奥田 健次:著 集英社新書 定価:740円 + 税 (2012年11月)
私のお薦め度:★★★★☆
育てる会では毎回セミナーのアンケートの裏面に「ご希望の講師の方がおられましたら、お書きください」の欄があり、参加者の方にお呼びしたい講師の方のお名前を尋ねています。
その時に、吉田友子先生、服巻智子先生、佐々木正美先生などの諸先生方と並んで、いつも名前が挙がるのが本書の著者、奥田健次先生です。
その時に、吉田友子先生、服巻智子先生、佐々木正美先生などの諸先生方と並んで、いつも名前が挙がるのが本書の著者、奥田健次先生です。
通称「子育てブラックジャック」と呼ばれ、これまでも、このコーナーでも「明るい療育相談室」「拝啓、アスペルガー先生」「子育てプリンシプル」などの著書を紹介してきました。
今回は、~行動分析学・実践編~と副題にある本書ですが、いつもの奥田先生の“歯に衣を着せぬ”実践を基にした著書を読んでこられた方には、なぜこれが「実践編」と思われるかもしれませんね。
今回は、~行動分析学・実践編~と副題にある本書ですが、いつもの奥田先生の“歯に衣を着せぬ”実践を基にした著書を読んでこられた方には、なぜこれが「実践編」と思われるかもしれませんね。
確かに、主に大学で講義をされていたり、ずっと研究室におられるような先生方にとっては、実践編と言えるかもしれませんが、実際に我が子を前にして、子育てを行っている私たち保護者にとっては、むしろ「理論編」と思われるような本書です。
もちろん、専門書とは違い、一般の方が気軽に読めるような新書版で、値段も手ごろなので、行動療法や応用行動分析の「入門理論編」としてお薦めしたい1冊です。
これまで、二つの強化の原理と二つの弱化の原理を見てきた。基本形はこの四つである。好子と嫌子、出現と消失。この2×2で四つの行動の原理を覚えていただきたい。表にすると、次のようになる。
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出現 |
消失 |
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好子 |
強化 |
弱化 |
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嫌子 |
弱化 |
強化 |
行動分析学は、たった四つの原理だけでよい。数学の基本に加減乗除があるように、良き科学としての行動分析学の基本原理もこの四つである。
時代が変わろうと、原理は普遍である。
時代が変わろうと、原理は普遍である。
つまり、行動分析では、普通の自然現象のように、何かの原因があって、その結果があらわれるという
考え方とは逆に、何かの行動があって、その結果なにが起きたのかを考えていこうという姿勢です。
考え方とは逆に、何かの行動があって、その結果なにが起きたのかを考えていこうという姿勢です。
ある行動が起きる理由について考えるとき、人はその行動の前に何が起きたのかを考えようとしてしまう。
ところが、人や動物の行動の原因について考えるときは「真逆」に見なければならないのである。つまり、その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の結果として何が起きたのかを考えなければならないのだ。
ところが、人や動物の行動の原因について考えるときは「真逆」に見なければならないのである。つまり、その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の結果として何が起きたのかを考えなければならないのだ。
時間的に後で起こった出来事が、その先に起きた行動の原因になっているなどと、一般の人はもとより、人間の行動について探求する心理学者や医師すらも考えないものである。各種ある心理学の中でも、行動分析学が他の心理学よりもユニークな点はここにあると言っても過言ではない。
行動分析が苦手という方の中には、行動分析で使う言葉になじみがないためという方もいらっしゃいます。先の例では「好子」「嫌子」「弱化」とかが、その例でしょう。
「オペラント行動」や「行動随伴性」なども普段はあまり使わない言葉ですね。まあ、入門書だと割り切って、あまり捉われない方がいいと思います。
「オペラント行動」や「行動随伴性」なども普段はあまり使わない言葉ですね。まあ、入門書だと割り切って、あまり捉われない方がいいと思います。
奥田先生も「このタイトルに出てきた「好子」という専門用語とは何かについて今は説明しない」とか、「ここでもタイトルに出てきた「嫌子」という専門用語とは何かについて、今は説明しない。鋭い読者ならば、もしや先ほどの「好子」の反対ではなかろうかとお気づきのことであろう。 」と、言葉の説明よりは具体例を挙げて話をすすめていかれます。
