発達障害の子どもたちのための お仕事図鑑 | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ


テーマ:
梅永 雄二、スマートキッズ療育チーム:監修  唯学書房  定価:2200円+税 (2017.1) 
 
           私のお薦め度:★★★☆☆     
 
発達障害を持つ子どもたちが、将来「やってみたい!」と思う職業を目指すためのガイドブックです。自閉症の特性の一つとして、コミュニケーションや社会性のつまずきとならんで、想像力の弱さというものがあります。つまり、目に見えないもののイメージをつかむことが苦手だということです・・・そのために、イラスト付きの本書の登場です。

紹介されているお仕事は、全部で48種類。農家や漁師から始まって航空管制官まで、多岐に亘っています。もっとも本書によると、日本には約3万種の職種があり、412万を越す企業があるそうなので、ごくごく一部の紹介ということになるのでしょう。
 
進路を決める際に最も大切なのは本人の意志です。ただ、多くの発達障害のある児童生徒は、進路に際して明確な意思を持っているとはいえません。それは、進路に関する情報を所有していないからです。
キャリアとは経歴(その人が経験してきた学業・職業・地位などの事柄)のことです。厚生労働省によれば「時間的持続性ないしは継続性を持った概念」とされています。したがって、キャリア教育には就労だけでなく、その前段階での大学や専門学校も含まれます。そう考えると、就職だけでなく進路選択においても本人の意思を確認する必要があります。
 
ここに書かれていることに加えて、よく問題になるのが、特に高機能なお子さんの場合、親や支援者から見て、あきらかに「向いてないんじゃないの~?」と思われる進路を選ぼうとする場合があることです。
もちろん、本書の帯にも『「できるお仕事」よりも「やってみたいお仕事」を探しませんか?』とあるように、基本は“本人の意思”なのですが、本人にとって自己認知が正しく行われているかが問題です。そして、そのために、まず本書では“ジョブマッチング”のために、本人の自己理解を促すところから始めています。

20世紀初頭の米国で、場当たり的な職探しをしては早期離職を繰り返す労働者の支援に従事してたパーソンズという社会運動家がいました。彼は、職を転々としてしまう原因はジョブマッチングが十分でないことが原因だと述べ、①自分を理解すること(自己理解)、②仕事を理解すること(職業理解)、③合理的な推論によるジョブマッチング、の3段階が必要だと訴えています。その根底には、人の特性にはそれぞれ差があり、職業にもさまざまな差があり、それぞれが求めるものに差があるという考え方に立っています。それをうまくマッチングさせることでよい職業人生を実現していきたいものです。
 
これは、発達障害児に限ったことではありませんが、最初に書いたようにココの部分が弱いために、遠回りをしてしまう自閉症の方が多いのも現実だと思います。
 
その自己理解のために本書では、アメリカの職業心理学者のホランド氏による、6つのパーソナリティ・タイプ(RIASEC)の分類法を使っています。
現実的タイプ、研究的タイプ、芸術的タイプ、社会的タイプ、企業的タイプ、慣習的タイプの6つです。それぞれのタイプの説明や、タイプ別の向いている職業は本書に詳しいので、興味のある方はお読みください。
タイプ別の適職診断のチェックリストもついていますので、ぜひお子さんといっしょにやってみていただきたいと思います。むしろ職業選択というよりも、そうして親子の会話が増え、一緒に自己理解を深めていくということの方が大切なようにも思えます。

また、タイプを考えていく際に、“どのタイプが優れている”というのではなく、“どのタイプにもそれぞれに向いた職業がある”と理解することは、定型児に比べて発達障害を持つ自分は劣っているのではなく、ただタイプが違っているだけ、ということを肯定できるための助けにもなると思います。
 
さて、そうして自分のタイプがある程度分かったあとは、いよいよ具体的な職業の検討です。
タイプ別に向いている職業、たとえば現実的タイプの場合、農家、大工、料理人、自動車整備士、清掃員、電車運転士・・・など、のイラストが並び、それぞれに職業に就くための具体的な方法が書かれています。

【電車運転士】
まず鉄道会社が主催している鉄道現業試験を受験し、内定をもらうことが必要です。しかし、鉄道会社からの求人情報は、まずは過去に採用実績のある高校に入るケースがほとんどです。会社によって規定の違いはありますが、鉄道会社に就職しても、すぐに運転士になれるわけではなく、下積みとして駅員で働くことになります。その後、社内の試験に合格すると車掌になることができます。そこで数年の経験を重ねた後、運転士の免許を取得するための国家試験を受けることができ、合格すれば運転士として働くことができます。
 
このように、現実的な職業に就くまでの必要項目が書かれた後、職業の特徴や、類似した職業の説明、その職業に求められる要素(人づきあい、自主性、体力など)の度合い、が記載されていて、自分に向いているか、あるいは能力的に可能かを考えるための足掛かりとなっています。巻末付録の「お仕事カード」は、切り離してトランプかカルタのように、好きな職業を選んで裏の解説を読むという、イメージづくりの手段として遊びのように使えるものだと思います。
 
とても役立つ本だと思いますが、あえて少し書かせていただくと、以前「アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク(テンプル・グランディン他 著:梅永雄二 監修)」の紹介の際にも書いたのですが、各職業を取り上げる際の「難易度」と「現実性」をもう少し考えて選んでほしかったな、ということです。
例えば、前著「ハローワーク」だと「生物学・医学分野の研究科学者」、本書だと「海洋学研究者」、少し子どもたちが目指すにはマイナーすぎる、難易度が高すぎるようにも思えます。
できれば職業につくための難易度というのも★マークのように示してほしかったですね。
また難易度という面では、本書の「お笑い芸人」や「声優」なども、特殊な才能を求められるため、職に就いて稼いでいけるのはほんの一握りのようにも思え、親としてはあまりお薦めしにくいようにも感じました。まあ芸人を目指すと言われたら、大抵の親は反対するかもしれませんが (^_^.)
 
