渡部 伸:著 主婦の友社 定価:1300円+税 (2016年5月)
私のお薦め度:★★★★☆
筆者の前著、『障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」』が、親なきあとに使える福祉サービスや支援制度の話だったのに対し、本書は「ぶっちゃけ、いくらぐらい残しておいてやればいいの?」と聞いてこられる保護者の方に向けて書かれた本です。
筆者は、行政書士/ファイナンシャルプランナーの資格をもち、障害のある子どもをもつ親の共通の悩みをともに考える「親なきあと」相談室を主宰しながら、多くの保護者の相談にのってこられた方です。なにより、ご自身が重度知的障害のお嬢さんをお持ちなので、まさに他人事(ひとごと)ではない「親なきあと」のお話が語られています。
最近は制度などについての本や資料は行政も含めてたくさん目にするようになりましたが、正味我が子たちが親なきあと、一人で生活していくためには、月にどれくらいかかり、将来に向けてどのくらいの金額を用意しておいてやればいいのか、具体的に書かれた本はあまりなかったですね。
育てる会でも、同じ疑問、不安を持ちながら子育てしている人も多いのではないでしょうか。
さて、その不安や悩みについては、最初に筆者が安心させてくれています。
でも実は、障害のある子には必要以上にたくさんのお金を残すことはない、と私は考えています。
それはなぜか。障害者はさまざまな場面で福祉の支援を受けており、最低限の生活はできるような社会保障がなされています。もちろん、より豊かな生活を楽しむためには不十分なものですが、子どもに一生涯かかるお金を、親がすべて工面しておかなければいけない、といった状況ではありません。
逆に、資産を持っていることによって、子どもに浪費癖がついて、かえって借金してしまったり、だましとられてしまうなどのリスクをかかえることも、あり得るからです。
それはなぜか。障害者はさまざまな場面で福祉の支援を受けており、最低限の生活はできるような社会保障がなされています。もちろん、より豊かな生活を楽しむためには不十分なものですが、子どもに一生涯かかるお金を、親がすべて工面しておかなければいけない、といった状況ではありません。
逆に、資産を持っていることによって、子どもに浪費癖がついて、かえって借金してしまったり、だましとられてしまうなどのリスクをかかえることも、あり得るからです。
ただし、その最低限の生活が保障されるために、やっておかなければいけないことはあります。
それは、療育手帳などの手帳を取得すること、就労賃金や年金・手当などの定期的な収入源を用意しておくこと、子どもの生活の場所を確保すること、病気のリスクに備えることなど、さまざまです。
そしてこれらの準備は、親が元気なあいだに、子どものためにしてあげられることです。 (「はじめに」より)
つまり、子どもに残しておいてあげるのは、遺産の金額よりも 日々の生活における安心できる収支の枠組みや生活の場の確保 のほうが大切ということでしょう。
定期的な収入としては、ここに書いてあるように、障害者基礎 年金や給料・手当、それに余裕があれば信託にした遺産などと いうことになるのでしょうが、グループホームや入所施設では 年金と福祉助成金だけで黒字になるような制度設計となってい るそうです。
定期的な収入としては、ここに書いてあるように、障害者基礎 年金や給料・手当、それに余裕があれば信託にした遺産などと いうことになるのでしょうが、グループホームや入所施設では 年金と福祉助成金だけで黒字になるような制度設計となってい るそうです。
本書の中で、特にグループホームについては、都内と地方都市のモデル的なケースを、具体的な収入や支出の項目や金額を入れて計算されています。
確かに育てる会のグループホームほっぷ1でも、入所者の人の収支はほぼそれに合って黒字となっています。(グループホーム自体の運営は、結構厳しいものがありますが・・・(^_^;.) )
確かに育てる会のグループホームほっぷ1でも、入所者の人の収支はほぼそれに合って黒字となっています。(グループホーム自体の運営は、結構厳しいものがありますが・・・(^_^;.) )
また、アパートや持ち家に一人暮らしをする場合には、就労していて収入があるというケースになると思えますので、収入の内での支出(家賃や維持費)を考えることになるのでしょうね。
親が残した住居を相続して住む場合
この場合は、月々の家賃などはかからないでしょうが、土地や家屋を資産として持つことで、毎年固定資産税がかかってきますし、マンションなど共同住宅であれば、管理費や修繕積立金が必要になります。
管理費などについては、福祉サービスの支援はありませんので、すべて本人負担になります。本人の収入や判断能力などを考えて、毎月の期日までに確実に支払えるようにしておきましょう。
管理費などを長期間滞納してしまうと、裁判で訴えられたり、資産を差し押さえられるような事態も起こり得ます。子どもが苦しまないように、親として必要な準備をしていただければと思います。