まあ、漢字のイメージや表のマトリックスから、何かの行動の後に、好きなことが起こったり嫌なことがなくなったら、その行動は強化され、逆に好きなことがなくなったり嫌なことが起こったらその行動はしなくなっていく・・・ぐらいの理解で、話についていきましょう。
もう一つの、行動分析が敬遠される理由の一つに、本書にもあるように「動物の行動ならばわかるが、人間の行動はもっと複雑でしょう?」という考えあると思います。
先ほど四つの原理はある程度納得するけど、自分の行動がそれだけで説明されるほど単純なものではない、と思い込みたがる気持ちもありますね。
先ほど四つの原理はある程度納得するけど、自分の行動がそれだけで説明されるほど単純なものではない、と思い込みたがる気持ちもありますね。
それについては、奥田先生が、応用形としてこんな表も作成してくださっています。
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出現の阻止 |
消失の阻止 |
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好子 |
弱化 |
強化 |
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嫌子 |
強化 |
弱化 |
最初の表の裏返しですが、これにより予防や貯蓄、投資や保険などの行動、悪あがきや度が過ぎる行動の制御の説明ができることを、これも具体例を挙げて紹介していただいています。
このような具体例が、本書が「実践編」と名付けられた理由なのでしょうか。
このような具体例が、本書が「実践編」と名付けられた理由なのでしょうか。
私たちの業界では、「2打数1安打」とか「3打数3安打」などと表現することがあるのだが、野球の場合と逆の価値観である。「2打数1安打」とは二人きょうだいのうちの一人が不登校、「3打数3安打」とは三人きょうだい全員が不登校という意味だ。
不謹慎に思われるかもしれないが、あまりにも不登校の子どもが放置されて悪化しているのを見かねて、あえてこれくらいの表現をしているのだ。
それでは、私のところに相談に来た「3打数3安打」の母親に、どのような支援を行ったか紹介しよう。
それでは、私のところに相談に来た「3打数3安打」の母親に、どのような支援を行ったか紹介しよう。
実際に奥田先生がどのような介入を行ったかは、本書を読んでいただくとして、応用行動分析の手法を用いて、3人ともを不登校から抜け出させたやり方は、さすがの「子育てブラックジャック」の手腕なのでしょう。
このようにして、この家庭の不登校「3打数3安打」の問題は見事に解消された。こうした事例はたまたまうまくいったのではない。ここでは、イチロウの家のケースを紹介したが、同様のケースは枚挙にいとまがない。
こんなに、自ら堂々と言いきってしまうのも「子育てブラックジャック」らしさ、この業界では異端児あつかいされがちな所以でしょうね (^_^.)
ともあれ、奥田先生のファンの方にとっては、その基になる理論を知るためにも格好の入門書として読んでおいていただきたい1冊です。
(「育てる会会報 213号」 2016.1より)
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目次
まえがき
第1章 その行動をするのはなぜ?
1.実用的な心理学
2.奇声をあげるアキラくん
奇声をあげたら、お母さんと離れ離れに
通常学級に入学したアキラくん
陥りがちな「循環論」の罠
周囲を「行動随伴性」で考える
3.身近な例で考える行動分析学
すぐに弱音を吐くタカシさん
「甘えているから」では、問題は解決しない
2.奇声をあげるアキラくん
奇声をあげたら、お母さんと離れ離れに
通常学級に入学したアキラくん
陥りがちな「循環論」の罠
周囲を「行動随伴性」で考える
3.身近な例で考える行動分析学
すぐに弱音を吐くタカシさん
「甘えているから」では、問題は解決しない
第2章 行動に影響を与えるメカニズム(基本形)
1.原因と結果を「真逆」に考える
「症状」と「行動」は異なる
2.行動とは何か?
「試験勉強」「破壊行為」は具体的でない
行動の前に原因がある「レスポンデント行動」
3.行動を強める「強化」の原理(基本形)
「好子」出現の強化
「嫌子」消滅の強化
4.行動を弱める弱化の原理(基本形)
嫌子出現の弱化
好子消失の弱化
5.四つの行動原理で、あらゆる行動を説明する
「症状」と「行動」は異なる
2.行動とは何か?
「試験勉強」「破壊行為」は具体的でない
行動の前に原因がある「レスポンデント行動」
3.行動を強める「強化」の原理(基本形)
「好子」出現の強化
「嫌子」消滅の強化
4.行動を弱める弱化の原理(基本形)
嫌子出現の弱化
好子消失の弱化
5.四つの行動原理で、あらゆる行動を説明する
第3章 行動がエスカレートしたり、叱られても直らないのはなぜ?
