フィオナ・ブリーチ:著 上田 勢子:訳 明石書店 定価:1500円+税 (2012..6)
私のお薦め度:★★★★☆
私たち育てる会の親たちで「自閉症のしおり」を作った時に願ったのは、“自閉症”という名前だけは知っていても、まだ誤解や偏見を持っているかもしれない周りの人たちに、少しでも自閉症について正しい知識や適切なかかわり方を知ってほしい、といいうものでした。
でも、思い返してみると、親戚や近所の方、担任の先生やクラスメイト以上に、いつもそばにいる「きょうだい」たちに、正しく自閉症について説明してきたでしょうか?(注:ここで「 」付きの「きょうだい」と書いているのは、自閉症児をきょうだいに持つ「きょうだい」で、 「 」なしのきょうだいは自閉症児本人のことです。ちょっとややこしくてスミマセン)
本人への障害の告知については、その時期ややり方など、まだ本人が小さい頃からいろいろ悩みながら子育てされている方も多いと思います。
一方で「きょうだい」達には、「自然に分かってくれるでしょう・・・」と改めての詳しい説明は省いてきた人もいるのではないでしょうか。また、「きょうだい」たちも、物心ついた頃から、自閉症を持つきょうだいと一緒に暮らしてきたのですから、「そんなもの・・・」と、さして疑問にも思わず、そのまま受け容れている子どもたちが多いように思います。
小さい頃はそれでもいいでしょうが、「きょうだい」達もしだいに大きくなると、親たちがきょうだいだけにかかり切りで、自分にあまりかまってくれないことに不満をもつかもしれません。自分が大切にしているモノを壊されても、壊したきょうだいの方は仕方ないと叱られず、「出しっぱなしにしている、あなたがいけない」と逆に叱られるかもしれません。やはり、お互い納得して楽しい家庭を作っていくためには、「きょうだい」たちにも、その年齢なりの正しい自閉症への知識が必要になると思います。
そこで本書の登場です。
作者は英国自閉症協会の作った学校でアートセラピストとして、長年自閉症児への支援を行ってきたフィオナ・ブリーチさんで、本書のイラストも描かれています。
作者は英国自閉症協会の作った学校でアートセラピストとして、長年自閉症児への支援を行ってきたフィオナ・ブリーチさんで、本書のイラストも描かれています。
「きょうだい」なら、 まだあなたが子どもでも、ふつうの大人よりも、自閉症について、もうずっとよく知っていますよね。
それでも、どうして自分の兄弟や姉妹はみんなとちがうんだろう、どうしておかしな行動をするんだろうと、ふしぎに思ったり混乱した気持ちになったりしたことはありませんか?
でもだいじょうぶ! そんなふうに感じているのは、あなただけではありません。
自閉症は、大人にもむずかしくてよく理解できないことがあるのです。どうすれば、自閉症のある人がもっと楽しく、あたたかい気持ちで、幸せで満ち足りた毎日を過ごせるのでしょうか? 自閉症のある人を助けるために、あなたたち「きょうだい」にできることはなんでしょうか? それは、きっと、あなたの兄弟や姉妹が教えてくれますよ。 (「まえがき」より)
それでも、どうして自分の兄弟や姉妹はみんなとちがうんだろう、どうしておかしな行動をするんだろうと、ふしぎに思ったり混乱した気持ちになったりしたことはありませんか?