いずれにしても大切な準備は、お金そのものよりもサポートの仕組み作りをしっかりしておくということのようです。
それでも、親として子どもたちが一人になっても 余暇や趣味を楽しめる余裕があるよう、できるだけ
多くのモノを残しておいてやりたいと願うのが 親ごころでしょう。
本書では、相続させる金額(これは各ご家庭によっ てそれぞれでしょう)よりも、それが確実に本人に
渡る仕組み作りがポイントだとしています。
「はじめに」に書かれているように、一度に多額の遺産を渡してしまうと浪費や詐欺などのリスクが多いからです。
そのための制度として信託や成年後見の使い方の説明も、いろんなケースを想定して書かれています。
多くのモノを残しておいてやりたいと願うのが 親ごころでしょう。
本書では、相続させる金額(これは各ご家庭によっ てそれぞれでしょう)よりも、それが確実に本人に
渡る仕組み作りがポイントだとしています。
「はじめに」に書かれているように、一度に多額の遺産を渡してしまうと浪費や詐欺などのリスクが多いからです。
そのための制度として信託や成年後見の使い方の説明も、いろんなケースを想定して書かれています。
特に成年後見制度については、会員の中でも関心を持たれている方が多いのではないでしょうか。
ただこれについては、本書のケーススタディの一つ「両親とともに自宅で暮らしているケース」のこんなアドバイスがあります。
ただこれについては、本書のケーススタディの一つ「両親とともに自宅で暮らしているケース」のこんなアドバイスがあります。
《アドバイス》 あせらず、あわてず待つことも必要
障害者の親は、子どものことで、一般の親とは違ったさまざまな苦労を強いられている、と私は思っています。ふつうの親なら、子どもがある程度成長したら、手は離れて、その後は自分たちの生活を中心に考えることができます。しかし、障害のある子の親は、終わることのない子どものケアをし続けることになります。
そんな中で、成年後見制度のことも早く決めなければいけない、と追い立てるようなことは言いたくありませんし、その必要もないと思います。
まずは様子を見る、というのも有力な選択肢ですし、家族の平和な生活のために、私はそちらをおすすめします。
ただし将来は、本人の権利擁護のために、成年後見制度を利用することになる確率は高いでしょう。あせらずゆっくり時間をかけて、考えてください。
本書を読み終えての感想は、「終わりに」に書かれているように、お金については「住むところさえあれば何とかなる」ということと、今の生活が安定しているならば親が元気なあいだはそんなにあせることはない、というある意味ほっとするものでした。
ただ繰り返しになりますが、親なきあとに子どもたちがお金に困らないためには、制度をよく知って生活の枠組みを作っておいてあげることや、周りに支援者を用意してあげる事などが大切なようですね。
最後に本書の中の私があまり知らなかった項目で、みなさんにも紹介したいものを、紙面の都合で項目だけ列挙しておきます。みなさんもぜひ本書を一読されることをお薦めします。
「生命保険信託」
「特定贈与信託」
「心身障害者扶養共済制度」
「病気の保険診療には医療費助成があるが、入院治療費には生命(医療)保険への加入が必要」
「国民年金とは違い、健康保険には障害者を理由とした保険料の免除はない」etc.
({育てる会会報 220号」 2016.8より)
----------------------------------------------------
----------------------------------------------------
目次
第1部 「親なきあと」の収入と支出を知ろう
第1章 障害基礎年金の仕組み
第1章 障害基礎年金の仕組み
年金制度の基本的な考え方
障害基礎年金を受給する条件
20歳未満から障害がある場合
申請しないと受給できない
障害基礎年金はいくらもらえる?
2階部分の厚生年金は
審査請求により認定が変わる場合も
障害基礎年金以外の手当
住んでいる地域によって異なる手当
就労による収入と障害年金
障害基礎年金を受給する条件
20歳未満から障害がある場合
申請しないと受給できない
障害基礎年金はいくらもらえる?
2階部分の厚生年金は
審査請求により認定が変わる場合も
障害基礎年金以外の手当
住んでいる地域によって異なる手当
就労による収入と障害年金
〈コラム〉
年金申請書がもらえない?
等級判定のガイドライン
知的障害者の手帳について
もしかして発達障害?と思ったとき
年金申請書がもらえない?
等級判定のガイドライン
知的障害者の手帳について
もしかして発達障害?と思ったとき
第2章 暮らしの場によって変わる収支
利用者負担の配慮措置
生活の場ごとの本人負担額
生活の場ごとの本人負担額
〈コラム〉
地域生活支援拠点に注目したい
地域生活支援拠点に注目したい
第3章 毎月の固定費を軽減する
健康保険と介護保険
その他の固定費の種類
障害者対象の割引制度があるもの
その他の固定費の種類
障害者対象の割引制度があるもの
〈コラム〉
「65歳の壁」で負担がふえるという問題が?