1.行動の直後に何が起こったのかに注目せよ
2.なぜダイエットは難しいのか
3.行動が消えてしまうメカニズム(消去の原理)
恋に破れて、行動が消去される
4.とても大切な消去の原理
5.社会生活に重大な変化を及ぼす「強化スケジュール」
6.強すぎる消去抵抗、消去バースト
消去の連続に耐える
7.叱られてもやめられないのはなぜ?(回復の原理)
失敗はこうして繰り返す
8.「アメとムチ」という発想を捨てよう
「ムチ」の副作用
2.なぜダイエットは難しいのか
3.行動が消えてしまうメカニズム(消去の原理)
恋に破れて、行動が消去される
4.とても大切な消去の原理
5.社会生活に重大な変化を及ぼす「強化スケジュール」
6.強すぎる消去抵抗、消去バースト
消去の連続に耐える
7.叱られてもやめられないのはなぜ?(回復の原理)
失敗はこうして繰り返す
8.「アメとムチ」という発想を捨てよう
「ムチ」の副作用
第4章 行動に影響を与えるメカニズム(応用編)
1.日常の行動はもっと複雑
人間の行動をより深く理解するために
2.行動を強める強化の原理(応用編)
嫌子出現「阻止」の強化
嫌な思いをしないために
好子消失「阻止」の強化
持ち物が増えると悩みが増える
3.行動を弱める弱化の原理(応用編)
嫌子消失「阻止」の弱化
好子消失「阻止」の弱化
「じっとしている」は死人にもできる
4.阻止の随伴性に伴うリスク
5.強迫性障害を形成するメカニズム
不安を引き起こす刺激を与え続ける
刺激を自動的にシャットアウトする
6.阻止の強化による強迫性障害
7.エクスポージャーを行動分析学でとらえ直す
不安を減らそうとしてはいけない
人間の行動をより深く理解するために
2.行動を強める強化の原理(応用編)
嫌子出現「阻止」の強化
嫌な思いをしないために
好子消失「阻止」の強化
持ち物が増えると悩みが増える
3.行動を弱める弱化の原理(応用編)
嫌子消失「阻止」の弱化
好子消失「阻止」の弱化
「じっとしている」は死人にもできる
4.阻止の随伴性に伴うリスク
5.強迫性障害を形成するメカニズム
不安を引き起こす刺激を与え続ける
刺激を自動的にシャットアウトする
6.阻止の強化による強迫性障害
7.エクスポージャーを行動分析学でとらえ直す
不安を減らそうとしてはいけない
第5章 行動は見た目よりも機能が大事
1.行動の機能は四つしかない
物や活動が得られる
注目が得られる
逃避・回避できる
感覚が得られる
2.同じ行動のように見えるが同じ行動ではない、という落とし穴
機能の重複
3.家庭での問題から(不登校の連鎖、そして回復へ)
不登校三きょうだい
不登校を支える行動随伴性
学校に行かない兄は「かわいそう」
“こころの中身”は不毛な議論
4.ウソを簡単に見抜く方法
(1)学校を休むと家で遊べる(物や活動)
(2)母親と一緒にいられる(注目)
(3)学校に嫌なことがある(逃避・回避)
(4)機能が複合している場合、シフトしていく場合
5.てんびんの法則
家庭で過ごす理由
おのずと学校に行く確率を高める方法
6.奇声をあげる男の子
7.嘔吐を繰り返す女の子
8.リストカットがやめられない女子学生
物や活動が得られる
注目が得られる
逃避・回避できる
感覚が得られる
2.同じ行動のように見えるが同じ行動ではない、という落とし穴
機能の重複
3.家庭での問題から(不登校の連鎖、そして回復へ)
不登校三きょうだい
不登校を支える行動随伴性
学校に行かない兄は「かわいそう」
“こころの中身”は不毛な議論
4.ウソを簡単に見抜く方法
(1)学校を休むと家で遊べる(物や活動)
(2)母親と一緒にいられる(注目)
(3)学校に嫌なことがある(逃避・回避)
(4)機能が複合している場合、シフトしていく場合
5.てんびんの法則
家庭で過ごす理由
おのずと学校に行く確率を高める方法
6.奇声をあげる男の子
7.嘔吐を繰り返す女の子
8.リストカットがやめられない女子学生
第6章 日常のありふれた行動も
1.トークンエコノミー法
トークンエコノミー法とは何か
店がポイントカードを作る理由
視覚的な達成感
トークンエコノミー法は「さじ加減」が決め手
手応えのある仕事
トークンエコノミー法のバリエーション
不登校と「そもそも」論
「ワクワク感」を大事にしよう
ポイントを減点するレスポンスコスト
2.FTスケジュール
ニューヨークでのこと
「わんこそば」式
強度行動障害者の施設にて
その日のうちに表れる明確な効果
迷信が形成されるメカニズム
迷信行動とエクスポージャー
3.“任意の努力” を目指して
「したいからやる」行動随伴性を
トークンエコノミー法とは何か
店がポイントカードを作る理由
視覚的な達成感
トークンエコノミー法は「さじ加減」が決め手
手応えのある仕事
トークンエコノミー法のバリエーション
不登校と「そもそも」論
「ワクワク感」を大事にしよう
ポイントを減点するレスポンスコスト
2.FTスケジュール
ニューヨークでのこと
「わんこそば」式
強度行動障害者の施設にて
その日のうちに表れる明確な効果
迷信が形成されるメカニズム
迷信行動とエクスポージャー
3.“任意の努力” を目指して
「したいからやる」行動随伴性を
あとがき
主要参考文献




