栗原 類:著 酒井 だんごむし:画 KADOKAWA 定価:1200円+税 (2017.12)
私のお薦め度:★★★★☆
以前、会報でも紹介させていただいた、モデルでタレントの栗原 類 氏の自伝「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」の本が、マンガ化されて、よりイメージしやすくなって再登場です。
「はじめに」の中で、類くん(本書の中で主治医の高橋先生が「類くん」と呼んでいますので、失礼かもしれませんが、私も「類くん」と紹介させていただきます)も書いています。
昨年10月に、自伝的なエッセイを出版し、多くの反響をいただきました。その中には「イラストや短い文章だともっとよかった」という声もありました。
発達障害を持つ方の中には、机にじっと座ったり、活字を追うのが苦手な方もおられます。
そんな方々にも、お子さまにも、ぜひ手に取っていただきたいと考え、僕がどんな障害を持ち、どんな壁にぶち当たり、どんな思いで乗り越えてきたのか、生い立ちから道をみつけるまでをストーリーマンガにしてわかりやすくし、僕が羽ばたけた理由を、なるべく短い文章でまとめました。
マンガは、酒井だんごむしさんが、類くんのイメージ通りに描写していて、画風もかっての「光とともに・・・」を思い出させるようなさわやかな感じで、なつかしさを覚えました。「タレント本」と言っては失礼なのですが、テレビや舞台で顔を拝見している方の本はイメージしやすいという利点があります。ましてそれが、まんがで表現されていると、講演会の中で映像を使っていただいた時のように、目の前に映像として映し出され、理解と共感が一挙に進んでいきます。
その意味では、前著の「輝ける場所」が保護者の方や同年齢の仲間に向けて書かれていたように感じられたのに対し、本書の「羽ばたけた理由」の方は、もう少し若い方、後に続く後輩に向けても読んでもらいたい、とうメッセージを感じました。
自分の失敗、弱みを正直に書いたあと、それを悲観しないで工夫していった姿が心をうちます。遅刻したとき、忘れ物をしたとき、道に迷って約束の時間に遅れそうになったとき・・・
また、もし出先で道に迷ってしまっても、母と連絡が取れる時には、GPSで自分の居場所を母にリアルタイムに知らせることができます。そして、母が僕のGPS情報を見ながら、電話で「次の角を左だよ」「その先、まっすぐ100mくらい直進」などと、道案内してもらうことも可能です。空間認知が苦手な僕は、今も方向音痴のままですが、地図アプリが使えるようになって、道に迷うことがかなり減りました。
前の「輝ける場所」でも、お母さんの泉さんの、特性を配慮しながら自己肯定感を大切にする子育てには感心したのですが、成長した類くんにもサポートは続いているようですね。
こんな風にスマホやタブレットをうまく使いながら、発達障害の弱さをカバーして暮らしているそうです。ちなみに、小学生の頃の頃の類くんの初めてのお使いでは電子マネーを使っていたそうですので、さすがですね。
そんな類くんからのメッセージです。
視力の弱い子がメガネをかけるのは当たり前で、聴力の弱い子が補聴器をつけることを許されるのに、字を読んだり書いたりするのが苦手な子たちが、電子辞書やタブレットを使うことを許してもらえないのは残念です。
文字を書くのが苦手なら、タイピングをうまくできるようになり、電子ツールを使うことで学習できるのなら、それを認めてほしいです。決して、楽をしたいとか怠けているわけではありません。特別扱いを求めているわけでもありません。ただ、皆と同じように学習できる機会を与えてほしいと思います。
障害者差別解消法はできましたが、一人ひとりに配慮した対応には、まだまだ「みんな一緒」という学校の教育方針が壁になっているようですね。でも声をあげていけば、いつか類くんの思いも聞き届けられる学校になることを願っています。