「65歳の壁」で負担がふえるという問題が?
第4章 定期的な通院や病気になったときの医療費の支援制度
障害者医療費助成制度
入院治療には生命(医療)保険加入で備えを
高額療養費制度
世帯合算と多数回該当
自立支援医療(精神通院医療)
入院治療には生命(医療)保険加入で備えを
高額療養費制度
世帯合算と多数回該当
自立支援医療(精神通院医療)
〈コラム〉
医療モデルと社会モデル
医療モデルと社会モデル
第2部 「親なきあと」の経済的に困らない仕組みを考えよう
第1章 子どもの生活を支える資産の残し方
遺言の基礎知識
法定相続分と遺留分
家族にもめごとを残さない遺産分割が最優先
遺言は書き直せる
障害のある子に信託が有効な理由
信託の基礎知識
信託を障害のある子の資産管理に活用する
子どもに確実にお金は渡される?
誰に頼めば利用できるのか
生命保険信託という新しい商品
子どもに必要なだけのお金を確実に渡す
特定贈与信託
法定相続分と遺留分
家族にもめごとを残さない遺産分割が最優先
遺言は書き直せる
障害のある子に信託が有効な理由
信託の基礎知識
信託を障害のある子の資産管理に活用する
子どもに確実にお金は渡される?
誰に頼めば利用できるのか
生命保険信託という新しい商品
子どもに必要なだけのお金を確実に渡す
特定贈与信託
〈コラム〉
障害のある子に資産を残さない、という遺言を書いた場合
遺言控除の導入が検討されている
障害のある子に資産を残さない、という遺言を書いた場合
遺言控除の導入が検討されている
第2章 日常のお金を管理するために
成年後見制度の基礎知識
成年後見制度は若い障害者には向いていない?
長期間支払う後見報酬も大きな問題
後見監督人とは
いつかは後見が必要になるときが来る
任意後見制度
法人後見という手法
親たちが立ち上げたNPO法人・一般社団法人による法人後見
日常生活自立支援事業の基礎知識
サービスの内容は
契約能力のあることが利用の条件
成年後見を利用し始めるタイミングは?
成年後見制度は若い障害者には向いていない?
長期間支払う後見報酬も大きな問題
後見監督人とは
いつかは後見が必要になるときが来る
任意後見制度
法人後見という手法
親たちが立ち上げたNPO法人・一般社団法人による法人後見
日常生活自立支援事業の基礎知識
サービスの内容は
契約能力のあることが利用の条件
成年後見を利用し始めるタイミングは?
〈コラム〉
身体障害者と成年後見制度
障害者は「純粋」な存在?
身体障害者と成年後見制度
障害者は「純粋」な存在?
第3章 ひとり残った子どもの経済的なサポート策
生活福祉資金貸付制度
困窮から立ち直るための新制度
ほかに手段がなければ生活保護を申請しよう
生活保護を受けられる資格
最低生活費の金額
生活保護の種類
生活保護が認められない場合
申請手続きの流れ
障害のある人が生活保護を受ける場合
「親なきあと」子どもに生活保護が必要になったら
困窮から立ち直るための新制度
ほかに手段がなければ生活保護を申請しよう
生活保護を受けられる資格
最低生活費の金額
生活保護の種類
生活保護が認められない場合
申請手続きの流れ
障害のある人が生活保護を受ける場合
「親なきあと」子どもに生活保護が必要になったら
〈コラム〉
自治体が運営する心身障害者扶養共済制度
障害者総合支援法の見直し
自治体が運営する心身障害者扶養共済制度
障害者総合支援法の見直し
第4章 ケーススタディ・「親なきあと」のお金の問題
事例① ・・ 障害者支援施設に入所しているケース
事例② ・・ グループホームに入所しているケース
【アドバイス】 住むところが決まれば、何とかなる!
事例② ・・ グループホームに入所しているケース
【アドバイス】 住むところが決まれば、何とかなる!
事例③ ・・ 両親とともに自宅で暮らしているケース
【アドバイス】 あせらず、あわてず待つことも必要
【アドバイス】 あせらず、あわてず待つことも必要
事例④ ・・ ひとり暮らしをしているケース
事例⑤ ・・ 経済的に不安定なケース
【アドバイス】 困ったときに頼れるルートをたくさんつくっておく
事例⑤ ・・ 経済的に不安定なケース
【アドバイス】 困ったときに頼れるルートをたくさんつくっておく
〈コラム〉
ライフスタイルカルテと「親心の記録~支援者の方々へ」
ライフスタイルカルテと「親心の記録~支援者の方々へ」
終わりに
参考文献