でもだいじょうぶ! そんなふうに感じているのは、あなただけではありません。
自閉症は、大人にもむずかしくてよく理解できないことがあるのです。どうすれば、自閉症のある人がもっと楽しく、あたたかい気持ちで、幸せで満ち足りた毎日を過ごせるのでしょうか? 自閉症のある人を助けるために、あなたたち「きょうだい」にできることはなんでしょうか? それは、きっと、あなたの兄弟や姉妹が教えてくれますよ。 (「まえがき」より)
本書の構成は、パート1では「自閉症ってなんだろう」というテーマで基礎的な質問、「どうして自閉症になるの?」とか「自閉症は治るの?」とか、「きょうだい」たちが疑問に思っていても、なかなか面と向かっては聞きにくい問いに答えています。
パート2では「自閉症の3つの特徴」として、自閉症の3つ組、コミュニケーションン、社会性、想像力の苦手さについて、子どもたちにも分かりやすい言葉で、例をあげながら説明しています。
そして、パート3では、「きょうだい」たちが普段の生活の中で「自閉症のふしぎな行動」として、抱くであろう疑問、「なぜ話さないの?」「なぜ言われたことをくり返して言うの?」
「なぜ同じことを何度も聞くの?」「なぜ物を投げたりこわしたりするの?」について、自閉症の特性から説明しています。同時に「きょうだい」としてどう相手すればいいのかについてもアドバイスしています。
「なぜ同じことを何度も聞くの?」「なぜ物を投げたりこわしたりするの?」について、自閉症の特性から説明しています。同時に「きょうだい」としてどう相手すればいいのかについてもアドバイスしています。
例えば、「なぜ同じことをくり返すの?」
あなたの兄弟や姉妹は、物を同じ順番で並べたり、部屋に入る前に電気をつけたり消したりするのが好きかもしれません。いつも同じ道順ででかけたり、同じ順序で洋服を着たりする人もいるでしょう。
これは、自閉症のある人によく見られる「儀式的行動」というものです。「儀式」というのは、結婚式のように、いつも同じ方法で行われるお祝いや行事のことです。歯磨きのように、いつも同じやり方で同じ時間に行うことも儀式の一種ですね。
これは、自閉症のある人によく見られる「儀式的行動」というものです。「儀式」というのは、結婚式のように、いつも同じ方法で行われるお祝いや行事のことです。歯磨きのように、いつも同じやり方で同じ時間に行うことも儀式の一種ですね。
もちろん、こんな風変わりな儀式が、ほかの人には腹立たしく思えたり、無意味に思えることもあるでしょう。でも、あなたの兄弟や姉妹は、けっしてわざとおかしいことをしようとしているわけではないということを、忘れないでください。なぜ自分がそんなことをするのか、そして、それがほかの人をいらいらさせるのかもしれないということにも、気がついていないのです!
先に書いた「きょうだい」たちが抱きやすい不公平感、「なぜいつもわがままが通るの?」についてもこんな解説があります。
自閉症のある人が問題を乗りこえるためには、「きょうだい」とはちがう特別なルールが必要です。いつもわがままが通るということではありません。 あなたたち「きょうだい」は自閉症のある兄弟姉妹より、もっといろいろなことがわかっているし、責任感もあるでしょう。だから「きょうだい」は、一般の社会のルールに従わなくてはならないのですね。
もちろん、この解説だけで、すぐに納得するのは難しいかもしれません。でも、本書の副題にあるように「ひとりひとりが特別だよ」と、特別なルールが「わがままが通る」ように見えていることを「きょうだい」たちに知ってもらうことが大切だと思います。
そして、パート4では「「きょうだい」の気持ち」、として、「きょうだい」の思いを代弁、共感しながら、これからどうすればいいかを提案しています。
自閉症のある兄弟や姉妹は毎日のかんたんなことにも多くの助けが必要です。だから大人は、「きょうだい」にはなんでも自分でやってほしいと思うかもしれません。あなたを信頼して頼っているのです。あなたは、いやでも自分のことは自分でしなくてはならないかもしれないし、親に頼らず、責任感をもって、しっかりしなくてはならないかもしれないのです。
