・・・ 子ども向け質問紙 (TASSK)
      ソーシャルスキルに関する知識 ・・・ 子ども向け質問紙 (TASSK)
     Appendix B
      遊びの様子に関する質問紙 ・・・ 保護者用 (QPQ-P)
      遊びの様子に関する質問紙 ・・・ 子ども用  (QPQ-A)
      遊びの様子に関する質問紙

  セッション資料
    Appendix C
      電話スケジュール表 (保護者用)
    Appendix D
      欠席予定表
    Appendix E
      グループ内電話パートナー表
    Appendix F
      PEERS ポイント記録表
    Appendix G
      PEERS スポーツマンシップ・ポイント表
    Appendix H 
      PEERS 宿題取り組み麦
    Appendix I
      卒業パーティのお知らせ

  監訳者あとがき (山田 智子)
  「保護者向け配付資料」ダウンロード方法
  監訳者略歴