本書は、各章ごとにストーリーマンガで、これまでのエピソードを紹介したあと、類くんがその出来事について自分の気持ちを紹介し、そのあとお母さんの泉さんや主治医の高橋先生が、解説や補足で障害との関連や、サポートへの思いを書かれています。それぞれ1ページ~2ページぐらいの短さにまとめられているので、中学生ぐらいのお子さんなら十分一人で理解できると思います。ぜひ学校の図書館にも置いていただきたい1冊です。
前著も読んで感じたのですが、類くんが「輝ける場所」を見つけることができたのは、お母さんをはじめ周りから“大切に”育てられたからなのでしょう。
もちろん発達障害には社会性に弱さがあるため、小学校・中学校時代にはいじめにあって不登校になったり、高校受験に失敗したり、つまずきや挫折も経験してきました。それでも、そんなときも“大切に”見守る家族や主治医の存在があったからまっすぐに育つことができたのでしょう。
発達障害のひとつとして、「空気が読めない」ことがよく例に出されます。
実際、僕は他の人の気持ちをおしはかる能力が低いし、それが人間関係における壁になることもあります。
社会で生きて仕事をしていくには、人間関係は避けて通ることはできないこと。人の気持ちをおしはかることが苦手な僕が、
人間関係を円滑にするために、大切にしていることは「自分がやられたらイヤなことは、絶対に人にはしない」という基本的
なことです。
人の気持ちをおしはかることは苦手でも、自分にとってイヤなことはわかりますね。
そしてそれを子育ての中心にして貫かれたお母さん、泉さんの思いが、類くんが、今 大きく羽ばたけた理由なのでしょう。
これから羽ばたこうとしている子ども達やお母さんにお薦めの一冊です。
(「育てる会 238号」 2018.2 より)
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目次
はじめに
SPOTLIGHT 2015~2017 最近の活躍
MEMORIES 1994~2017 成長の記録
主な登場人物の紹介
プロローグ
第1話 小1での留年、8歳で発達障害と認定されるまで
・ ADDの僕が抱える問題 ① 「感覚過敏」
・ ADDの僕が抱える問題 ② 「注意力散漫」「短期記憶障害」「空気が読めない」
・ 小1での留年、「発達障害」と認定されるまで
・ 自身の「発達障害」を知ったきっかけは、大好きな映画
・ 「普通になれ」ではなく、必要なことを教えてくれた母
・ ゆっくりでもいいから、できることを増やす
・ 「発達障害」への配慮が進む、アメリカの小学校
・ 「コメディ番組」との出会いから夢が芽生える
第2話 「好きになれるもの」を育んだ、NYでの小学生時代
・ 疲れやすい「脳」を休ませる
・ 相談できる場所をみつける
・ 発達障害の子どもは側頭葉から実体験で学ぶ
・ 生活リズムや食生活を整えることで脳の暴走を抑える
第3話 「他者との葛藤」から学んだ、日本での小学5年~中学時代
・ 自分なりの「リラックス法」を持つ
・ 学校以外での「成功体験」が心の支えに
・ 短い言葉でわかりやすく具体的に伝えてもらう
・ 「他者との葛藤」で「心の体力」がついた
・ 症状に合う薬を飲むという方法もある
・ 好きなこと、のめりこめるものをみつける
第4話 高校時代から、「目指す道」をみつけるまで
・ 初めて自分から意識してできた「友だち作り」
・ 自立への道 ① 遅刻しない方法
・ スマホを活用する ① スケジュール管理
・ スマホを活用する ② 地図や電子マネー
・ 学校でもスマホやタブレットが使える社会に
・ 「向いていること」より、「自分ががんばれること」を探す
・ 好きだからがんばれる「適職」をみつける
・ 日本でも進む「発達障害者理解」のムーブメント
第5話 そして現在まで。役者として、羽ばたける日々
・ 理解してもらうよう根気よく周囲に働きかける
・ 自分がされたらイヤなことは絶対に人にしない
・ 空気を読めないなら、スキルで対応する
・ コミュニケーション方法を具体的に学ぶ
・ 自立への道 ② プチひとり暮らしを体験する
・ 人生は短距離走ではなくマラソン
おわりに
〔 巻末資料 〕 発達障害の支援環境 (2017年12月現在)
・ 乳幼児期
・ 就学前
・ 就学後
・ 中高生の受験対策
・ 就労サポート



