奥田 健次:著 武嶌 波:漫画 スペクトラム出版社:発行 定価:1300円+税 (2016年11月)
私のお薦め度:★★★☆☆
今月のお薦め本は「子育てブラックジャック」と称され、応用行動分析の手法を駆使しながら、常識にとらわれない方法で、問題行動をバッサバサと切り倒して進む奥田先生の本です。
以前「拝啓、アスペルガー先生 マンガ版」でもコンビを組まれた漫画家の武嶌 波 氏による作画で、その思いもつかないようなやり方がリアルに表現されています。
マンガの良さを、言葉で表現することは難しいのですが登場するのは、エルモくん、ジャンくん、ダンテくん、マイコちゃんの4人の自閉症児たちです。あと、おまけでアーサくんとサントくんも登場します。
同じ自閉症でも、それぞれ悩み、・・・主に親からみた悩みかもしれませんが・・・は違います。
トイレでオシッコができなくてオムツがはずせないエルモくん、3歳6ヶ月。
興奮が激しく、またてんかんの薬がどうしても飲ませられないジャンくん、3歳。
「パイナップル」という言葉を嫌がって、聞くと走り出してしまうダンテくん、12歳。
夢が怖くて夜眠れなくなってしまったマイコちゃん、小学4年生。
興奮が激しく、またてんかんの薬がどうしても飲ませられないジャンくん、3歳。
「パイナップル」という言葉を嫌がって、聞くと走り出してしまうダンテくん、12歳。
夢が怖くて夜眠れなくなってしまったマイコちゃん、小学4年生。
それぞれの解決法、あなたならどうしますか。
常識的なやり方なら、これまで自閉症についてセミナーを受けたり、勉強してこられた方なら、すぐにいくつかは思いつくでしょう。
常識的なやり方なら、これまで自閉症についてセミナーを受けたり、勉強してこられた方なら、すぐにいくつかは思いつくでしょう。
たとえば、おもらしの記録をつけて、タイミングを計ってトイレへ誘導する。トイレを嫌がらないよう、好きなおもちゃを用意したり、飾り付けを考える。最初は部屋の中でオマルを使用して、できるようになったら便器の上にオマルを取り付ける。夏場に思い切ってオムツを外して、出そうになったらトイレにつれていく・・・・あるいは、大人になってまでオムツをしている人は、まず、いないから、トイレトレーニングはあせらず放っておく、などなど。
もちろん、奥田先生も排尿や排便の記録をとったり、これまでの親の方が努力してきた“常識的な”方法の聞き取りは丁寧に行います。
そのうえで、奥田流の処方を行動に移します。
そのうえで、奥田流の処方を行動に移します。
「今、このトイレでやってみますか?」
「当然ですが 今からやると激しく泣きますよ?」
「それでも正しいトレーニング方法を覚えて帰りたいですか?」
「絶対 直るよ! 直らんかったら切腹してみせますよ!」
「当然ですが 今からやると激しく泣きますよ?」
「それでも正しいトレーニング方法を覚えて帰りたいですか?」
「絶対 直るよ! 直らんかったら切腹してみせますよ!」
奥田先生は絶対の自信と、覚悟を持って行動を始めます。
それは同時に、いくら泣いても後ろに下がらない、という覚悟を親の方にも求めるものです。
それは同時に、いくら泣いても後ろに下がらない、という覚悟を親の方にも求めるものです。
その方法については、本書の核心にあたるところなのでここでは書けませんが、私たちの想像を超えるものであることは記しておきましょう。
また、本書では「奥田健次物語」として、前半でこれまでの奥田先生が歩いてきた道のりを漫画にして紹介されています。
幼少からの先生は、両親の離婚・再婚による血のつながりのない父親からの暴力、虐待にあい、家出や万引きを繰り返し、いじめにあい不登校になってしまいます。
やがて父のように慕うドイツ人の宣教師と出会い、働きながら大学・大学院と進みます。
やがて父のように慕うドイツ人の宣教師と出会い、働きながら大学・大学院と進みます。
「死ぬほど殴られて育ったせいなのか 人を恐れない学生だった」
そして最初に書いた論文が学会の論文賞を受賞したことを契機に大学で研究と臨床を始めることになるわけです。
「学会での暴れっぷりは影をひそめず 大御所と呼ばれる先生には片っ端から論戦をしかけていた」
学会でも異端視されてきた、奥田先生のルーツを見せられた物語です。
そして最初に書いた論文が学会の論文賞を受賞したことを契機に大学で研究と臨床を始めることになるわけです。
「学会での暴れっぷりは影をひそめず 大御所と呼ばれる先生には片っ端から論戦をしかけていた」
学会でも異端視されてきた、奥田先生のルーツを見せられた物語です。
そして、自ら虐待を体験してきた先生だからこその対談でのやりとりがあります。
「・・・それで先生は 子どもへの暴力を何としてもゼロにしたい というお考えに行き着いたのですね」
「ん・・・まあ。でも子どもへの暴力だけでなく、子どもから大人への暴力だって 絶対に許しませんけ
どね」
さすが子育てブラックジャックと呼ばれる先生の言葉です。
「・・・それで先生は 子どもへの暴力を何としてもゼロにしたい というお考えに行き着いたのですね」
「ん・・・まあ。でも子どもへの暴力だけでなく、子どもから大人への暴力だって 絶対に許しませんけ
どね」
さすが子育てブラックジャックと呼ばれる先生の言葉です。
もちろん、マンガ版なので語られる内容は、奥田流療育のエッセンスだけです。
でも絞りこまれ、強調されたマンガだからこその、奥田流カウンセリングの本質も見えてくると思います。
でも絞りこまれ、強調されたマンガだからこその、奥田流カウンセリングの本質も見えてくると思います。
育てる会のセミナーアンケートで、聞いてみたい先生に必ず名前の挙がる(それでも多数派ではないのが、奥田先生らしいとも言えますが・・(^_^)・・)奥田先生を知るにはいい本だとお薦めします。
(「育てる会会報 226号」 2017.2より )
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目次
まえがき
奥田健次物語
エルモくんのこと
ジャンくんのこと
ダンテくんのこと
マイコちゃんのこと
おまけマンガ
アーサくんとサントくん
アーサくんとサントくん
あとがき