そして、後半の職業選択の部分では、“発達障害の子どもたちのための”というよりは、“これから大人になるための君たちへの”といったほうがふさわしい1冊のようにも思えます。
発達障害の特性をこんな風に生かせば・・・といったアドバイスがあまりなく、「社会的なタイプの仕事」の分類などでは、もともと社会性に弱さを持つ特性なのが自閉症だったのでは・・・と疑問を持った部分もありました。

ただ、それも含めて、自分にはあまり向いてない職業だと分かってもらうことも有効なので、親子で一度は“一緒に”読まれることをお薦めする一冊です。
 
          (「育てる会会報 237号」 2018.1 より)
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目次
 
  まえがき
 
第1章 就職につながる進路選択
 
  1 なぜキャリア教育が必要か
         ~「苦手がある子」は卒業後・就職後に苦しむ
     就労と就労継続という2つの壁
     仕事に必要なスキルと仕事を続けるために必要なスキル
     ソーシャルスキル・ライフスキルの考え方
     大人になる前に気づいておきたいこと
 
  2 進路を決めるにはどうすればよい?
     本人の意思を確認する
     できること、苦手なことを確認する
     進学するメリット、デメリット
     就職するメリット、デメリット
 
  3 進学する場合の選択肢
     学齢期の進学の全体像
     特別支援学校の取り組みについて
     特別支援学校の具体的な取り組み
     自治体独自の取り組み
 
  4 サポート機関を活用しよう
     まずは学校が一番身近な相談相手
     仕事を探すときは
     就職や会社で困ったときの相談は
       ~自分に向いている仕事は?
         就職に向けて必要な準備は?
         会社に求める配慮は?~
     技術・技能を身につけたいときには
     何か困ったことがあれば
 
  5 いろいろな就労の形
     一般就労
     障害者雇用
     ジョブコーチ
     就労移行支援
     就労継続支援A型
     就労継続支援B型
 
  6 小中高生のうちから取り組みたいキャリア教育
     仕事とのマッチングを探るには十分な時間と十分な体験が必要
     小学生のうちにやっておきたいこと
     中学生のうちにやっておきたいこと
 
  7 就職先・進学先を選ぶにあたって
     本人が注意すべきこと
     周囲に伝えておくべきこと
 
第2章 自分のキャリアについて考えてみよう
 
  1 ジョブマッチングに必要なこと
     適切なジョブマッチングに必要なこと
     自分に合った仕事を選ぶ
     専門家と支援の必要性
     発達段階とキャリア
 
  2 仕事を理解する
     まずは仕事を知る
     発達障害と就労意識
     職業の種類
     産業の分類
     事業所を知る
     勤労観と職業観を育てる
 
  3 自己理解① 自分の興味・関心を理解する
     自分の興味・関心を理解する
     6つのパーソナリティ・タイプ
 
  4 自分の興味・関心から向いている仕事を考えてみよう
     興味・関心から見た適職判断
     適職の例
     興味・関心だけではない仕事選び「
  5 自己理解② 自分の特性を知る
     自己理解として大切なもう一つの視点
     職業選びのときに考えたい5つのポイント
     職場環境により異なる「その他の特性
 
第3章 お仕事図鑑
 
  ○ 現実的タイプの仕事(Rタイプ)
      農家/漁師/料理人/トリマー/自動車整備士/清掃員/電車運転士
  ○ 研究的タイプの仕事( I タイプ)
      医師/薬剤師/臨床検査技師/測量士/システムエンジニア/
      生産・品質管理技術者/アナリスト(証券アナリスト)/海洋学研究者
  ○ 芸術的タイプの仕事(Aタイプ)
      声優/カメラマン/お笑い芸人/ゲームクリエーター/イラストレーター/
      ファッションデザイナー/建築士(建築家)/小説家
  ○ 社会的タイプの仕事(Sタイプ)
      マッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)/ウェイター・ウェイトレス/
      ヘルパー/看護師/保育士/警察官/美容師/テーマパークスタッフ
  ○ 企業的タイプの仕事(Eタイプ)
      ショップ店員/営業部員/カーディーラー/ソムリエ/コンシェルジュ/
      電話オペレーター/裁判官/スポーツ選手(チームスポーツ)
  ○ 慣習的タイプの仕事
      倉庫作業員/事務員/秘書/図書館職員/ライン作業員/車掌/
      宅配便配達員/航空管制官
 
第4章 当事者インタビュー
  
  Case1 高森さんのケース ― 障害者支援
  Case2 ナルヲさんのケース ― CADオペレーター/テクニカルイラスト作成
  Case3 高橋さんのケース ― 歯科技工士/エキストラ
  Case4 村上さんのケース ― 言語聴覚士

 付録 お仕事カード
 

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