遊びたいときでも、兄弟や姉妹を手伝ってあげてと頼まれることもあるでしょう。いつも責任感をもってしっかりしなくちゃならないのは、何歳の人にとっても大変なことですよね。自閉症のある兄弟や姉妹がいるからといって、大人にあんまり期待されたのでは、あなただっていやになってしまうかもしれません。
遊びたいときでも、兄弟や姉妹を手伝ってあげてと頼まれることもあるでしょう。いつも責任感をもってしっかりしなくちゃならないのは、何歳の人にとっても大変なことですよね。自閉症のある兄弟や姉妹がいるからといって、大人にあんまり期待されたのでは、あなただっていやになってしまうかもしれません。
と、まずは共感されたあと、その後の提案については、本書の核心部分ですから、ぜひ「きょうだい」の方たちに実際に読んでいただきたいと思っています。
また、以下のパート5やパート6はセラピーや専門用語についての説明ですので、ここは興味のある方は読んでいただければいいと思います。
本書は例え話も多く、読みやすいとは思いますが、それでも専門用語は少し出てきますので、対象年齢は小学校高学年以上というところでしょうか。
まずは保護者の方がご覧いただいて、内容が理解できるような年齢になったと判断されたら、「きょうだい」の方に薦めていただきたい1冊です。
本人への告知と同じぐらいの時期にできたらいいですね。
まずは保護者の方がご覧いただいて、内容が理解できるような年齢になったと判断されたら、「きょうだい」の方に薦めていただきたい1冊です。
本人への告知と同じぐらいの時期にできたらいいですね。
(「育てる会会報 230号」 2017.6 より)
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目次
この本のこと
まえがき
パート1 自閉症ってなんだろう
どんな行動をするの?
どうして自閉症になるの?
てんかんについて
自閉症は治るの?
どうして自閉症になるの?
てんかんについて
自閉症は治るの?
パート2 自閉症の3つの特徴
3つの特徴
気持ちを伝えることがむずかしい
友だちを作ったり人づきあいをするのがむずかしい
想像することがむずかしい
気持ちを伝えることがむずかしい
友だちを作ったり人づきあいをするのがむずかしい
想像することがむずかしい
パート3 自閉症のふしぎな行動
なぜそんなことをするの?
なぜ話さないの?
なぜへんな音をだすの?
なぜ言われたことをくり返して言うの?
なぜ同じことを何度も聞くの?
なぜひとりごとを言うの?
なぜひとりになりたがるの?
なぜ同じことをくり返すの?
なぜ飛び上がったり、体をゆすったり、たたいたり、手をパタパタさせたり、くるくる回ったりするの?
なぜ相手の顔を見ないの?
なぜ耳や目や頭をかくすの?
なぜ変化がきらいなの?
なぜ物を投げたりこわしたりするの?
なぜ人を傷つけるの?
なぜ自分を傷つけるの?
なぜむずかしいことができても、かんたんなことができないの?
なぜいつもわがままが通るの?
なぜ話さないの?
なぜへんな音をだすの?
なぜ言われたことをくり返して言うの?
なぜ同じことを何度も聞くの?
なぜひとりごとを言うの?
なぜひとりになりたがるの?
なぜ同じことをくり返すの?
なぜ飛び上がったり、体をゆすったり、たたいたり、手をパタパタさせたり、くるくる回ったりするの?
なぜ相手の顔を見ないの?
なぜ耳や目や頭をかくすの?
なぜ変化がきらいなの?
なぜ物を投げたりこわしたりするの?
なぜ人を傷つけるの?
なぜ自分を傷つけるの?
なぜむずかしいことができても、かんたんなことができないの?
なぜいつもわがままが通るの?
パート4 きょうだいの気持ち
きょうだいの体験
きょうだいにできることはなんだろう?
自分の時間がほしいとき
プライバシーがほしいとき
自閉症のある兄弟や姉妹のことが恥ずかしいとき
きょうだいにできることはなんだろう?
自分の時間がほしいとき
プライバシーがほしいとき
自閉症のある兄弟や姉妹のことが恥ずかしいとき
パート5 学校とセラピー
セラピー
セラピーってなんだろう?
言語セラピー
アートセラピー
音楽セラピー
演劇セラピー
センサリールーム
セラピーってなんだろう?
言語セラピー
アートセラピー
音楽セラピー
演劇セラピー
センサリールーム
きょうだいへ、グッドニュース
パート6:自閉症についての言葉の説明
役立つ情報
訳者あとがき
著者・訳者紹介