自閉症ガール ひまわりさんの日常 ~彼女に見えている世界~ | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

成沢 真介:著 坂井 聡:監著  少年写真新聞社  定価:1400円 + 税 (2016年5月)
 
                 私のお薦め度:★★★☆☆
 
6月17日にあかいわ発達障害支援センターの夜間講座でお話をしていただいた特別支援学校教諭の成沢真介先生と、今年度の即実践講座の講師をお願いしてる香川大学教授の坂井聡先生のコラボによる新刊本です。
まさに、今の育てる会にとってとてもタイムリーな一冊だと思います。
 
本書は、特別支援学校に通う小学部4年生の女の子、ひまわりさんの学校での暮らしを通して、さまざまなエピソードに対して、担任の先生から見た様子と、実際にひまわりさんが感じた(であろう)気持ち、それに専門家として自閉症の特性からの解説とアドバイスという構成になっています。
ただし、ひまわりさん、「夏野ひまわり」さんは発語を持ってないという設定ですので、そのひまわりさんの気持ちや感情、動機なども、あくまで周りからの想像、類推です。
 
本文中のひまわりの視点から見た世界は、筆者が「そうであろう」と考えた世界です。外から見た本人と、本人そのものは違い、本当のひまわりの世界は誰にもわかりません。
特性理解という視点から補い、難しい部分をわかりやすく解説してくださった香川大学の坂井聡先生に心から感謝いたします。 (著者「まえがき」より)
 
その意味で、実際に自らの言葉で体験を語ってくださっている高機能な自閉症な方や、重度の知的障害と思われながら文字による表現で内面世界を綴ってくださる東田直樹さんなどの例からすると、少し物足りなく感じられる方もいるかもしれません。
 
でも、見方を変えると、彼らがコミュニケーションや社会性を苦手とし、想像力に弱さを持つとしたら、彼らの気持ちをできるだけ正しく“想像”し、できるだけ適切に支援してあげるのは、こちら側、非自閉圏の大人たちに求められる役割でしょう。
 
そして、親にとっては、多くの方が初めて体験する自閉症児の子育てですが、筆者の成沢先生は長年、しかも多くの自閉症児たちの支援に携わってこられていますので、その想像の多くは的を射たものとなっていると思えます。
 
また、ここで先生役の「私」はうまく支援できることもありますが、何度もひまわりさんにパニックを起こさせてしまします。
もちろん物語を作っていくためには必要な演出ですが、若いころには似たような失敗をされてこられたこともあるのかもしれません。
解説を書かれている坂井先生にしても、そんなご自身の失敗の体験を先日の即実践講座の講義の中で話されておられました。
それだけ、自閉症児から適切なコミュニケ―ションを発信してもらうのは難しく、自閉症がわかりにくい障害と思われる所以でしょう。
 
「ウワーン! ウワーン! ウワーン!」
 その激しいこと! 私の頭の中には「?」マークが幾つも並び、頭の中が真っ白になっていきます。
(どうして?)
 原因のわかるパニックは今後の対策の立てようがありますが、原因不明のパニックは対処のしようがありません。
「ウワーン! ウワーン! ウワーン!」
(フラッシュバックかな? 原因がわからないんだからそうとしか考えられない)
 じぶんのことは棚に上げて、説明のつかないことは全てフラッシュバックのせいにしていました。
 
 夏野さんは、起き上がって机や椅子を蹴り倒しました。机を蹴ろうとしたときに私が止めると、手首にかみつきました。 「イテテテテテ!」 思わず私も叫んでしまいました。夏野さんはすぐに離してくれました。ヒリヒリする手首の痛さをかみしめながら思いました。
(これにはきっと原因がある)
それだけは確かな思いでした。でもその原因が何なのか、まるっきりわかりませんでした。
(「コミュニケーションってむずかしい!」より)
 
