小道 モコ:絵・文 クリエイツかもがわ 定価:2000円+税(2013.8)
私のお薦め度:★★★★☆
『 山陽新聞 読書三昧 』 より
今25歳の次男が2歳の時、自閉症と診断されました。私はそれまではSF小説や推理小説を気楽に読んでいたのですが、それ以降は「どこかに治す方法が載っているのではないか」と、自閉症関連の本を必死に読みあさるようになりました。
自閉症をはじめ発達障害の本は今でこそ多く、書店の一つコーナーが埋まるほどですが、当時は少なく、岡山ではどこの書店に行っても数えるほど。
しかし、苦労して手に入れても、読めば読むほど「治らない」という現実が分かるばかり・・でもその代わり、一人一人に応じた適切な療育を行えば、自閉症のままでも幸せな人生を送ることができるということも、本から学ぶことができました。
これまでに読んだ千冊ほどの発達障害関連の本は今、岡山県自閉症児を育てる会事務局(赤磐市和田)の図書室に置き、若いお母さん達にも読んでもらっています。
その中でも「あたし研究」は自閉症の当事者が自らの世界を、ユーモラスで温かみのあるイラストを交えつづっています。
4年前に出版された第1弾から、当事者ならではの視点に引かれています。
著者は10年ほど前、30歳を過ぎてから診断を受け、自閉症スペクトラムを考える会で当事者の立場から定期的に話をしておられるそうです。
本の中にこんな言葉があります。
見とおしがたたないことに取りくむということは
温かいのか冷たいのか
深いのか浅いのか
プールなのか沼なのか
温泉なのか河なのか
全然わからないトコロに飛び込むくらいエネルギーを消耗する
物事の見通しが立たないと不安になる自閉症の特性は分かっているつもりでした。しかし、これを読んだ時、それほどまでに不安な思いで生きているのかと改めて実感させられ、いとおしくて思わず涙が出るほどでした。
また、著者は小学4年の時、学校で窓から外へ出ようとして先生に怒られました。「どーして窓から出るんだ?」と聞かれたので「ん・・ん、外に近いから」と答え、怒りをあおることになります。今でもその時に感じた恐怖を詳細に思い出すことができるほど衝撃的な経験だったといいます。
自閉症のある人は言葉の裏を読み取ることが難しく、その通りに受け取ってしまう傾向があります。質問文で怒られると「それに答えなければ」と素直に考えてしまい、怒りの意図が分かりにくいと著者は書いています。「窓から出てはいけません」「ドアから出なさい」と、ストレートに伝えた方が良いようです。
こうしたお互いの感覚や考え方の違いを知ることで、本人の生きづらさも、親や周囲のいらだちも減り、楽になります。
ただ、障害の特性は自閉症のある人でも一人一人違います。
自閉症の本はあふれていますが、我が子自身のことをそのまま書いた本は、どこにもありません。
「あたし研究」とあるように、その子を研究し、実際に支援するのは親。専門家の力を借り、当事者からヒントをもらいながら考えなければいけないと思います。
著者は英語を教える傍ら、翻訳や講演、著作活動を行っています。来年4月には、育てる会の支援者養成セミナーにも講師としてお招きする予定で、今からお話を楽しみにしています。(談)=聞き手・中浜隆宏
(山陽新聞 夕刊 「読書三昧」 2013.12.3付け : 「育てる会会報 188号」 2013.12より)
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目次
目次
はじめに ・・・ 門 眞一郎
読者のみなさまへ 小道 モコ
読者のみなさまへ 小道 モコ
Introduction
あたしと自閉症
感覚編
1 痛みの表現
2 物格(ものかく)
3 感情表現
2 物格(ものかく)
3 感情表現
言葉編
4 文字と思考
5 あいさつのムズカシさ
5 あいさつのムズカシさ
身体編
6 チカラカゲン
7 座ることひとつで
7 座ることひとつで
学校編
8 とんちんかん
9 見ているトコロ
9 見ているトコロ
見通し編
10 プレイスキル
11 終わりを知りたい
11 終わりを知りたい
Conclusion
あたしのエネルギーの源
あの頃のあたしへ To Moko Komichi From Moko Komichi
・子どもの頃の 小道モコ様
・小学生の 小道モコ様
・小学4年生の 小道モコ様
・小学生の 小道モコ様
・小学4年生の 小道モコ様
紙のおじちゃん
あとがき 小道 モコ
「くれよん」紹介