改訂版 発達障害児のための支援制度ガイドブック | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

日本発達障害ネットワーク:編 唯学書房  定価:741円 + 税 (2015年8月)
 
            私のお薦め度:★★★☆☆
 
今月は「お薦め本」というコーナーの主旨からは少し離れるかもしれませんが、発達障害をもつ本人や家族に知っておいていただきたい、現在の日本で受けられる様々な支援を一冊にまとめたガイドブックです。

みなさんご存知のように、2005年に発達障害者支援法が施行されてからも、子どもたちをとりまく法律や制度はめまぐるしく変わっています。正直、ついていくだけで精一杯、いい加減にしてほしいというのが児童デイサービスやグループホームを運営している立場からの感想です (^_^;)
まあ、煩雑なだけでなく、処遇改善などプラスになっているところもあるので我慢している、というのが現状でしょうか。
 
ただ、一般の保護者にとっては、子どもたちは待ったなしで成長しているので、その時々の制度を最大限に利用していただきたいと思っています。そのための今回のお薦め本の紹介です。発行しているのは、日本発達障害ネットワーク(JDDnet)で、本書の元になるガイドブックが作られたのは2008年のことでした。それから先に書いたように制度の変遷に合わせて何度も加筆修正や改訂を重ねて、本書は昨年2015年8月の発行で、今のところの最新版です。また時代の移り変わりにより新しい版も発行されると思いますが、それまでは本書をおおいに活用していただきたいと思います。
 
本書の構成は、第1章から第3章までは、手記を交えながら、乳幼児期~小中学校期~高校・大学期とライフステージごとに、それぞれ利用できるサービスについて解説されています。

例えば、最初のページでは「早期発見 ~ 1歳半健診」のタイトルで、1歳半健診についての説明です。まず概略として、「どんな時に利用する? どこで利用する? どんなサービス? 対象は? その他のポイント」として、具体的に簡略な説明です。このそれぞれの概略ポイントは、その後も同じ形で解説が続いていきますので、ここだけでも押さえておけば一応の知識は得られると思います。
 
○ どんな時に利用する? ・・・満1歳半になる前後の月(市町村から該当者全員に通知)
○ どこで利用できる? ・・・保健所・保健センターで実施。地域により個別に医療機関でも可能な場合がある(ただし有料の場合もあり、要確認)
○ どんなサービス? ・・・身体計測・内科健診・歯科検診・保健指導(歯科・栄養)・個別相談・心理相談等
○ 対象は? ・・・満1歳半になった人全員(国の法定健診)
○ その他のポイント ・・・発達障害に関するスクリーニング検査を実施している自治体もある
 
という具合です。
そして本文としては、もう少し詳しく
 
  1 サービスの概要
  2 発達障害への対応
  3 利用のヒント
  4 一言アドバイス
 
の項目で、実際にサービスを利用する際の手順や心構え、準備しておいた方がいいことなどアドバイスが続いていきます。
本書の最初の方の早期発見や保育所・幼稚園などの利用については、育てる会の会員の方にはすでに経験して周知のことも多いと思いますが、この機会に我が子のライフステージにとって見落としがないか、チェックしてみるのもいいと思います。
 
第4章・第5章では、年齢を少し離れて横断的に利用できる制度や機関が網羅されています。
中には名前は聞いたことがあるが、イマイチ何をしてくれるところか・・・というような機関もあるのではないでしょうか。
 
たとえば都道府県精神保健福祉センター、「1 サービスの概要」としては
 
平成24年現在ではすべての都道府県、20政令都市に1ヵ所以上ずつ設置されており、主に思春期を入口として、青年期から成人期以後のライフステージを対象にこころの相談業務と法律に基づいた精神保健に関わる技術援助や教育研修、普及啓発、情報提供等を推進しています。また、精神障害者の公費医療負担審査や精神障害者保健福祉手帳の判定等の業務も行っています。
 
要するに思春期以降の相談が中心で、高機能の自閉症の方が取得できる精神障害者保健福祉手帳の判定をしてくれるのが、ここだったのですね。

またセンターでの「3 利用のヒント」では
 
青年期になるとセンターでの面接相談に本人が来所することが難しいケースがあります。その場合、保護者がセンターに予約を入れ、保護者相談から開始することをお勧めします。センターには精神科医・精神保健福祉士・心理士・保健師・看護師、作業療法士等が配置され、必要に応じて支援体制がとられています。一部のセンターでは、グループ活動やデイケア、それぞれの状態像に応じたケア体制が進められています。
青年期以降に発達障害ということが明らかになったとしても、「今からでも決して遅くない」という確信と希望を持って支援を開始することが大切です。
 
他にも、「今さら聞けない」とういうような基礎的な部分から、制度や機関の解説がありますので、側に置いていただけたらとお薦めします。
 
                (「育てる会会報 223号」 2016.11より)
 
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目次

はじめに
 
第1章 乳幼児期
  I 早期発見 -1歳半健診
  II 早期発見 -3歳児健診
  III 早期発見 -5歳児健診
  Ⅳ 障害者総合支援法(児童福祉法)
  V 幼稚園
  VI 保育所

  ◆保護者の手記(1)、(2)、(3)

  [トピックス] 発達障害者支援に携わる専門職 (1)「心理士」、(2)「特別支援教育士」
 
第2章 小中学校期
  I 就学児健診
  II 特別支援教育とは?
  III 特別支援学校
  IV 特別支援学級
  V 通級指導教室(LD、ADHD、自閉症、ことばの教室)
  VI 特別支援教育コーディネーター
  VII スクールカウンセラー

  ◆保護者の手記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)

  [トピックス]発達障害者支援に携わる専門職 (3)「言語聴覚士」、(4)「作業療法士」
 
第3章 高校・大学期
  I 高校を選択するには
  II 高校を選択するには -入試における配慮ついて
  III 特別支援学校(高等部)・高等特別支援学校
  IV フリースクール・通信制高校
  V 大学・短大・専門学校
  VI 移行計画 (教育期から就労期への移行の計画)

  ◆保護者の手記(1)、(2)、
 
  [トピックス]ディスレクシアのある人の高校、大学
 
第4章 障害者支援制度
  I 療育手帳
  II 精神障害者保健福祉手帳
  III 障害基礎年金
  IV 障害者自立支援法
 
第5章 支援機関
  I 子育て支援センター
  II 児童家庭センター
  III 教育センター・特別支援教育センター
  IV 児童相談所
  V 保健所・保健センター
  VI 都道府県精神保健福祉センター
  VII 発達障害者支援センター
  VIII 医療機関
  IX 当事者団体・親の会
 
第6章 資料編
  Ⅰ 診断早見表
  Ⅱ 発達障害者支援センター
  Ⅲ JDDネット加盟団体一覧
  Ⅳ インターネット等で得られる各種情報