 
いかりがこみ上げてきて、イライラを何かにぶつけずにはいられなかった。近くにあったいすを思い切りけりたおした。まだおさまらないので、となりのつくえをけろうとしたら止められた。イライラがつのり、そこにあった手をかんだ。 「▽※※※※※※!」 先生が何か言っている。いけないと思ってはなしてあげた。
(もう、何なの!)
やり場のないいかり、通じないもどかしさ、いろんな思いがいっぺんにおしよせてきて、わたしは はきそうになった。ねころがってなきさけぶしかなかった。これがせいいっぱいの表げん方ほうだった。苦しい、助けて、いやだ、そんな思いをつたえるすべがないわたしにはこれしかできなかった。
(「ひまわりからすると・・・」より)
 
ここでのパニックの原因となったのは、ひまわりさんがプリキュアを歌わせてほしくて、何度も「プリキュア好きだねー」と言っているのに、先生も「プリキュア、好きだね~」と答え、それをひまわりさんは“プリキュア歌ってもいいですよ”という意味に受けとっていたのに、スケジュールにはいっていなかったため、と設定されています。もちろん、実際の現場では、他に本当の原因が隠れているかもしれません。
 
では、先生はスケジュールに「プリキュアの歌」を入れることができたでしょうか。それは、どう考えても無理でしょう。なぜならば、ひまわりさんの言葉は伝わっていなかったからです。その結果、イライラしたひまわりさんは、先生の手をかんでしまったのです。「どうして歌えないのよ」と言いたかったということです。
自分の思いが伝わらないというのはとてもつらいことです。ここで大切なことは、何が言いたかったのを想像することです。イマジネーション力をフル活用して、子どもが言いたかったことは何かを想像することです。(「専門家から」より)
 
また、パニックを防ぐためには、その原因を取り除くことができれば簡単(?)ですが、神ならぬ身、想像力には限界があって、本書のようにフラッシュバックのせい(もちろん、フラッシュバックによるパニックも
あると思いますが・・・)にして、納得しようとしがちですね。こちら側のイマジネーション力を補うためには、子どもたちにも発信する方法を、地道に教えていくことが根本的な解決につながる道だと思えます。

そのためには、坂井先生の専門分野であるAAC(代替コミュニケーション機器)やタブレットの活用や、PECSが有効ではないでしょうか。
本書の例でもPECSで「プリキュアの歌」「歌いたいです(ほしいです)」の2語文が作れたら、ひまわりさんの気持ちはしっかり伝えることができたように思えます。
 
この本は二色カラーで、イラストや4コマ漫画での説明もあり、とても読みやすい入門書となっていると思います。
できるならば、初めて自閉症に関わるお母さんや先生方にも読んでもらい、イマジネーションを持つて接することの大切さや、お互いにわかる形でコミュニケーションを交わしていくことが、安心して暮らしていくためにはぜひとも必要だということを知っていただきたいと願っています。
 
                (「育てる会会報 218号」 2016.6より)
 
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目次
 
  まえがき
 
自閉症とは ・・・・・・・・・・・ 坂井 聡
 
先生から見た世界&ひまわりさんから見た世界
  スクールバスで学校へ!
  プリキュア大好き
  伝えたい気持ちが言葉になる
  コミュニケーションってむずかしい!
  こだわり・感覚が襲う
  水遊び
  お祭り
  プールで大はしゃぎ!
  祭りのあと
 
コラム
  自分の“ものさし”だけでわかったつもりにならないこと ・・ 成沢 真介
 
自閉症Q&A
  Q.1 自閉症の行動特徴
  Q.2 気をつけないといけないこと
  Q.3 パニックになったとき
  Q.4 接し方のアドバイス
  Q.5 都道府県の機関・団体
  Q.6 向いている仕事
  Q.7 病気?
  Q.8 薬で治る?
  Q.9 コミュニケーションの場
 
コラム
 自閉症のある人とやりとりするために ・・・・・・ 坂井 聡
 
  あとがき
 
  著者紹介